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臨時タンクは相変わらず疲れるみたいです

前回の『情報を集めているようです』と今回の『臨時タンクは相変わらず疲れるみたいです』があまりにも文章が変だったために再投稿いたしました。

まだまだ未熟な身で拙い文章でありますが、温かい目で見守っていただければ幸いです。

報告もなく投稿を削除してしまい申し訳ございません。

 朝6時30分。ギルドの固く閉ざされた扉が開かれる。

 今日から臨時のパーティに参加をするために、いつもよりも2時間ほど早く宿を出たシグは、受付の前にある筐体にいた。


「いらっしゃいませシグさん」

「おはようございます。タマモさん」


 過去に脅しや酔わせた状態で無理やりパーティを組ませるた過去があることから、受付の筐体には必ず一人のギルド職員が待機することが義務付けられている。


「今日から臨時パーティに参加しようと思っているんですよ」

「そうなんですね、でも……」


 タマモは、シグの装備をみる。

 チェインメイルを下地に、肩等の動きを阻害しないように作られている銀色の光を反射する胸甲。

 極め付けに盾を装備している彼は、どうみてもナイトです! と言わんばかりだ。


「ナイトは冷遇されますので、盾などを外して一目では気づかれないようにしてる人が多いんですよ」

「忠告ありがとうございます」


 それを聞いたシグは、盾を外すタンクはタンクじゃないだろと、内心あきれ果てる。

 STRは武器にVITは防具に対しての氣の限界容量の数値である。防具に分類される盾にもそれが適応されることから、シールド攻撃スキルを行う際には、VITによる恩恵があるのだ。

 だからこそ盾を外すのはあり得ない選択だが、周囲の軽蔑する視線からしょうがないのかもしれない。


「本当に無理しないでくださいね? 無理をして心に傷を負って辞めて行ったナイトの人達をよく見ましたから」

「善処させていただきます」

「ちなみにパーティを組んでいる状態でも臨時パーティは利用することが可能です。利用した場合は左腕に色がついているワッペンがついているのでわかりやすいと思いますよ」

「そうですか。参考にします」


 世間話をしながら筐体をいじりる。

 初回はいつも通り、安心安全設計のデフォルメヘカテちゃんの登場だ。


(パーティアイテム分配は自動振り分け。宝箱はダイスロールでいいか。探索時間は最低時間の3時間から)


 臨時パーティ実装当初は、最低時間というものは設けられてはいなかった。

 しかし自分の気にくわないメンバーとマッチングした場合、暴言を吐いたりメンバーに相談もなくUターンしてダンジョンから出て行ったりする人達が存在したことや、前述した通り『マッチング回避システム』というものは存在はするが、初めて利用する人にそれを使うことは出来ないことから嫌気のさしたヘカテこのシステムを導入したとのことだ。

