名もない感情2
王立学園の学園祭が本日から開催である。
俺たちのクラスは1、2年の時と同様「占いの館?」だ。
もはや占いではなくお悩み相談室と化した感が否めないが、ソラネル領の紅茶も飲めるとあって盛況だ。
俺は生徒会にも所属していて、そちらでは演劇を行うことになった。
ベルトランが脚本を書いた。
聖女と王子の恋の話で俺が王子役だ。
もちろん俺は反対した。
しかし賛成多数により可決してしまった。
聖女役は公爵令嬢のカトリーヌ嬢だ。
俺の婚約者候補の一人で、パトリックがやけに俺と彼女を2人きりにしたがっていた。
そろそろ決めなければいけないと、わかってはいるのだが……。
あの日俺の心の片隅に居着いた、ほんの小さな小さな名もない感情が、どうしても消えてくれない。
毎日教室でクラスメイトとして会うたびに、公務で聖女として会うたびに、名もない感情が顔を出す。
この感情を早く消したくて昨年のクリスマスに2人へ俺なりのプレゼントをしたのだが、関係は変わらぬまま。
焦った過ぎる。
そして、彼の方にはレイモンを通じて劇を見に来て欲しいと伝えた。
脚本の内容は、王子と聖女が学園で出会い、少しずつ愛を育み、クライマックスで王子が聖女に告白するという、至ってシンプルなものだ。ベルトランは何がしたいんだ?
「私は聖女様を愛しています」
言い慣れない言葉に苦戦して、ベルトランに何度も練習させられた。
いざ本番が始まると、思ったよりもスムーズに進んでいった。
後はクライマックスという時にある席を確認した。
始まった時にはまだ空いていた席に人影を見つけた。
渋い顔をした彼がいた。レイモンに無理矢理連れて来られたのだろう。
隣には嬉しそうな顔をした聖女様がいた。
また名もない感情が顔を出した。
俺は意を決してセリフを言った。
「俺は……聖女様を愛している!」
カトリーヌ嬢は一瞬目を見開いたが演技を続けた。
「私も王子を心よりお慕い申しております」
一瞬の静寂ののち歓声と拍手が湧き上がり、幕が降りた。
どうやら、ちゃんと伝わったみたいだ。
俺に殺気を向けるぐらい聖女様を大切に思っているのなら、そろそろ覚悟をお決めください。叔父上。




