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異世界転移の見える男  作者: シイナ コテツ
2/7

2話 【恐怖と激痛と初めての…】

次に俺が目を覚ました時はどこか見覚えのない森の中だった。


その森は湿度が高いのか雨も降っていないのに地面は少し湿り気温も高すぎず過ごしやすそうな森だった。


だが問題はそこじゃ無い、ここはどこで何故俺がここにいるのかという問題である。


「あの扉に吸い込まれたから俺はここにいるのか?」


などと考えてはみるものの分からない事をただ考えるだけでは何も変わらない、そう考えた俺は座り込んでいた状態から立ち上がると取り敢えず当たりを見回姿目に入るものといえば360度木ばかりだった…


「流石に森の中じゃ目印になる様な物もねえよな」


だが無策に歩き回ってしまえばそれこそ本末転倒であり見知らぬ森で土地勘もない俺には頭の中に遭難という文字が浮かび上がる。


しかし身動きを取れば遭難してしまうかもしれないがここで助けを待つ事に意味はない、飢え死にしてしまう事くらい容易に想像出来た。


だから俺は万に一つの可能性に懸けて歩き出す事を決意した。


そして方角も分からぬまま歩き出してしばらく経った…


「ここは本当にどこなんだ?どれだけ歩いたかは分かんねえけど景色が殆ど変わらねぇ…、俺は一体どこに向かってるっていうんだ?」


もはや喋る相手もいない為1人で声に出して自問自答をしていると少し離れた所であろう場所から何か獣の様な鳴き声が聞こえた。


俺はこの森に生き物がいた事に驚き疲れていた筈の足に鞭を打つ様に駆け出し声の主の元まで走るとそこには大きくて立派な角を生やした鹿の様な生き物が血塗れになって地面に伏していた。


流石に血を見た事がないわけではなかったがここまで生々しいものは初めてだったが次の瞬間俺は驚きのあまり声を出す事すら忘れてその光景を見ていた…


血塗れになった鹿の周りに小さな子供程の大きさの薄緑色の化け物が3匹血塗れの鹿を囲んで何やら嬉しそうにはしゃいでいた。


そしてその化け物の手には木の棒に先の尖った石をくくりつけた槍の様な物と少し太い木の棍棒の様な武器を握っていたのだった。


「こんなのありえるわけねえよ…、まるでゲームのモンスターじゃねえか…」


と俺は小さな声で独り言を発すると化け物達は既に息絶えている鹿に更に武器で攻撃をし今では鹿の形は見る影もなくただの肉塊と化していた。


「うぅ…、おええぇぇ…。うっ…」


その光景を一部始終見ていた俺は酷い嗚咽と嘔吐に見舞われ地面に吐いていた…


だがその嘔吐をした事自体がまずかった。


その化け物は鼻が効くのか3匹が一斉に俺の方を向いた、だがそれに俺は気付いてはいたものの足がすくんで動けずにいた、いや当然の様に恐怖もあっただろうがそれよりもあまりにも不可解な事に頭が追いついていなかった事が大きな要因だっただろう…


化け物達はゆっくり俺の方まで歩いてくる、だけど俺の足はまだ動かない。


震える手足は思考が停止しかけた頭に無理やりにでも命令をする…


「死ぬ気で逃げろ」と…。


ようやく俺の生存本能が恐怖を上回った所で一目散に化け物達とは反対の方向に逃げ出した。


幸い化け物とはいえ小さな身体は俺の半分程しかなく逃げる事だけを最優先に走っている俺の方がスピードは早かった。


どれくらい走ったかは分からないが俺は後ろを振り替えると化け物の姿はみえなかった。


それに安堵をしたのか俺の足は止まっていた…


「ハァ…ハァ…」


息を切らして呼吸を整えようとしたその時


「ギギャァーッ!!」


俺のいたすぐ横の茂みから化け物が襲い掛かってきた。


「クッソ…、ふざけんな!」


そう言う俺の声は化け物には届く事なく化け物が握りしめていた棍棒が俺の脇腹を振り抜く。


激しい衝撃と共に訪れた鈍痛はすぐに激痛となりその場に蹲ってしまった。


「うっ…このまま…じゃあ」


俺はこれから起こるであろう惨劇を想像すると頭の中にはあの鹿を思い浮かべてしまう、このままでは自分もあの鹿の様にただの肉塊にされてしまう…と。


一撃で身動きの取れなくなった俺を見て化け物は勝ち誇る様に飛び跳ねていた。


その瞬間に俺の生きたい、死にたくないという気持ちが痛みのある俺の体を突き動かした。


「殺されて…たまるかぁぁ!」


完全に油断をしているその化け物の胴体に一切の躊躇もない蹴りを入れると化け物は「プゴァッッ!?」奇怪な声をあげて地面に倒れる。


その時に落とした棍棒を拾い上げ化け物の頭目掛けて思い切り振り下ろす。


グチャ…


化け物の頭蓋は砕け水風船が弾ける様に血が飛び散る、勿論俺の服は返り血で見た目も臭いも酷い有り様だった…


「まだ2体いるんだろ?やってやるよ…やらなきゃ俺がやられるんだ…」


俺は棍棒を握り脇腹を押さえてゆっくりと森を歩き出した…

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