 気の合ったパーティメンバーだった場合は気が行くまで探索すればいいし、気に入らなければ探索を終えればよい。

 また、探索を真面目にせずにアイテムだけをもらう冒険者もいたの存在していたが、その対策もヘカテによって『カルマ値』というものを定めることによって対策された。

 ある一定以上カルマ値がたまるとステータスカードが赤くなり冒険者登録の抹消。その後の登録は不可能となるために、そういうことをする冒険者はいなくなった。


 臨時パーティの受付を終えた彼は、8時になるまで暇だったので受付の横にある扉をくぐってギルド備え付けの食堂へと足を運んだ。

 食事や時間つぶしや探索を終えてぱーっと騒ぎたいもののために作られた場所らしく、臨時パーティの待ちや朝食の時間いうこともあって混雑している。

 モーニングセットを受け取って席に座ると、横に見知らぬ男が座ってきた。


「おいナイト様よぉ、まさか臨時パーティに入ろうってわけじゃねぇだろうな?」

「何か問題でも?」

「ありありだろ! 敵も殺せねぇ亀が入られると困るんだよ」

「そうか、文句は女神ヘカテに言うんだな」


 全く相手にされてないことで額に青筋を立てた男は、バンッと座っていた机が叩かれてその場を去っていく。周囲は何事かと気になり盾を見て軽蔑の眼差しを向ける。

 当の本人は、それを気にすることなくもくもくと食事を勧めながら、今朝買った新聞を片手に自分のステータスやインベントリの中にあるアイテムの確認をしている。


【名前】シグ 【ジョブ】ナイトLv.13 【年齢】20


 STR:D

 AGI:E

 VIT:C-

 INT:F

 DEX:D


【スキル】


 インベントリ-U 浄眼-U


 ランパート リジェネーション

 プロボック ハウリング

 シールドバッシュ


 Cに達すると、マイナスと無印とプラスと言った感じに三段階が増える。

 リジェネーションは、1分間疲れにくくなるスキルで、連戦や連撃や強撃などを行ってくる敵に対して有効なスキルである。また、ハウリングは盾を武器で叩くことで、周囲の敵に対してのヘイト上昇を見込めるスキルだ。

 プロボックを含むこれらのスキルを利用することで、安定したタンクを行うことが可能だ。


『自動マッチングが開始しました。それでは行ってらっしゃいませ』


 ピロンという電子音とヘカテの声が脳裏に響き渡ると、転移が開始される。

 

 転移した先にいたのは、先ほど食堂で絡んできた男と西洋の神官服を着た女性だった。二人の左腕にワッペンがついていないということは、パーティを組んでいないのだろう。

 一人は初対面ということで、第一印象が大事だと思っているシグは挨拶をする。


「ナイトのシグと言います。レベルは13です。よろしくお願いします」

「クレリックのヒルデと申します。レベルは10と低いですけど、よろしくお願いします」

「はい、よろしく──」

「19の大剣使いのマックだ! 湿地は慣れてるから任せてくれよなヒルデちゃん」

(直結乙)


 女性がいると張り切る典型的な奴だなぁと思いながら、二人の武具を見る。

 大剣使いのマックは、革でできた鎧に身長と同等程度の長さの大剣を背負っている。

 クレリックのヒルデは、30cm弱のバックラーを左手に、右腰にはシグに比べると短いメイスだ。

 従来ヒーラーであるクレリックは、回復効果が上昇杖を装備するのだが、臨時パーティはランダムであるために、近接武器を持つことが基本であることを知っているシグは仕方がないと割り切った。


「足を引っ張らないように頑張って敵を倒しますね」

「頑張らせていただきます」

「おら、さっさと行くぞ」


 こういう輩は何か言うと噛みついてくると思ったシグは黙ってマックの後を追うと、ヒルデもその後に続く。彼を先頭にしばらく歩くと、地球を侵略するようなデフォルメされた色とりどりのカエルの魔物であるトード達が元気よく敬礼をしあっている。


「ヒルデちゃん、ベネディクタ頂戴──リインフォース」


 1分間攻撃力が上昇するスキルを使ったマックの武器は赤く光った武器と同様に、ヒルデのスキルの効果のベネディクタの白色が巻き付くように現れた。

 叫びながら4体いるトードの群れに突っ込んでいくマックは、群れの一体を仕留めた。

 ゲローッと消えていくトードを無視するように、仲間のトードがマックに向けて喉の中で丸めた伸縮自在の舌を吐き出してきた。それを胴体に受け飛ばされたマックを、ヒルデはヒールで回復をする。

 事前の打ち合わせもなくベネディクタをもらって一心不乱に斬り合うマックを傍目に、ヒールでヘイトが上昇したのか、残り2匹のトードがヒルデに向かってマラソン選手のような二足歩行で向かっていく。


(ヒルデの位置はそこで、モンスターがポップする可能性を考えて……ここが最適か?)

「ハウリング!」


 その彼女の前に割り込むかのようにシグは盾を震わせる。街灯に吸い込まれる羽虫のように飛び掛かってくるトードを、攻撃を避けてもヒルデに影響を及ぼさず、なおかつ湧いてくる可能性のある淀んだ水たまりと直線になるように横へとずれた。

 ガンガンと飛んでくる粘着のある攻撃を、盾で受けたり横に身体をひねったりして回避行動を行うことで無駄な被弾をへらしながらも、ヘイトが剝がれないように一体ずつメイスで攻撃を行っていく。


