ヘカテ魔改造のようです
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今話は短いですがどうかよろしくお願いします。
艶々な顔をして出ていくヒルデ達に、宿の延長を頼んでシグはベッドの上に寝転がった。
徹夜明けのような重い体ということで今日は休みをもらった彼は、仰向けから横向きへ寝返りを打つ。
『さくばんはおたのしみでしたね』
「見てたのか?」
『ええ、ばっちり』
恥ずかしながら、顔を手で覆う。
『安心してください。今夜あたりに魔改造しますから!』
「どういう意味で?」
『夜の戦闘的な意味で』
「お願いします」
それは助かるのか? と疑問にも思いつつも、翌日使い物にならなくなったら困るということで、恥ずかしながらも真剣に土下座をする。
任せてくださいというヘカテに感謝するシグは、今後について気になったことがあったのだろう。
ヘカテに対して質問をする。
「よくある話だと、ダンジョンクリアしたら前の世界に戻るんだが。俺の場合ってどうなの?」
『そんなの無理ですよ。こっちの世界に連れてきた魂ですから、それを安易に送ることなんて』
「そうか、なら安心だ」
ヒルデとルナと関係を持ったことで、彼女達に無断で前の世界へと戻るのは不誠実なことだ。
ダンジョンの攻略をしたら、お疲れさまと問答無用に返されることは避けたい。
ヘカテの言葉に安堵したシグは、よっこらせっと一声で体を起こす。
『おじさんですね』
「年齢的に……いや、俺は若いはず……だよな?」
自分は若いと信じたいのだろうか、シグは自問自答をする。
同時に将来を見据える。
「まずは、マガタに連絡を入れるべきなのか? 希望者に関しては事前に関係を持っているかどうかを知っておくべきなのだろうか。いや、そもそもこの世界だとパーティリーダーが男性で、他が女性だった場合は関係を持っていると聞くし──」
『もう大丈夫ですか?』
「ああ、すまない。もう大丈夫だ」
シグの言葉を聞いてヘカテはオラクルを切った。
ちなみに彼女がコンタクトを取った理由は、パーティメンバーと関係を取ったことによるダンジョン攻略に対する熱意の確認からだ。
タンクという役割を普及させるために、この世界に取り入れたのだ。
残念な結果に終わらせたくないヘカテは、もし熱意が冷めていたらどうしようかと内心焦ってはいたが、大丈夫そうだと感じたことから安心をした。
そうとも知らないシグは、相変わらずの女神だと思いながらも重い腰を上げて冒険者ギルドへと行くのだった。
△
冒険者ギルドに入ると、今日の担当はアシのようだ。
ちょうどいいと思ったシグは、彼女に声をかける。
「すみませんアシさん。パーティについての追加のお話がありまして」
「どういった話でしょうか?」
「いえ、二人と関係を持ちまして……」
「あらあら」
恥ずかしがっているシグに対して初々しいと感じながらも、銀色の狐の耳がぴくぴくと動く。
普段は糸目だが、彼の言葉を聞いてから面白そうな話を聞いたと言わんばかりに、その目が少し開く。
「希望者にはそういうことを報告した方がよいかと思いまして」
「残りの二人はどこにいらっしゃいますか?」
「今日は休みということで自由行動にしています」
「そうですか。それにしてもわざわざ報告してくるとは、誠実な人ですね」
「事前に聞いていたこととは違うと言われても、困りますからね」
承りましたと言いながら、彼女の上の耳は忙しそうに動いている。
ぴたりと止まった耳の先には、ギルドマスターのマガタがいた。
マガタにそそくさと向かっていくアシは、彼の元についたらシグの内容を報告したのだろう。彼女の言葉を聞いたマガタは、アシと変わるようにシグの元へと来た。
アシはというと、走っているのではないかと思えるほどの早足でギルドから出ていった。
「それで、求人についての相談だったか?」
「あれ、アシさんから聞いていないんですか?」
「お前から聞けと言われただけだぞ……。まぁいい俺の部屋で話すぞ」
周囲を気にしながら話そうとするシグを見たマガタは、ギルドマスターの部屋へと連れていく。
部屋でアシに報告した内容と同じように言うが、根掘り葉掘り聞かれる。
内容をすべて話し終えると、シグは気になっていたことマガタへと聞いた。
「それで、アシさんはどこへ行ったんでしょうか?」
「そりゃお前、ヒルデとルナの場所だろ」
「そうですか……」
その言葉を何を意味しているのかを大体把握したシグは、しばらくアシの元に行かないように気を付けようと気を付けるのだった。