71.隻眼が齎したもの
ステータス表記があるので、苦手な方は注意してね
【なぁ、俺様が悪かったからそろそろ許してくれや】
「許しを乞う側とは思えないふてぶてしい態度ですね」
神核の玉座に腰を下ろし、隻眼のダンジョンとの戦争で獲得した戦果の確認をしていると、頭上からアークの声が届く。
先ず目線と言いますか、頭を私よりも低い位置に持って来いというところから教えなければならないのか、それともやはり悪魔には謝罪という概念がないのか。
どちらにせよ、頭上で涅槃の体勢で気軽に許してくれと頼むのは誠意が感じられませんね。
【それよりさっきから何をしてんだよ】
「それより……まぁ、いいです」
私も何時までも怒っていては主としての器を疑われますし、別の機会に意趣返しをしてやれば良いので今回は流してあげますか。
「隻眼を吸収した事によって得た領土と、DPやら財宝などを確認していたのですよ」
【ほーん、何か良いもんあったか?】
「そうですね……例えばこことかでしょうか?」
スマホの画面にダンジョンの見取り図を表示させ、それをアークにも見せる。
そこには元隻眼のダンジョンだった物の領域が映されており、長い時を掛けてコツコツと拡げていったのか地下から三つの大河川の水源に通じるポイントに手を伸ばしていた様子が窺えます。
元々ルツェルンを擁する『シュヴィーツ誓約同盟』は巨大な山脈に跨っており、そしてこの山脈は様々な河川の水源地となっていますのでもしもの時に備えて押さえていたのでしょう。
そのため元隻眼の領地を俯瞰して見ると本拠地から数匹のミミズが伸びているように見え、横から見れば大きなアリの巣から急に真横にトンネルが掘られているように見えるのです。
「もう少しDPが貯まったら本格的に介入が出来そうですね」
【果樹園も増えたしな】
「あぁ、そうですね、ルツェルンの住民達の生き残りは全員地下でDPを生産してくれていますので貯まるのは割と早いかも知れません」
先ず樹木となっても元は人、もちろんダンジョン内に閉じ込める事で少量ずつDPを搾り取れる。
その上あれら人樹木が果実を実らせた時、そこに宿る魂は人間の物である確認が取れています。
都市をそのまま運営せずとも安定した収入源になるだけでなく、定期的に大きな収穫まで約束された素晴らしいインフラです。
「人間農場をもっと拡張したいのですが、人樹木が実らせた果実から更に増やせないものですかね」
【どっちにしろ時間が掛かるな】
「えぇ、果樹だろうと人間だろうと、増やそうと思えば年単位で時間が掛かりますからね」
今のところ人間農場は都市を陰から隠れて運営する様な面倒を抱え込まず、また反抗的な動物を拘束し続ける手間が省ける牢屋みたいなものです。
これが真にその価値を発揮するのは五年後、十年後の長い話になるでしょう。
「他にもアンデッドの素材となりそうな死体や、隻眼が蓄えていたゴーレムの兵隊、ルツェルンという都市全体が持っていた資産や武具などですね」
【……暫くは大丈夫なのか?】
「リソースのやり繰りには困らないでしょうね」
しかしながら依然として不安要素はあります。
隻眼を呑み込む前であっても、準備や計画があれば隻眼のような老舗の優勝候補を新米の私達でも下せると分かりました。
逆を言えば私達もいつ落とされてもおかしくないという事であり、それでいて戦争後の今は神核の領地も元隻眼だった領地も、どこもかしこも修繕や改装が必要な状態です。
なので今勇者達や同業に攻め込まれるのは勘弁して欲しいところですね。
「とりあえず今後の予定は……そうですね、私の強化やダンジョンの改装を行いつつ、未だに元隻眼の領域内に居座っている人間達の生き残りを消して回るというところですかね」
【その間に攻め込まれないといいな】
「……そう願っていますよ」
祈っても良いのですが、この世界の女神は明確な敵ですからね。
「後はソウルオーブなどで強化された私の基礎能力ですかね」
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名前:神田 悠里
性別:女性
年齢:15歳
種族:ダンジョンマスターLv.12 《亜神》
属性:光
状態:通常
カルマ: 《悪性》
ダンジョン機能
《不完全創造》《不完全知識》《把握》《拡張》《配置》《回収》《吸収》《合成》《改造》《同化》《監視》《独立》《分体》《召喚》《簒奪》
――※その他ロックされている機能があります。
基本技能
《日本語》《英語》《アウソニア言語》《ガリア言語》《ゲルマニア言語》
《数学》《暗算》《高度計算》《義務教育》《不完全科学知識》《不完全化学知識》《不完全倫理》《不完全魔術知識》
《ストレス耐性》《苦痛耐性》《空腹耐性》《睡眠耐性》《不眠耐性》《刃傷耐性》《殴打耐性》《火傷耐性》《電流耐性》《凍結耐性》《疾病耐性》《痛覚鈍化》《出血鈍化》《悪臭耐性》《魅了耐性》《幻惑耐性》《落下耐性》《毒物耐性》《魔術耐性》《魔眼耐性》
《息止め》《料理》《窃盗》《性技》《房中術》《調教》《恫喝》《恐喝》《脅迫》《採取》《詐術》《話術》《演技》《交渉》《演説》《扇動》《虚言》《隠蔽》《隠密》《消音》《消臭》
《気配感知》《敵意感知》《悪意感知》《好意感知》《視線感知》《危機感知》《魔力感知》
《剣術》《短剣術》《大剣術》《槍術》《短槍術》《長槍術》《弓術》《短弓術》《長弓術》《盾術》《小盾術》《大盾術》《鎧術》《拳術》《蹴術》《体術》《柔術》《剛術》《棒術》《斧術》《槌術》《暗殺術》《投擲》
