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悪逆のダンジョンマスター 〜極悪少女の異世界蹂躙〜  作者: たけのこ
ダンジョン防衛編

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69.踊る夢その3

新章でござい!


 ――あぁ、またユーリの夢か。


 目の前で自分の母親に叩かれる少女を見て、即座にそう思った。


『どうして先生の言う事が聞けないの!』


『……身体を触られたくないからです』


『貴女は救われたくないの!?』


『……でもお母さんの言う先生は何の資格も持っていな――』


 今よりも小さなユーリが全てを言い終えるよりも前に、頬を叩く乾いた音が響き渡った。


『先生が必要だと言うなら必要なの! 専門家の言うことを聞きなさい!』


『……専門家とは、なんの専門家ですか』


『霊能力よ! それでお母さんも救われたんだから、貴女もしっかり言う事を聞きなさい!』


『……はい』


 なんだ、その霊能力とやらは……地球にはこの世界には無い魔法体系が存在するのか?

 それとも、あれか? アンデッドとかを生み出したりする奴か? よく分かんねぇが、ユーリは嫌がってるみてぇだな。


『悠里が嫌がってるじゃないか! それにあんな怪しげな男を信用して! あんなのはただのロリコンだ!』


『貴方までなんて事を言うの!?』


『お前こそ何時までもこんな非科学的な事ばかり!』


『……お父さん、お母さん、喧嘩は止めてください』


 小さなユーリの懇願は、夫婦喧嘩の怒声に阻まれて何処にも届かなかった。

 それにしても、なんだろうなぁ……ユーリの奴が目の前で理不尽な目に遭っていると――何だか無性に全てをぶち壊したくなる。


『……』


 そんな俺様の物騒な考えを見通したのか、小さなユーリとまた目が合った気がした。






 ――あぁ、またアークの夢ですか。


 男性である事以外は分からず、薄ぼんやりとしたモザイクの様な、認識してはすぐにその印象を忘れてしまって顔も、どんな姿形をしていて、どのくらいの背丈なのかもよく分からない存在が……アークが目の前に立って居ました。


『■■■■■様はなんで片目が無いの?』


【――、――】


『えっ!? 自分で抉り取っちゃったの!?』


 夢の中の私は、私とは違う女性の姿と声でアークとまたお喋りしている様ですね。

 これは一種の憑依なのか、相変わらず自分の意思では身体も口も視線も動かせないみたいで、ちょっとばかり不自由です。

 今この瞬間の意識は私の物なのに、自分の口から別人の言葉が発せられる感覚には相変わらず慣れず、そして姿だけでなく、アークの声まで私には聞こえず、理解が出来ないのが少しばかり腹立たしいです。


【――】


「魔術の代償にしたって……■■■■■様って本当は馬鹿なの?」


【――】


「わっ! ごめんなさい! 謝るからもう教えないなんて言わないで!」


 にしてもそうですか、アークはルーン魔術を覚える? 開発する? 為に片目を抉り取ってしまうスプラッタさんでしたか。

 そして教えを乞う相手を正面から罵倒し、その舌の根も乾かぬうちに慌てたように謝り倒す、この私が憑依している女性はあまり頭の出来が宜しくないようです。


「ねっ! ねっ! この通りだから許して! 何なら頬っぺにチューしてあげるから!」


【――、――】


「……うわぁ、■■■■■様ってお堅いんだねぇ……今時そんな真面目な人は都会どころか田舎にだって居ないよ」


【――】


「それでも若い女性は自分を大切にするべき? ……ふーん、そう言って■■■■■様はあんまり私の事が好きじゃないんでしょ?」


【――、――】


「わ、わかった! わかったから! そんな事を真面目に言われると照れちゃうよ……」


 なんでしょう、私は何を見せられているのでしょうか……これだけでアークと知らない女性はとても親密な関係にあると推察できますが、それが何だか妙に気に食わない。

 アークが過去に誰と何処で何をしていようと、今の私とアークには全く関係がない話ですのに。


「ゴホン! そんな事よりも新しい文字を教えてよ! (アンスール)の使い方はもうバッチリなんだから!」


【――】


「調子に乗ってないもん! 良いから教えてよ!」


【――】


 お調子者な女性の様子に、まるで疲れたかのように、呆れたように肩を竦め、溜め息を吐いたアークが本当にしょうがないとでも言いたげな雰囲気――いえ、実際に言っていたのかも知れません――で空中に指を滑らせる。


【――(ラド)

隻眼が持っていたルーン文字です。

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― 新着の感想 ―
オーディンかもしれんよ
ユーリちゃん、微妙にジェラシー? アークの方も思うところがありそうだし。 キミらもうくっついちゃいなYo、と言いたいところだが、身も心も重ねた(憑依)した仲だったね。
なんかミーミルの泉とか、オティヌス関連を連想する隻眼やのぉ。
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