第一章
文才は何処かへ旅に行ってしまったので帰ってきません。
昔、むかしのことです。
とある所に、平和…といってはあれですか。戦争は少々ですがありましたし。はい、とにかく、小さな国がありました。
そんな国の公爵家には、とても美しい訳でもなく、とても可愛らしいと言う訳でもない、言うなれば、平凡。その一言に尽きるご令嬢がいました。
ご令嬢は、魔法が上下関係を表すこの国で、あまり魔法が使えず悩んでいました。
とある日です。ご令嬢は一人の少年に出逢います。
少年は、とても魔法が使えて、ご令嬢は魔法を教えて欲しいと、乞いました。
少年は、わらいました。
ご令嬢は、人並みに魔法が使えるようになり、そのまま、平凡のまま、その生を終えました。
…これが、私の物語。
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水の中にいるようで。
揺蕩う意識の中、落ちていく。
落ちていく。
…どこまで、おちるんだろう。
そこまで思ったところで、
視界が、変わった
「…っあ」
伸ばした手。その先には、何もない。
「!、お嬢様!」
知らぬ声。使用人にこんな人はいなかった。
「…誰」
お嬢様、と私を呼ぶ人は、心底驚いたように目を見開く。そして、心底困惑している顔をつくる。
「私は、ラファエラお嬢様に使える者で御座います」
ラファエラ…?知らない。だが、何故か私は焦りを覚える。
「ラファエ、ラ?」
自分のものとは思えない、ふくよかな手。垂れてくる髪は、質も違えば色も違った。
私と髪はこんなにしろくない。
しろいのは…
「ラファエラ=キャベンディッシュ様…御記憶ございませんか」
___ラファエラ。可愛い名前なのに白豚なんだぁ
___あっ、ころされちゃった
己の意志とは関係なく流れ込んでくる記憶。
困惑とともに、ふらりと力がなくなる
もう、…キャパオーバーだ。