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84.極悪少女の眼差し

極悪コンボ!


「【死んだか?】『さて、どうだろう?』」


 ダンジョンは死なないが、聖騎士とマスターである少女の方は丸ごと殺れたのではないか?

 周囲一帯はあらかた吹き飛び、巨大な隕石が降って来た跡のようにクレーターが出来ている。

 上を見上げれば砂埃と爆煙に遮られてはいるものの、遥か遠くに微かに陽光が確認できた。


「【遺体まで消し飛んでしまったら死亡確認ができな――】」


 即座にその場を飛び退けば熱閃が先ほどまで我が居た場所を蒸発させ、溶断していった。


「【はっ! あの聖騎士の女まだ生きて――】」


 空中で両腕を顔の前に上げてガードするも、身体の芯まで響く衝撃に苦悶の声を漏らしながら吹き飛ばされる。


「『完全に油断してたでしょ?』【……うむ、完全に勝ったと思っておった。むしろアレで死なんとは思わんかったわ】」


 消し飛んだ両腕を再生しながら起き上がり、あの攻撃から生き延びていた好敵手たちを見遣る。

 聖騎士の女は直撃を喰らっておらず、攻撃の中心地から少し離れていたお陰なのか、その炎の鎧が原因なのかは不明だが、比較的マシな重傷で済んでいた。

 問題はダンジョンマスターと思われる少女の方だ……上半身の右半分と両足首が消し飛んでいると言うのに、その真紅の瞳で射殺すような視線を送っておる。


「【ぶわはははは! あのボロッボロの左腕で我を殴り飛ばしたというのか!】」


 唯一残った左腕もほぼ原型を留めておらず、完全に使い物にならないだろうというのにそれで反撃して来おった。

 自分の身体の再生さえも後回しにして、それほどの致命傷を負っておいて、それでもなお殴り返す事を選んだのだ。


「【はァ、はぁ……なるほどなるほど、そりゃそうですよね、同じルーン魔術なら対抗できると考えるべきですよね、何故こんな簡単な事も見落としていたのか、そもそも何時でも逃げられるなどと油断を――】」


「【なんだ急にペラペラと】『ハイになってる?』」


 よく聞き取れぬが、何をペラペラと喋っておるのだ? 隙だらけだが、これは罠か?

 自分の身体を再生する時間を稼いでいるのか? 聖騎士の様子を盗み見るに、奴も困惑しながらも次の攻撃に備えて回復と溜めを開始しておるな。


「『頭を強く打っちゃったのかもね』【ふん、このまま何も無いのであればそれまでよ】」


 そこそこ愉しかったのは事実であるし、あの一撃を生き延びた事は賞賛に値するが、そこから先が無いのであれば無駄に苦痛を長引かせず終わらせてやろう。


「【今楽にしてやろう――】」


「【――デカブツ、先ほどから全部聞こえていますよ】」


「【ほう?】」


「【アデリーナさんも、勝手な動きはしない方が良いですよ】」


「……」


 なんだ? 正気ではあったのか? だがしかし、何だかあの少女に視線を向けられると何かを思い出しそうで落ち着かぬな。


「『なんか、奥底まで覗き見られているみたいで落ち着かない』【ぬ? 我はそんな感じはせぬがかな】」


 どうやら我がマスターはまた違った感想を、あの少女の視線に抱いたらしい。

 最初に顔を合わせた時とは違って真紅に輝く瞳を見れば、奴が魔眼の類いを発動しているのは容易に察せられる。

 まさか、それが原因で――


「【私は大丈夫でしたが、アナタ達は何処まで耐えられますかね】」


 【神核(しんぞう)】のマスターの次の行動を予測しようと、今現在発動している魔眼の能力を予想しようとした矢先――少女は自らの両目を周囲の組織ごと左手でいっぺんに抉り取った。


「――【悪魔の眼差しディアボロ・エスペクトス】」


 まるで鏡に写った自分と視線が合ったような奇妙な心地がした。


「――ッ」


「『ヒッ――』」


 我の口から漏れた小さな悲鳴――それは我がマスターの断末魔でもあった。


「【あぁ、なるほどなるほど、やはりそうでしたか……魂魄眼と隻眼の権能はかなり相性が良いみたいですね。相手の魂の奥底まで覗けるのですから】」


 自分の中に居たマスターの存在が急激に小さくなり、どんどんその魂が萎んでいく感覚に動揺が隠せない。

 視界の端で高熱の炎が消え去り、聖騎士の女が倒れた気がしたが、そんな事に構っている余裕もなかった。


【マスター? どうしたマスター!?】


 発動していた権能が解除され、マスターという依り代を喪った事で身体の自由が失われていく。


「あぁ、時間切れ……ですか……」


【大丈夫か?】


「大丈夫ではないので、アークが代わりに吸収して下さい」


【待ってろ。すぐに終わらせてくる】


 憑依が解かれ、元のダンジョンへと引き戻されそうになる本体を推し留め、目を開いたまま動かないマスターへと必死に手を伸ばす。

 そんな我の前に、同類が……【神核(しんぞう)】の悪魔が立ち塞がる。


【その感覚、俺らにとっちゃトラウマだよな―― (ウイルド)


 あぁ、そうか、何故忘れていたのか。


【我は以前にもこんな経験を――】


 その言葉を最期に、自我が消え失せる。

悪魔の眼差し→視線を向けた相手を恐怖によって発狂死させる


魂魄眼→相手の魂を盗み見る


合ッ体――!!


耐性貫通全体必中即死攻撃!(ダメ〜!)


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― 新着の感想 ―
インチキコンボすぎる……
このシーンまじでテンション上がった 断末魔に少年が受けた恐怖の感情が現れてていいですね 殺伐系敬語美少女目当てで読み始めたが普通にストーリーも読んでて楽しい
魂のないアンデッド以外なら言葉通り耐性貫通全体必中即死攻撃かな? ならアンデッドで、と言いたいところだが、ユーリちゃんはアンデッド使いだ!?
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