《剛力》《耐久》《俊足》《柔軟》《遠見》《聞き耳》《免疫》《直感》《性豪》《絶倫》
特殊技能
《サヴォイア剣術・正道》《サヴォイア剣術・外道》
《空絶眼》《魅了眼》《爆炎眼》《停滞眼》《雷霆眼》《消失眼》《幻惑眼》《鑑定眼》《観察眼》《透視眼》
特有技能
《魂魄眼》《魔眼換装》
権能
《ダンジョンマスターLv.12》《■■の■■》
《悪魔の心臓》《悪魔の視線》
ルーン文字
《ᚨ》《ᚱ》
称号
《異世界人》《転移者》《迷宮の主》《人殺し》《殺戮者》《親殺し》《狂人》《被虐待児》《契約者》《魂喰い》《死霊使い》《ゴーレム使い》《共喰い》
加護
《地球神の加護》《■■との契約》《■■の■■》
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普通の魔術はどうやっても覚えられない癖に、自分が持っていない技能は強制的に要らない物でも付与されるの何とかならないのでしょうか。
まぁ、今のところ不利な物はありませんし、使わなければ良いだけの話ですけど……いえ、使う機会なんて恐らくありませんけど。
そしてまた私の知らないところで知らない物が増えていますね。ソウルオーブでも取得した覚えか無いのですが。
とりあえず興味がある物から一つずつ見ていきますか。
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《魔眼換装》
星の理から脱却し、捻じ曲げる■■の■■の異能。
他者から魔眼を奪い、自由に換装する事ができる。
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これは隻眼のマスターが使用していたものでしょうね……なるほど、あの数多くの魔眼は隻眼から与えられた物ではなく、長い時を掛けて少しずつ集めた物でしたか。
いえ、歴代のマスター達が集めた物をマスターとなった瞬間に引き継げるのでしたら、与えられるという表現も間違ってはいませんね。
そして権能ではなく、異能らしいのですが、そういったの神核には無かったと思うので後でアークを締めましょう。
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《悪魔の心臓》
星の理から脱却し、捻じ曲げる■■の権能。
星を、世界を構成する純粋なエネルギーを自らへと取り込める。
不完全なまま使用すれば、代償として寿命を失う。
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《悪魔の視線》
星の理から脱却し、捻じ曲げる■■の権能。
星へ、世界へ刻み込んだ恐怖を今一度呼び起こす。
不完全なまま使用するには、代償に魔眼を捧げる必要がある。
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これらは概ね予想通りと言いますか、再確認の意味が強いですね。
ただ【悪魔の視線】の代償が魔眼というところが意外でした。これは魔眼さえあれば幾らでも発動できるという事でしょうか? 隻眼が多くの魔眼を保有していた理由の一つかも知れませんね。
発動の為に一々自ら目を潰さなければならないのは少し嫌ですが、連発できるのであれば心強いでしょう。
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《■■の■■》
星の理から脱却し、捻じ曲げる■■の■■の権能。
■■を慰める事が出来るのは、■■だけである。
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これが権能の方です。意味が分かりません。
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《■■の■■》
星の理から脱却し、捻じ曲げる■■の■■。
思い出せ、今すぐに。
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そしてこれが加護の方……なの、ですが。
「説明というより、要求ではないですか」
【なんだこりゃ?】
「アークも分からないんですか?」
【記憶が無い上に肝心な部分が読めないんじゃなぁ……隻眼を取り込んだら現れたって事は、俺様に関係する事だろうが】
「まぁ、確かに今すぐ思い出せとか言ってますもんね」
自らの身体をバラバラにした事によって、アークが多くの記憶を失っているのは周知の事実です。
人格は生前? と何ら変わっていない様ですが、この『今すぐ思い出せ』という文面を見る限りアークに向けた物と考えるのが妥当でしょう。
……何故それが私の加護に欄に載っているのかはさっぱり分かりませんが。
「……まぁ、これからも同業を降し、アークの同類を取り込むのは変わりませんからいずれ分かるでしょう」
【そうだな、勝ち進んで行けばいずれ分かるだろう】
今の状況では圧倒的に情報が足りず、考え込んでいても推測や妄想の域を出ません。
だったら先ずは目の前の事を着実にやるべきでしょう。
「さて、では詳細な計画を練っていきましょう――」
いつ攻め込まれても良いように、入念な強化計画を練りましょう。
いったいどんな言葉が入るんだろうなぁ……(すっとぼけ)
ちなみに『悪魔』という言葉ではありません。
良かったら皆も予想してみてね!まぁ、そこそこ分かりやすいと思うけど()