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ガチンコ勝負をするようです

火曜日の夜までパソコンに触れることが出来ないかもしれませんので、更新が遅れるかもしれません。

「求人に希望者が来たぞ」


 紹介システムを受けた数日後の昼に、マガタからの連絡があった。

 意外と早かったなと思ったシグだが、マガタはどうも何か言いたげな顔だ。


「何か不手際かなんかがあったのか?」

「不手際っつーかなんつーか、まぁ会った方が早いだろう」


 一体何を言いたいのかがわからないシグは、マガタに言われるがまま会議室の一室へと通された。

 そこには、大和撫子のイメージにピッタリな外見の漆黒の翼を生やしている女性がいた。

 シグはその御淑やかな見た目とは反対に、仁王立ちをしている彼女のギャップに戸惑う。


「よく来たな! 勝負だ!」


 さらに発する彼女の発言に、シグは余計に戸惑う。

 そしてマガタの足を自分の右足で小突く。


「説明」

「そ……そうだな」


 彼女の態度に気取られていたのか、呆然としていたマガタは急いで彼女の紹介を開始した。


「名前はイヅナ。鳥人のモンクだな」

「んなもんわかってるよ」


 VITよりもINTのほうが高いことから、布の防具を装着しているイヅナと呼ばれた彼女の手には、シグの防御を目的として作られているガントレットとは違って、殴打用に作られている手甲がはめられている。

 見てわかると言わんばかりのシグの言葉に、まぁ落ち着けと言う。


「お前、浜辺の中ボスのフィッシャーマン相手を投げただろ」

「あー……そういえばそうだな」


 昨日の浜辺の探索で、中ボスの魚の顔をした人型のモンスターであるフィッシャーマンを討伐したシグ達のパーティだが、その最中に突き出されたモリを避けてから一本背負いをしたことを、シグは思い出した。


