2話 絶対に彼と結婚します。
「わ、私と結婚してくださいませ!!」
「……え?」
言ってしまった。
一目惚れなんてしたことがなかったから。
焦ってそれしか言えなくて、彼を逃したくなくて。
そう思ってあたふたしていたら、彼はふふっと笑ってこう言った。
「いいよ。僕と結婚しようか」
そのあとのことは、よく覚えていない。
多分、ふらふらの足で馬車に乗り込み、帰ったのだろう。
喜びと、嬉しさで胸がいっぱいだった。
そのことを、すぐにお父様に話してしまうほどに。
「お父様、私、一目惚れした方がいますの……」
「そうかそうか……。って、ぇえ!?」
「まあ、あなた。びっくりしすぎよ、もう。きっと、サーシャは王太子殿下より素敵な方を見つけたのよ。ねえ。そうでしょう?」
「はい。私、そのかたと結婚いたしますわ。それに、彼も受け入れてくださったもの」
サーシャはまさか、こんなにも驚かれるとは思っていなかった。
すると突然お父様は涙ぐみながらこう言った。
「そうか、ぐすっ。サーシャもついに相手が……ぐすっ。今まで利益があるなら王太子でもいいですとしか言わなかったのに」
「そんなになくことじゃないと思いますわ」
「サーシャ、家なのだからその違和感しか感じない口調はいいんじゃないかしら?」
「……そうですね。やめましょうか。家なんですから」
そうして、サーシャは家族とたわいもない時間を楽しんでいた。
〜次の日〜
「王太子殿下。私と婚約解消してくださいませ。今までありがとうございました」
「は、え?ど、どういうこと?」
「私、運命の人というものを見つけてしまいましたの。その方と結婚いたしますわ」
「いや、どういうこと?」
サーシャは、王太子の婚約者をすぐにやめたかったので、すぐに切り出したら王太子が大いに驚き戸惑っている。
少し面白いと思いながらもサーシャは説明をする。
「私、昨日一目惚れというものをして、うっかりその方に求婚してしまったの。でも、そのかたは求婚を受け入れてくれたので、婚約者は辞めたいのですわ」
「あ、そうか。なるほど…。なら、仕方ない、かな?」
「わかってくださってありがとうございます。それでは失礼いたしますわ」
そう言ってサーシャは転移魔法を使って消えてしまった。
そんな中、部屋に取り残された王太子はこう思った。
「サーシャ嬢、嵐のように去っていったな……。いつもより行動力が高くなってない……?」
部屋の中にいた城のメイド達も頷いていたので間違いはないと王太子は思った。