「倒すのがおっせーんだよ!」


 怒涛と共に、トードの胴体に半月が走る。

 エクステントという大剣の、前方の敵に対して横に薙ぎ払ぐ範囲系のスキルだ。

 大剣専用スキルは、スキが大きい代わりに周囲への攻撃を行えるものが多く威力が高い。


「この大剣捌き、ほれぼれするだろ?」


 自慢をしに行くマックに慣れた様子で対応をするヒルデを見ながらシグは、腰についるインベントリのカモフラージュ用のであるバッグに手を突っ込む。そこには先ほど倒した敵からドロップしたであろう魔石袋が入っていた。

 アイテムを収納するアイテムバッグは冒険では必需品である。

 そう考えているヘカテは、最初にダンジョンへ潜ると最低限の容量が付与されているマジックバッグを地面に置いてあるとアナウンスする。だから、マジックバッグを持っていないという冒険者は存在しない。

 紛失した場合は、モンスターから一定確率でドロップするため中古で売られているものを買うしかないが、それは自己責任でありバッグを持たずに臨時パーティに参加した場合、獲得するはずの魔石袋が対象の周りに勝手に落ちる仕組みとなっている。

 なぜ自動でバッグの中に入るかは、他人の魔石袋を盗む輩がいたからだ。


(早く3時間経たないかな……。ゾンビアタック過ぎてみてるこっちがつらい)


 自分が前で攻撃を受けると言っても聞かないマックは、同じように突っ込んで行っては飛ばされるを繰り返し、ヒルデからヒールを受ける。すると彼が攻撃していないモンスターのヘイトが上昇することで跳ねてくるので、それをげんなりしながらプロボックやハウリングでキャッチをする。


(火力ごり押しでクリアってのは、学生時代によくやってたなぁ)


 何度も同じことを繰り返したことで脳のリソースに余裕が出たシグは、若いころヘイトを奪い取れるスキルがあるにもかかわらず、火力特化でひたすら湧いてくるモンスターを殴っては、ヒールか回復ポーションを飲んでは倒してを繰り返していたことを思い出していた。

 当時はタンクという概念がなく、全員が攻撃をして倒すのが当たり前だった。自分もそれをやっていたのは、有名な動画配信者が全員アタッカーかヒーラーだったからだ。

 この世界でも、それが影響を及ぼしているんだろうなと考えながら、襲い掛かってくる攻撃を対処をする。


「攻撃は一番左のトードから順番にお願いできますか?」

「わかりました!」


 ヒールをしない間は暇だったのだろう。シグに張り付いてくるトードやスライムをメイスで叩こうとするヒルデに、一番左から倒していくことにしているシグは攻撃の対象を指示する。

 彼の指示通りに「えい」と言いながらメイスを両手で振り下ろす彼女。

 それに嫉妬からか、マックは攻撃を受けると大きな声で叫ぶ。


(普通は逆なんだがな)


 タンクである自分の倍以上にヒールを受けているマックに対しての不満を抱きながらも、計八体の敵を倒して周囲のモンスターがいないことを確認すると、目覚まし時計のような電子音が鳴った。

 設定した探索の最低時間のお知らせのアラームだ。


『設定時間となります。パーティ内で続行かどうかを決めてください』


 戦闘中には鳴らない仕組みになっているが、わざと一体だけのこしたらどうなるのだろうか興味が沸き起こるが、触らぬ神に祟りなし。戦いで乱れた呼吸を整えながら、二人に顔を向ける。


「では、私は失礼します」

「ヒルデちゃんはどうする?」

「私もこれで……ちょっと疲れてしまいまして」

「そっか、残念だな。明日も一緒にどうだい?」

「すみません、明日は孤児院のお手伝いがあるので」

「いつでも呼んでくれていいからね」


  解散のお願いを断るとカルマ値が上昇することから、マック残念そうにギルドに戻る扉へと先導していく。

 ちなみに後から聞いた話だが、マックは一人で突っ込んでいく。スキルで味方を巻き込む。死んだら喚きながら人のせいにするという救いようのない理由から迷惑がられているらしく、ほぼ全員から回避リストに入れられており、自動マッチングを初めて利用した人としか組めないらしい。

 当然ギルドに戻ったシグも、彼を回避リストに入れたのは言うまでもない話である。

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