最オブ高にカワイイ!! 友達とハロウィン機に初めてあそんだ話
私は星野さんを遊びに誘うことに成功した。
誘った時の星野さんは『いいの!? 行きたい!』とびっきりの笑顔で喜んで受け入れてくれた。
喜ぶ時もぴょんぴょん跳ねて体で気持ちを表現してたの、かわいかった~~~。
あぁー、ただでさえ話すだけでも周りの嫉妬と憎悪の目が痛いというのに、友達を独り占めしてて……
私…………捕まらないよね…………?
いやいやいやないないない!!
だって友達じゃん? 同性じゃん??
いくら容姿内面共に超絶かわいいと言ってもちょっと遊びに連れるくらい友達なんだから問題あるわけが―――――
ん? 何故か星野さんが私の方を見て笑ってる…………
「日和ちゃん、さっきからずっと面白い顔してるよ?」
私はすぐ側にあった店のガラスに自分の顔を向けた。
そこには、何かよからぬ事を企んでいるようにしか思えないような口元が歪みきった自分そっくりの人間がいた。
うっわ何あの人、気味が悪い!
と思って手を顔に当てると、なんとガラスに映った人も同じ動作をした。
さて、かわいい女子高生が隣にいてガラスに向かって棒立ちしてる人は誰でしょう…………
はい、私でーーーす……………………
最っっ悪だわ。星野さんに超絶キモイ顔見られたわ。
もう詰んだ、詰んだわ私。
友達引いたよね~~、キモイって思ったよね~~~。
「おーい、日和ちゃんー? 早く行こうよー。私と遊ぶんじゃなかったのー?」
手で顔を隠す私に問いかける星野さん。
どうやらさっきの私の顔面崩壊に気にされていないご様子。
それよりも私と遊ぶことを考えてくれている!
あぁ~まじエンジェ~~!!
「ねぇねぇ見てよ日和ちゃん! この衣装超かわいいよ!」
そうやって目を輝かせている星野さんの方が何万倍もかわいいよ。
今日はハロウィンの日ということもあり、どの店もセールや限定商品を店前に並べて行き交う人達の目を引いている。
私が目の前にしてた店も仮装専用の衣装をショウウィンドウに飾っていた。
それが星野さんの目に入ったようだ。
「このお店入ってみよ?」
私は半ば強引に手を掴まれながら店の中に連れていかれた。
店内には軽めの仮装のものから本格的なものまで揃っていた。
壁や天井にまでハロウィン仕様に装飾され、星野さんのテンションはさらに上がっていった。
「せっかくだし何か着てみようよ!」
「いやいやっ、私には……」
「これなんてかわいいよ!」
「っ~~~~!?」
星野さんが手に取ったのは魔女の衣装のようなものだった。
にしてもそれはスカート丈が短く、胸から上を大胆に露出したものだった。
「ここっ、こんなのダメだよ!!」
「え~? 試着するだけだから! ほら入って入って!」
背中を押されながら試着室に押し込まれた。
「まずはこれ着てみよ~っと」
あぁまずいまずいまずい!!
星野さん私がいるのに着替え始めちゃってる!!
いくら私が女だからって無防備すぎる!!
私はこれ以上星野さんの服の下を見まいと後ろに振り向いた。
でもそれが逆効果だった。
後ろで服の擦れる音だけが耳に入り、私の脳内が勝手に今の姿の星野さんを作っていく。
「日和ちゃん、見て!」
言われてそっと振り向く……
そこにはあざとくも口元に人差し指を添えた星野さんが私を見ていた。
「どうかな?」
「す、すごくかわいいよ……!」
「ほんと!」
かわいいなんてもんじゃない!!!
これはもう兵器だよ!!!
怖いわーー、恐ろしいわーー。
なに? なんなのこの子? まじの天使じゃん。
私死ぬの? 天使をこんな間近にして今から死ぬんじゃないの??
「日和ちゃん!? なんで泣いてるの! しかもお金まで出して!」
私には感謝を伝えるには言葉だけじゃ足りない。
結果的にお金を払わないとという義務感が生じた。
「あはははっ。やっぱり日和ちゃんといると楽しいな~」
星野さんは独り言のように呟くと、私の背中に手を回し、顔を肩にこすりつけた。
「日和ちゃん。そろそろ私の事、柚香って呼んでほしいな」
耳元に甘い声でねだる星野さん。
同時に私の心臓が鼓膜を叩き、口の中が渇く。
体勢的に自然と私の手も星野さんの背中に回ってしまうが、絹のようにさらさらとした髪が僅かに触れて私の限界を逆なでする。
ここが二人だけの密室空間なら今すぐにでも理性が飛んでどうにかしてしまっていただろう。
そう考えると、店の試着室だったのが私にとっても星野さんにとっても幸いだ。
私は切迫した頭の中を何とか整理した。
「柚香…………ちゃん…………」
「…………! 今柚香って!! もう一回! もう一回呼んで!」
「も、もういいでしょ……! これ以上は、色々限界というか……」
「え、なに?」
「なんでもないからっ。もう出よ……!」
私は一人だけ試着室から飛び出した。
店内の暖房のせいなのかさっきのせいなのか、体が熱い。
とにかくあの状況から脱しようと思わず下の名前で呼んでしまったけど、私にはまだハードルが高すぎる……
星野さんの着替えも終わり店を出ると、空はすっかり暗くなっていた。
店内の暖かさに慣れてしまった体が冷やされて余計に寒く感じた。
っ――――――!!!
「寒い~! 日和ちゃん温かいから駅までこうしてていい?」
星野さんは私の腕にしがみつき、肩に頭を傾けた。
今日は人生で最高の日かもしれない。
そして、今年のハロウィンは私の中の友達という言葉が揺らいだ日になった。
「これからも一緒にいようね? 日和ちゃん!」
あ~~~~~もうっっっ!!
そういうところ!!!!!!!