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001.絶望の日々

「相変わらず、ここにいる奴らは暗い奴が多いな」

食堂に入り次第、唐突に呟いたのは、今年で12歳となるこの歳にしては身長が少し高めの少年だった。

「仕方ないよ。こんなところにいても辛いだけだし、希望もないしね。」

そう応えたのは顔立ちの整った、同じく12歳の少年だった。

二人が食堂で受け取った昼ごはんは、半分になったフランスパンひとつのみだった。

「こんなので、どうやって生きていけばいいんだよ」

「君もみんなと同じで、暗くなってるよ」

「はぁ。。夢も希望も未来もないな」

「僕は、夢ならあるよ。希望はないけどね」

「そうなのか?2年一緒にいるけど初めて聞いたぞ」

「実は言ってなかったけど、僕は、聖競走者になりたいんだ。」

「聖競走者?」

「うん。大勢の観客の中で、僕の”聖”を使って、何も考えずに思いっきり走りたいんだ。」

”聖”というのは、この世界の人間が生まれながらにして持っている神から与えられた力のことだ。

その”聖”を使ったプロスポーツのうちのひとつが聖競走だ。

「だけど遼介の”聖”は・・・」

「うん、だんだんと”聖”をうまく扱えなくなっていってる。元々、そこそこ聖競走向きの”聖”だったんだけどな」

遼介と呼ばれた顔立ちの整った少年の”聖”は肉体強化。それも脚に特化した力だった。

「早いうちにここから逃げ出さないと手遅れになるな」

「無理だよ、誰もこの施設から逃げ出すことなんてできないよ」

「あら、あんたたち暗い顔をしてどうしたの?」

後ろから急に話しかけてきたのは、この施設にいる同い年の少女優香だった。

「あんたたちはいつもいつも暗くて嫌になっちゃう」

「うるさい」

「私に向かってその物言いは何よ!」

「まぁまぁ、落ち着いて。こんなところに2年もいて暗くなるのが普通だよ。むしろ僕たちはいつも明るい優香に元気を分けてもらっていんだよ」

「あら、遼介は褒めてくれているのかしら?でも私に元気をもらっていてもその程度なのかしら?」

「調子に乗るから、思っていないことをいうのはやめろよ」

「そんなことないよ。本当に思ってるって」

遼介は優香のことが好きなのかもしれない、さっきの悲壮感漂う顔が嘘のように明るい顔になったのを見てそう思ったがこれ以上考えることはやめた。

どうせ、そんなことに意味はないから。

俺たちは、この施設を出ることができない。その前に殺される。


「やっぱり、ご飯の量はもっと欲しいよね」

この日の実験が全て終わり部屋に帰ってきた遼介が開口一番、愚痴を言っていた。

「なんか、そこらへんで虫でも捕まえるか」

「うーん。あまり虫の味は好きじゃないんだよね」

「焼けばいくらかマシになるだろ」

「茂みでも探してみよっか」

俺は、遼介と一緒に宿舎の横にある茂みに入っていった。


「あんたたち、こんなところで何やっているのよ」

虫取りをした後、宿舎へと戻っていると横から急に優香が話しかけてきた。

「お前はいつも突然話しかけてくるな。何か用でもあるのかよ」

「用なんてないわよ。あれあんたたちが持っているのって虫じゃない?私にも食べさせてよ!」

「俺たちがとってきた虫だぞ!」

「いいじゃないか、少しくらい。それに優香の”聖”ならうまく焼けるよ」

優香の”聖”は炎を生み出し、操作する力だ。それほど大きな炎を生み出すことはできないが、小さな虫を焼くくらいなら余裕でできる。

「そうよ、そうよ、減るもんじゃないしいいじゃない」

「いや、食べたら減るだろ」

優香と軽口を交わしながら部屋へと戻っていった。


施設のいたるところから悲鳴が聞こえてくる。

「今日の実験はきつかったな」

遼介の左腕は真っ赤に腫れ上がり、体にはいくつかの青あざができていた。

「研究員に何かしたのか?」

「今日の実験で、10歳くらいの子が死んだんだ。体力も限界で泣き叫ぶこともできなかったのに、それを気にせず殴ったり蹴ったりしていたんだ。それで、殴るなら僕にしてくれって言ったらたくさん殴られた。」

「放っておけばいいのに、前も同じことなかったか?」

「流石に見過ごせないよ。僕たちならまだいい、でもまだ体の小さい子たちもこの施設にはたくさんいるんだよ」

「それで身代わりになったていうのかよ。お人好しが過ぎるといつか死ぬぞ」

「大丈夫だよ。僕はこう見えても結構頑丈だから」

「遼介がそれでいいんだったらそれでいいけど」

「・・・あれって、達也?」

二人が歩いていた廊下の先に、左腕がない少年が歩いていた。

「おい、達也。その左腕はどうしたんだよ!」

「ああ、遼介たちか、一昨日、切り落とされてしまってね。。」

「はぁ?なんで?左腕を切り落としたら”聖”が使えなくなっってしまうじゃないか」

”聖”は一般的に左腕に宿ると言われている。そのため、左腕を失ってしまうと”聖”を扱うことができなくなってしまう。

「これも実験だって言ってた・・・」

達也の顔はやつれてくまも酷かった。

「達也、ちゃんと飯食って寝てるのか?」

「ううん、左腕を切り落とされてから、痛くて痛くて寝ることもできなかった。今日ようやく少し歩けるようになったけど、まだすごい痛いんだ」

「実験って、ただあいつらがやりたかっただけじゃないか!そんなんで大切な左腕を切り落とすとか一体何を考えているんだ!僕が抗議してくる!」

「やめろ、遼介。抗議したら次はお前の左腕が切り落とされるぞ。それに、抗議したところで、達也の左腕は元に戻らない」

「そうだよ。遼介。これは俺の問題だから、遼介まで被害にある必要はないんだ」

遼介は納得できないという顔をしていたが、それでも抗議に行くのは諦めてくれたそうだ。

それから二日後、達也は死んだ。表向きには病死と言われたが、実際は”聖”を使えなくなったから処分されたようだった。





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