6話 【村を蝕む者】
バリーと呼ばれていた老人は俺を見て
「ドリスさんが連れてきたという事は悪い人ではないのだろう、とりあえず中に入りなさい、傷の手当てをしよう」
バリーは俺を招く様にまた家の中に戻って行き俺もそれについて行った。
バリーの家は小さなテーブルと椅子などの必要最低限の物だけがギリギリでしかなくこの村自体そこまで裕福でない事は分かる。
バリーは俺を椅子に座らせると自分はもう一つの部屋に向かい消える。
バリーがいなくなり俺は辺りを見回すが木造でできた家だったが所々雨漏りからか腐っておりとても村長の家とは思えない。
「すまんな、みすぼらしい家だろう?」
おそらく救急箱の様な物を持ったバリーが無表情で俺に言ってきた。
「あ、いえ。そんなことないです」
「無理をする必要はない。この家がみすぼらしいのは私が1番知っている」
「こんな事俺が聞くのもおかしいとは思うんですがこの村はもともとこんな状況何ですか」
バリーは俺の傷を手当てしながら会話をしていたが今の俺の一言で言葉に詰まったのか急に黙り込んでしまった。
俺はふれてはいけない部分に触れてしまったのだと思い俺も黙り込んでしまった。
だが俺の手当てをひとしきり終えたバリーは再び重い口を開いた。
「元々この村は裕福ではなかったがそれでもここまで酷い有り様ではなかったんだ。 近くに森があったろう?そこに化け物が住み着いてから狩りをする事も出来ず我々はこの狭い塀の中で細々と生きるしかなくなってしまったんだよ」
「あの化け物は元々住んでいたものではなかったんだなでもこんな俺でもギリギリではあったけど死ぬ事はなかったが?貴方達が俺よりも弱いなんてとても思えない」
「そうだな、確かに我々でも倒せる奴らは確かにいる、だがあの森には人の理を超越した奴らも確実に存在しているんだよ、そして村の若い者や力ある者は皆あの森の養分になってしまったんだよ」
とバリーは悲しそうに言った。
俺はどうしようもないこの事実をどうする事も出来ずただ聞くことだけしか出来なかった。
だがその時1つの疑問が浮かびそれをバリーに聞いた。
「そんな化け物がいるならそれを討伐できる様な奴らもいるんだろう?だったらそいつらに頼めばいいんじゃあないのか?」
「そうだな、君の言う事に間違いはないが私達の村にはそんな冒険者や騎士達に要請する金がないのだよ」
金…それは全てを解決させる事の出来る魔法の様なものである、金がなければ食べ物を買う事も出来ず金がなければ住む家も着る服を買う事も出来ないのだ。
もちろんあの様な化け物が存在する以上その化け物を駆除する事を生業にする職業があってもおかしくは無い。
だがバリーが言うようにこの痩せ細った村には生きるだけで手一杯の様で冒険者や騎士といった職業の者を雇うためのお金がなく化け物のせいでお金はなく無言に続く悪循環であった。
俺は助けてもらい手当てをしてもらった恩がある、だがそれを返す為の手段がなく俺にはそれがもどかしかった。
「そんなに気にする必要もないさ、いつか誰かが何とかしてくれる。私達はそれまで耐えるさ」
「そんな…このまま何も変わらなかったらどうするんだ、そんな消極的な事でいいのかよ…」
「こんなに言ってもらえるのはありがたいがこれは私を含めた村の総意なんだよ、厳しい事をいう様だが余所者の君には関係のない事だ」
「それは…それはそうかもしれないが俺には助けられた恩がある」
ふぅ…とバリーは小さく溜め息を吐き
「それは私が勝手にやった事で村は関係のない事だ、この村では君を住まわせる余裕はない、悪いとは思うが少し休んだらこの村を出て行ってはくれないか?」
バリーは申し訳なさそうに言うが俺はバリーの言葉にただ頷くしかなかった。