4.格致日新
少し長めです
後少しで連載終了します
ここまで読んでくださった皆さん
本当にありがとうございます
最後まで読んでいただければ幸いです
俺は小学四年生の勝
「勝」と書いてしょうと読む。
クラスの中ではリーダー的な役割をしている。
勉強も運動もできる方だと思ってるしみんなも俺を信頼してくれている。
今日だって体育のとき先生に言われてみんなの前で手本を見せた。
みんな拍手してくれるし、俺以上にうまいやつなんていないからそれが普通だと思っていた。
しかしそれはある出来事によって一変してしまった。
「みんな、今日から一緒に勉強する秀くんよ。仲良くしてあげてね。」
「えっと..石川から来ました。髙木秀です。よろしくおねがいします。」
「秀くんはあそこの勝くんの隣の席ね。」
「はい..」
俺は隣りに座ったそいつに
「俺、勝!よろしくな!」
と言った。
しかし彼は「う、うん....」とぎこちない返事をしただけで後はずっと机を見ていた。
その日の午後は交流も兼ねて体育で鬼ごっこをすることになった。
秀は転校してきたばかりなのにもうこの学校の体操服を着ていた。
俺はいつもどおり鬼になり追いかける側になった。
でも俺が狙うのは一人...そう秀だけだ。
話しかけても話に乗ってこないし目も合わせようともしない。
癪に障るから一番最初に捕まえてやろうと思った。
しかしその考えは開始早々打ち砕かれた。
先生の笛を合図に俺は秀に一直線で向かった。
他の奴らは逃げていくのに秀だけそこに突っ立っていた。
(いける!)
そう思った瞬間だった。
秀は体を低くし、左へ向かって急加速した。
俺は止まり切れず逃げた方を見たときにはもう十数メートル離れていた。
鬼ごっこが終わり、逃げ切ったのはサッカーを習っている奴らと秀だけだった。
「お前足速えんだな。」
学校が終わり廊下を歩いて帰ろうとしていた秀に俺は声をかけた。
「いや..君のほうが速いよ。」
「なわけねえって!一瞬で軽く十メートルは離れたんだぜ?!」
「....」
「おいシカトすんなよ」
「ごめん、僕今日塾があるんだ。先に帰るね。」
そう言って彼はゆっくりと学校から帰っていった。
「なんなんだよあいつ。つまんねえやつだ。」
帰り道俺はずっとあいつに腹が立っていた。
「話しかけてやってんのに。なんなんだよあの態度は。」
気がつけば知らない道に入っていた。
腹が立って下を向いて帰っていたから裏道にでも入ってしまったんだろう。
「ん?なんだこの紙?なんか書いてる」
家にも帰らなければならなかったので読みながら帰った。
部屋に帰った俺は辞書を探して調べ物をした。
「格致日新ってなんだっけ?えっと...あった!『物事の本質を追い求めて知識を深め、日々向上していくこと』か..じゃあちげーな」
紙に書いてあった情報は驚くほど俺と同じだったがそこだけは違った。
本質なんて目に見えてるものだし、知識を深めたところでなんにもならない。
「じゃ、この紙は用済みだな。」
俺は紙をくしゃくしゃにまるめてゴミ箱へ投げ捨てた。
次の日学校へ行くといつもと雰囲気が違った。
おはようと言っても誰も返してくれない。
しかも俺の席の周りは人だかりができている。
「なあ、座れねーからどいてくんない?」
そう俺が言うと
「俺らはもうお前の言うことは聞かねえ」
「は?」
「お前秀のこと馬鹿にしてるだろ。」
「なんでそうなってんだよ!」
「みんな言ってるぜ。」
先生がもし来ていなかったら俺はそいつを殴り飛ばすところだった。
その後の授業は一切集中できず、なんにも頭に入らなかった。
最後の授業は国語だった。
「さて、後少ししか時間がないので最後に私の好きな四字熟語を紹介します。」
興味はなかったがずっと何も考えずにいるのもめんどくさいので聞くことにした。
「私が好きな四字熟語は格致日新です。」
「?!」
先生は確実に今「格致日新」っと言った。
「この四字熟語には『物事の本質を追い求めて、知識を深め、日々向上していく』っという意味があります。物事の本質とは外だけでなく中も含めて本質で....」
「物事の本質とは外だけでなく中も含めて本質...」
その部分が俺の中で反響していた。
俺は今まで本質から逃げていたのかもしれない。
秀だって俺になにかしたわけじゃない。
格致日新、今の俺にぴったりだ。
「来週から一人一個四字熟語を紹介してもらいます。準備しておいてください。」
それを聞いて俺はすぐに決めた。
今の俺ならきっといい発表ができる。
秀が来る前じゃなくてみんなと笑える仲間になれるはずだ。
俺はランドセルを揺らしながらダッシュで家に帰った。
その後は少し時間がかかります。
必ず週末には上げるので待っていてください!