ともだち
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生きる―じゃなくて、書く力を私にっ!!
巌魔は夢を見ていた。
自分が表界に繋がる扉を見つけて、大おじに突き飛ばされて、空中で意識を失う夢。
しかもその夢には続きがあって、今度は誰かに腕や顔をつつかれている。
やけにリアルな夢で、鬱陶しい。
頬をつつく手を払いのけて、寝返りを打つ。
すると、今度は反対側の頬をつつかれた。
「ん−、なんだよもう!!」
「おきた!」
「え?」
完全に目が覚めた巌魔が体を起こすと、笑顔と黒髪が目に入った。
黒のスカートにピンクのTシャツ。
目の前の小さな女の子は、大おじとなんら変わりない格好をしている。
靴は履いていなくて、裸足で巌魔の隣にちょこんと座っていた。
「ねむたかったんだね」
「に…」
「に?」
「人間だ!!」
巌魔は座って驚いたまま後ずさりした。
「あぁ、まって!!」
女の子がそのまま嬉しそうに追いかけてきた。
巌魔はさらに後ろに逃げた。
(あ…)
背中が壁に当たった。
硬そうで、殴ってもびくともしなさそうだ。
女の子は座ったままの巌魔に思い切り抱きついた。
(わわわ!にっ、人間の女の子が!!)
「あなたはにんげんじゃないの?」
しがみついたまま巌魔を見て尋ねた。
巌魔は慌てて目をそらした。
自分が魔族と知って騒がれたら大変だ。
魔族は人間から嫌われている、と両親から教わった。
魔族は人間よりも力が強い。
髪の毛や目の色も様々で、体質も異なる。
だから魔族はずっと人間に嫌われてきたらしい。
「えと…、僕は…」
「うん」
「…」
巌魔は何も答えられず、唇をかむ。
不思議そうに顔を見上げていた女の子は、抱きついたまま、また笑った。
「ひみつ?」
「…うん、秘密。ごめんね?」
「いいよ!あのね…」
「何?」
女の子は巌魔のごわごわするTシャツに顔を埋めた。
「…なんでもない!そうだ、みて!!」
女の子は巌魔から勢いよく離れてくるりと回れ右をすると、巌魔が声をかけるまもなく駆けだした。
小さな体はすぐに生い茂る植物の中に紛れる。
よく見れば、たまたまどこかの家の庭に落ちたらしい。
植えられた木々は春の日差しを遮って、庭に木陰を落とす。
色とりどりの花が咲いているのは、表界が魔界と同じ暖かな季節だと言うことを表していた。
振り返ると、もたれていた壁が目に入る。
「高っ…」
何メートルあるんだろう。
伸びた枝が視界を遮っていてよく見えないけれど、普段見慣れている2階建てよりはずいぶん高い。
女の子の声がして、巌魔を呼ぶ。
「こっち!」
こっちってどこだ?
「みえるでしょ?」
見えません。
手、あげてよ。
「はしっこ!」
視線を庭の端に移すと、かろうじて黒髪が見えた。
プランターに植えられている大型の植物のむこうで、頭がぴょこぴょこ動いていて、おかしかった。
伸び放題の草をかき分けて進むと、妙に腕がちくちくする。
「とげとげあるよ」
今更言われても遅くて、動く度にちっちゃなとげが地道に攻撃してくる。
それでも巌魔にはたいした怪我じゃなかった。
庭の端まで来て目の前に広がったのは、小さな薔薇の群生。
つぼみは閉じたままだった。
「さかないとさみしいよね…」
この薔薇が好きなんだ。
巌魔はそう思った。
なんとなく抱きしめたい衝動に駆られて、女の子の頭に手を伸ばす。
大おじも母親も、寂しいときは無言で抱きしめてくれた。
なぜかはわからないけど、誰かの腕の中にいることで安心できた。
「…ありがとう」
しばらくしてぽつりとつぶやいた女の子は、巌魔の腕の中で小さく笑う。
その笑顔につられて巌魔も笑い返した。
こんなに優しい気持ちになったのは久しぶりな気がした。
新しいコが登場しました!!
ハルは大好きなコです。
みんな仲良くしてやってください。