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異世界転移の見える男  作者: シイナ コテツ
1/7

1話 【絶望と異界の扉】

ダムダム…


体育館に響くボールの音。


キュッキュッ…


そして響くスキール音。


季節は冬、俺の2年目の最後の大会が終わった。


いや終わったのではなく終わらせた方が正しいのかもしれない、俺の小さなミスが先輩や同級生、必死で応援してくれた下級生の全てを終わらせてしまったのだ。


多分俺は2度とバスケはやらないだろう、それは言い過ぎなのかもしれないが今は自分がバスケをしている未来が全く視えない…。


いつもこの時間は授業が終わりバスケの練習をしていた、だけど今の俺には何もない。


8年間のバスケットボールに費やしてきた人生は今ここで終わりを迎えた、そして時間は午後4時30分6限目が終わり終業のチャイムが鳴る、あるものは部活動に勤しみある者は労働に勤しむ者ある者は勉学に励む者もいる。


だが俺はただ時間を無駄に浪費をするだけの存在に成り下がってしまったのだ。


俺には何もない、だから俺はただ学校に行きただ帰るだけの生産性の無い生活を送っているのだ。


「相変わらずこの季節は嫌になるぜ…」


息を吐くだけで白い吐息が漏れる、俺は首に巻いたマフラーに顔を半分程埋める。


俺の高校は家から徒歩と電車を使って通学している、いつもの駅で降りて歩いて家に向かっている時小さな公園が目に入る。


この公園は小さな遊具とバスケットゴールがひとつだけある小さな公園だった、そしてこの公園こそ俺が初めてバスケを始めた場所だった。


毎日毎日日が暮れるまで使い続けたバスケットゴール、今は他の小さな子供から高校生達に使い込まれてボードもネットもボロボロだった。


だがそんな思い出のバスケットゴールを見る度に俺の心は締め付けられる、今は見るだけでも辛い。


だが俺は不思議とそのゴールを見つめている、本当は見るだけでも辛いはずなのに今は心おだやかに見つめていた。


住宅街に面したその公園には時計はあっても鐘はない…


だけど俺は間違いなくこの耳で聞いた…大きな鐘の音を。


それに驚いた俺はその鐘の音を探すために当たりを見回した、だが長年通っているこの道に、この町を知っている俺にはこんな鐘の音が鳴る建物なんかは存在しない事は十分に知っている筈だった。


だがよく耳を澄ますとその鐘の音は俺の真後ろから聞こえてくる。


恐る恐る俺は後ろを振り替えるとそこには西洋風の黄金の扉が存在していた。


存在していたという曖昧な表現になってしまったのはその扉が宙に浮いていたからだった、鐘の音は間違いなくその扉から聞こえてくる。


「こんな事ってあるのかよ…、まるでゲームかアニメみたいな展開だな」


その扉は大きくそして煌びやかに佇んでいる、不思議と恐怖や恐れは無い。


何故だかただただ好奇心だけが今の俺を駆り立てる。


そして俺がその扉を触れようと手を伸ばした時黄金の扉が少しだけ開く、扉の先は真っ暗で激しい風が俺を襲う。


吹き飛ばされそうになる位の風を何とか踏ん張るとその瞬間まるで大きく吐き出した息を吸うように俺は扉に吸い込まれたそして扉の締まった直後その公園から黄金の扉は姿を消したのだった、吸い込まれた時に落とした俺の鞄だけを残して…


この時から俺はこの世界から跡形もなく消え去ってしまったのだった…



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