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文体基礎演習  作者:
3/4

003.『世界でいちばん透きとおった物語』




 八月の、とある日のことだった。

 地下鉄に乗り込むと、むっとした空気が体を包む。

 電車は超満員で、僕は荷物を抱えて吊革につかまる。

「おい! いい加減にしろよ!」

 不意に怒鳴り声がして、そちらを眺める。黒く大きな影だ。

 なんだ? あれは。目を凝らして、その影を見つめる。

 ──ああ。わかった。

「お前だよ、お前! その鞄、邪魔なんだよ!」

 そうだ、鞄だった。

 一人の男が鞄をいくつも身に纏ってジッと立ちつくしている。

 僕がこっそりと聞き耳を立てていると、鞄男が口を開いた。

「すみません……もう三駅もしたら降ります」

「冗談じゃねえ!」


「上手くやったな」

「おう、そうだろう。かなり苦労したからな」

 僕が用事を終えた帰り道、何やら聞き覚えのある声がした。

 行きの電車で見かけた鞄男だ。連れ合いと思しきヤツもいる。

 さらに声が上がる。

「お兄さん方ちょっと。鞄どかしてくれるかね」

 顔をそちらへ向ける。

 駅員が難しそうな顔で手を振っていた。それもそうだ。

 床に広げた大量の鞄は明らかに他の客の迷惑になっていた。

「すみません、すぐどかします」

 男は萎れた声をあげて鞄をかき集める。ざまあみろ。

 人の迷惑も考えられない人間ばっかりで嫌になる。

 僕は溜息を吐いて電車を待った。




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