2.臨機応変
僕は中学二年野球部の拓翔
勉強は学年で二十番目ぐらいでスポーツも人並みにしかできない。
野球部に入ったのも友達が入ったからで帰宅部でも別に良かった。
部活が休みの日僕は街の裏道を通って買い物に行っていた。
その途中いつもはなかった謎の小道があった。
そこには一人の男性がいて何かを手にしていた。
怪しんで近づいたところ気付いたらしく一目散に逃げていった。
「何だったんだろう?」
落ちている紙を拾って読んでみると
『人を探しています 年齢:14歳 性別:男....
「え!ちょ!は?なんで?は?」
びっくりした僕は紙をグシャグシャに丸めた。
自分の特徴とあまりに似ていたからだ。
僕は買い物を早めに終わらせて部屋でグシャグシャになった紙を読み直していた。
「性格:臨機応変に対応できる...やった!僕じゃない!」
僕は負け試合となればすぐに弱音を吐くし、変化球に対応したスイングができるわけでもない。
「でも親に見つかればめんどくさいことになるし、早めに見つけてこの人に渡してあげよう」
週末、僕は親に友達と遊ぶと偽って人探しをした。
しかし紙に書いてあるような人は誰もおらず、結局疲れただけだった。
それから一週間たち僕は父と海へ釣りに行った。
しかし僕は一匹しか釣れず虚ろな目で海を見ていた。
帰りの車の中で
「なあ拓翔、お前臨機応変ってわかるか?」
「うん」
流石に舐めてるんじゃないかと思いながら父の話を聞いていた。
「水は何よりもそうだと思わないか。嵐が来れば荒れ、大雨が降れば大木だって流す。」
「...」
「水はいつだって自分の正しいと思ったことに素直だ。お前もそんなやつになれよ。」
「..うん」
水は様々に形を変える。
時に優しく、時に怖く、雨、川、海を繰り返して終わりは見えない。
それは人間だって同じなのかもしれない。
いつ最期が来るかなんて誰にもわからない。
でも人間だって水のように臨機応変に動く事ができる。
「ふぅ」
「どうした?」
「なんでもない」
水面にきらめく夕日を車窓から眺めて過去の自分がいる世界に別れを告げた。
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