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春風



ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。

胸がいっぱいです。

 魔界の風は、正直ぬるい。

表界の風はあんなに爽やかなのに、なんで魔界のはぬるいんだろう。

巌魔は木の上でそんなことを考えた。


「おい、が・ん・ま!!何で木の上にいんだよ」


「あいかわらずね」


呼ばれて巌魔は下を見る。

つい最近出来た友達は、別の村からやってきた同じ歳の同志だ。

これまたなぜだか分からないが、巌魔の育ての母親である花鈴カリンも、下から見上げて笑っている。

いい年のわりに見た目は若い。

もっとも、老けたなど言えば、巌魔はその瞬間に勘当されるかもしれないが。


「なんで母さんまでここに?」


友人はいいとして、母がわざわざ木に登った巌魔を見に来るのはおかしい。


「大おじに呼ばれてるのよ、あなたと一緒でね」


もはや年齢は分からないが、毎年しぶとく生き延びている大おじは、扉を閉じてからも言い遊び相手になってくれている。


「もう時間?」


「そうね」 「そうだな」


2人が同時に答えて、巌魔に根で促した。


「降りろ」


「…はい」


木を降りた巌魔は2人と並んで歩き出した。

今度は何の呼び出しだろう。

また大おじの突拍子もないアイデアを聞かされるのかもしれない。


          ―∞†∞―


 庭には植物が所狭しと植えられていて、どれもきちんと手入れされていた。

見渡すと、庭の隅の薔薇が目に入る。


「あ…」


ちょうど咲き始めを迎えた赤い薔薇の隣には、白い薔薇とピンクの薔薇が植えられていた。

親子みたいに自然に寄り添う丸い膨らみが、季節の訪れを教えてくれる。

10年たってすっかり伸びた身長は、あの時は負けていた小さな茂みの高さを追い越して、薔薇のある庭の隅まで楽々見えるようになった。

柔らかな風はあの時のままだ。


「珍しい客人だね。表界の庭もきれいだろう?」


突然の声に振り返ると、1人の若い男性が庭に面した建物の窓から身を乗り出して笑っていた。


「ハルがいつも手入れしてくれるから、いつ来てもいい風に出会えるよ」


そうだ。


「ハル!ハルは元気か?」


黒神の男性は青いフレームの眼鏡を上げながら、窓枠に肘をつく。


「気になる…よね」


「うん」


窓から手を伸ばして白い花に触れながら、彼はそうだなぁ、と言った。


「ハルはね、今ウチの組織で働いてもらってるんだ。いい腕だよ」


組織?そういえば…。


「あの…もしかして…『れんちゃん』?」


「あれ?僕のこと知ってるんだ?」


「ハルから…」


『れんちゃん』はニヤリと笑った。


「そうか、なら話は早い」


ねぇ、巌魔くんと彼は問いかける。

そして巌魔を魔の罠に誘った。


「ハルのそばにいたい?」



そんなの…。

答えはもう決まってる。

1本の薔薇をもらったときから、ずっと。



楽しんでいただけましたか?

もしよければ、「春風」の下のも覗いてみてください。

完全に私の趣味ですが(笑


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