「そう。あれを見てオレはお前に興味が湧いた! だから勝負だ!」

「そんなんじゃわかんねぇよ。えっとだなぁ、どうもその時のライブを見ていたらしくてな。お前のパーティに興味が出たらしくて、急いで紹介システムを使ってきたわけだ」

「なるほど?」


 追加の説明を受けたシグだが、勝負という言葉がよくわからないといった様子だ。

 それを聞いて唯一わかったのは、目の前にいるこの鳥人は、大和撫子の外見とは裏腹の性格ということだけだ。


「腕前は問題ない。現に1人で砂浜まで行けてるからな」

「性格は?」

「なんだお前は、オレの性格が気に入らないってのか?」

「見ての通り血気盛んだ。まぁ1人で戦闘をしてきたことからか、独りよがりの戦い方をしてしまうが……」

「大丈夫なのか?」


 不安なことしか言わないマガタに、シグは心配になる。


「強いやつに従うのは当然だ!」

「とのことだ。2週間ほど試用期間で様子を見てからで大丈夫そうだ」

「いや、その前に勝負についての説明が欲しいんだが?」


 肝心なところの説明がないことで困るシグは、マガタの発言を待つ。


「つまりだな──」

「スキルの無しの真剣勝負をしようってことだ!」

「よくわからんがな」


 イヅナの言葉にさらに困惑する。


「ギルドの訓練場でスキル無しの戦闘をしろってのが条件らしいぞ」

「ステゴロってしろってのか?」

「その言葉の意味はよくわからねぇが、かっこいいな!」


 気に入ったと言わんばかりに上機嫌となるイヅナは、パンと右の拳を左の手のひらに打ち付ける。

 その動作に脳みそがに筋肉が詰まってるのではないかと思いながら、やれやれと額に手を当てた。


「俺以外にそういうのがいたらどうすんだよ」

「んなヤツいねぇよ。基本はスキルで戦ってるやつばっかりじゃねぇか」

「もしいたらどうする?」

「いや、お前以外は興味ねぇ」


 シグの疑問にイヅナは答える。

 スキルはその名前と初動の動作が嚙み合って発動する。

 その後は多少融通を聞かせることが出来るが、シグのようにスキルを使わずに一本背負いという感じで、格闘戦をする者はいない。

 フィッシャーマンを投げたシグを見たイヅナは、彼に運命を感じるように体中に電流が走った。

 シグの心配をよそに、シッシッというジェスチャーをする。


「ならいいけど。で、いつやる?」

「今すぐだな」

「マガタ、案内してくれ」

「お……おう」


 とんとん拍子に進む流れにマガタは、ギルドの訓練場へと二人を案内をする。



 ギルドの訓練場に案内をされたシグは、装備をしていた鎧などを脱いで動きやすい私服に着替える。


「それで、ボクたちに説明は?」

「ギルド紹介。条件手合わせ」

「なるほど。紹介された人物に手合わせを求められたというわけですか?」

「そういうこと。もし入る場合は2週間ほど試用期間だとさ」


 職員からちょうど案内されたのだろう。

 ルナはシグに説明を求めて、それに対して最低限の説明をすると、ヒルデは補足説明をするように聞いてくる。


「ふーん……。それで、希望者はあの?」

「イヅナっていう鳥人だとさ」


 ルナの視線の先には、準備体操を行っているイヅナがあった。

 吟味するように、頭の先から足の指の先までじっくりと観察しているみたいだ。


「ん-……セーフ!」

「何がだよ!」

「獣人ではないということではないでしょうか」

「そういうこと!」

「知らんがな」


 肩のぐるぐると回しながら、ルナに突っ込みをする。


「ですが、シグさんは大丈夫ですか?」

「スキルの使用も禁止みたいだし、大丈夫だろ」

「ならいいんですけど、怪我はしないようにしてくださいね」


 気を付けてくださいなと送り出されるシグは、ぴょんぴょんと少し飛ぶ。

 従来は自由に利用ができるこの訓練場だが、紹介システムによってのシグとイヅナの情報を秘密にするために、1時間ほどの利用を禁止をして入り口には職員を配備している。


「ルールの確認をする。スキルと武器の使用を禁止とした格闘戦だ。立会人はギルドマスターの俺のマガタが行うが問題はあるか?」

「ないな」

「ねぇぜ」

「それでは、はじめっ!」


 普段との戦闘とは違う凍てつく雰囲気に、懐かしさを感じながら、シグは足幅を広くとって半身にすると重心を落とす。

 逆にイヅナはステップを多用しながらも足幅を狭くとっている。


(キックボクシングに近い構えか?)


 イヅナの構えは蹴りを主流として戦っていた人物の構えだ。

 蹴りを警戒しながら、射程を把握するためにじりじりと距離を詰めるシグに、イヅナもそれを読ませないためにわざわざ射程圏内に入ったにもかかわらずに距離を空ける。

 ここからどうするかと、少しほど思考をさく。するとシグの首筋に電流が走った。


 危機感を感じたシグは後ろにのけぞると、イヅナの右の回し蹴りが宙を舞う。

 その慣性で右足を地面につけると左の後ろ蹴りをしてくるそれを、右手でそらす。

 息を鋭く吐きながら右の裏拳を放つが、イヅナは後方へと転回しながら回避行動をとるが、それを許さないと言わんばかりにシグは地面を蹴って距離を詰めた。


 目前に迫るシグに驚愕したことから、焦ったのだろう。

 右手のストレートを放ったイヅナの腕をつかむ。

 フィッシャーマンの一本背負いをライブで見たイヅナは、投げられまいと後ろへと重心をずらした。


 それを見たシグは、対人の格闘戦は経験少ないのかなと考えながらも、彼女の腕を掴んだ手を放すと、後ろに下がっている足を払うと、地面に倒れこんだイヅナのみぞおちに対して、振り下ろした拳を寸前で止めた。


「勝負あり!」

「マジかよ」

「マジなんです」


 顔ではなくみぞおちを狙ったのは、確実に避けれない攻撃を行うためだ。

 イヅナは冷や汗をかく。


「蹴りの鋭さとかは文句はないな。スキルに頼らずに戦ってるのが見て取れる」

「当たり前だ」

「ま、経験の差だな。精進するように」


 倒れこんでいるイヅナに手を差し伸べるシグに、ケッと不満げにそれを掴む。

 怪我で引退はしたが、格闘技を10年以上嗜んでいるシグにとっては、イヅナはまだ素人に毛が生えた程度だ。

 流れるような動作にマガタは感心をする。


「お前もまだオレと同じくらいだろ」

「どうだろうな」

「まぁいい。オレをパーティに入れてくれ」

「パーティの戦闘スタイルに合わせることからだな」

「わかってるって」


 バンバンと力いっぱい背中をたたいてくるイヅナに、眉をひそめながらもヒルデとルナに向かって歩いていく。

 仲が良さそうにしているイヅナに対して不機嫌になっているルナは、ビシッと彼女を指さした。


「アンタは三番手だからね!」

「あ?」

「まぁまぁ、それは後で話しましょ?」

「イヅナは浜辺に行けてるんだよな!」

「おう、今から潜るのか?」


 有無を言わさない雰囲気を醸し出すヒルデに、一瞬後退るイヅナの三人に対して嫌な予感がするシグは、彼女の現状を確認する。

 その問いに答えるイヅナだが、シグは少しだけ悩む。


「いや、どういう感じで戦闘をするかってのを確認するために森林だな」

「リーダーの判断に従う」


 イヅナの言動から拒絶されるかと心配をしたシグは、安心をした。

 んじゃ行くかと言いながら、外した防具を着替えなおす。

 それを見守りながらも、バチバチと火花が散っているのではないかと思える視線のやり取りをルナとイヅナがするが、ヒルデはそれに待ったをかける。


 今回はいいが今後の心配をするシグだった。

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