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評価をされるようです

 マガタとの探索を終えて4日が経った頃に、シグ達はギルドに呼び出された。

 終わってすぐに評価を出されると思っていたのだが、国の重鎮の対応やダンジョンの探索やその情報の整理といった、多忙を極めているギルドマスターである。


「とりあえず個人の評価を出すとする。まずはヒルデだ」

「はい!」


 マガタの言葉で、緊張からヒルデの体がこわばる。


「そう緊張するな。ヒールやベネディクタといった支援をしつつも周囲の警戒を怠らない。また、空いた時間にホーリーライトをしていることから文句なしと言える」

「ありがとうございます」

「段階評価ってのは見せれないが、大体は紹介を出せるという感じだな」


 紹介システムの評価は、SからFの7段階評価だがそれを公表することない。

 その評価を記述している極秘のファイルは、ギルドマスターの部屋にある机の中に鍵をかけられて保管されている。

 問題ないということで安心をしたヒルデは、ホッとした。


「次はルナだが……そのバゼラードはダンジョン産だろ」

「どうだろうね」

「まぁいい。そういうのを聞くのはマナー違反だからな。モンスターの討伐速度やスキルの使いまわしといった点でいうと、シーフとしては破格の能力だ」

「へへん!」


 当然といったように豊満な胸を張ったルナを見たマガダだが、それと同時に深い息を吐く。


「だが……さっきのように調子に乗る悪いクセがある。人によっては合わないやつがいるだろう。そういう点ではヒルデに比べて扱いにくいやつだ」

「今がよければヨシッ!」

「現場兎みたいにサムズアップをするな」


 マガタの発言に親指をグッと上に向けたルナに、シグは突っ込む。


「その二人がパーティの評価を求めてるってならやりやすいんだがな……。問題はお前だシグ」

「問題点が結構あったか?」

「いや、言い方が悪いな。ナイトの評価ってのが正直なところ難しいんだ」

「なるほどな」


 シグはマガタが何を言いたいかを理解する。


「アシとタマモの評価はとても高かった。俺がお前を殺したくなるほどなぁ!」

「嫉妬で人を殺すなっての」

「まぁいい。クレリックであるアシからは、モンスターを気にすることもなくヒールやベネディクタといった支援が出来るという点から賛美されていた。ウィザードであるタマモからも、詠唱中にモンスターから狙われないということで、魔法を常に打つことが出来たということで爆上がりだ。俺からしても、後衛のことを考えず。1体のモンスター以外の攻撃を気にせずに攻撃を行えるのは同じように評価は高い」


 尖端がレイピアのようにとがって飛翔しながら攻撃を行うボダーツや、投擲スキルによって遠距離攻撃をするダンシングヒトデから、一切攻撃が飛んでくることがなかった後衛の二人にとっては、シグのタンクというものは、評価が高い。

 また、完全とは言わないが二人を守るように立ち回っているマガタも、彼の動きの評価は高い。


「お前の練度とパーティ練度は高い。正直今回のでギルドの探索にナイトを入れたいくらいだ。しかし……」

「それを知らない人には、その良さがわかりづらい……ということですね?」

「その通りだ」


 ヒルデがマガタの言いづらい発言を代弁する。


「いいじゃん。そういう外野なんて気にしなくてさ」

「お前は何のためにガルドを支払ったんだよ! いつかデコピンの指サック作ってやろうか?」

「か弱い草食動物になんてことをするんだ!」


 黙ってろと言わんばかりに力の込めた構えをするが、身の危険を感じたルナはヒルデの後ろへと逃げていく。


「皆さん。場所と時間は考えましょ?」

「すまん」

「ごめん」


 にこやかに注意を促すヒルデに謝る二人。


「話を戻すぞ。さっきも言ったように評価は高い。しかしな、このシステムはあくまで紹介するものであって強制するようなものじゃない」


 紹介システムは、あくまで希望者に紹介するものだ。

 臨時パーティのように強制的に組ませるようなシステムではない。


「あの探索の後に暇なときにお前たちの探索を見たんだが、正直なところあの役割ってのを知らないとシグの方を見なかったかもしれない」


 ヘカテーチャンネルの放送は、自分で視点を動かすことが出来る。

 バンバンとモンスターを倒していくルナや、支援を行うヒルデは見られることはあるが、ただ攻撃を受け止めて攻撃を与えるシグを、好き好んで見る視聴者はいないだろう。


「冒険者ギルドがタンクと言ったか? その役割を取り入れて探索をすれば、それを周知されるのだが、職員になる最低基準は知ってるな?」

「砂浜の中ボスのフィッシャーマンの討伐を、職員たちと行うってのか」

「そういうことだ。で、今のナイトの現状は……」

「男性の夜のおかずってところだね!」

「ルナさん?」

「ひぃ!」


 刃物を突き付けられたのではないかと錯覚させられる雰囲気に、ルナは体を震わせた。

 ヒルデとシグの後ろを行ったり来たりする彼女は、まるで安全地帯を探す小動物のようだ。


「多大なガルドを支払ってもらっておいて、こういうことになってしまって申し訳ない」

「マガタが謝罪する必要はないだろ」

「助かる。ギルドとしても期待に添えるように努力はする」


 マガタは謝罪のために頭を下げた。


「それでだ、紹介システムとしてはパーティの条件を聞かないといけないわけだ」

「大槌使いのファイターかモンクかハンターって言ったところか? ウィザードと言いたいところだが、いないだろ?」

「当たり前だ。タマモはやらんぞ!」

「こんなところで親バカするんじゃねぇよ! 後はレベルに関しては森林に行けてるなら不問だ」


 現在、シグのパーティが欲しているのはアタッカーだ。

 アタッカーのクラスは、大剣や槍や大槌を使うことのできるファイターや、短剣を使って戦うシーフや、自身の手足を武器とするモンクと、弓を使うハンターだ。

 ルナのAGIの高さを生かした動きは、範囲に優れている大剣や遠心力を使って戦う槍とは相性が悪いことから、それを除いた5種類である。

 シーフを選ばないのは、役割が被るということでルナがすねるからで、レベルに関しては森林の場合ならば、パーティの練度を上げながらレベリングをできるということからだ。


「性別は──」

「女性がいいです」

「女性択一でしょ。獣人は却下!」

「……女性で。種族は気にしない形で」


 どちらでもよいと言おうとしたシグの言葉を遮るように、ヒルデとルナは言う。

 多数決で勝ったと言わんばかりの表情をする二人に、わかったよと諦めたシグは一部彼女達の言う通りにする。

 なんでだと駄々をこねるルナだが、それは三人から放置されている。


「ダンジョン内の通りでいいんだな?」

「肉体関係はなし。武具の更新は必要なら一度だけ。後者は隠しておいてくれよ?」

「それで見繕って声をかけてみるか。紹介の有無は職員から確認してくれ」


 お疲れと言われて、出ていくことを促された三人はその場を後にする。


「で、なんで女性択一なんだ?」

「臨時の男性にいい思い出がなくて」

「ハーレムでいいじゃん。それとも男色が!?」

「あるわけないだろ!」


 そう他愛のない話をしながら、今日も今日とてシグ達三人はダンジョンの探索を始めるのだった。

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