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巧と園子のテーブル

今夜の様な特別な日に、、何故運命の神様は意地悪をするのだろう?

園子は複雑な思いだった。正直に言えば、、3年前に別れた時の切ない心、そして久しぶりに彼の顔を見て感じる懐かしさに戸惑っている。

 翼とは燃える様な恋をした。好きで好きでたまらなかった。だから、2人でいる時は天にも昇る気持ちでいたが、その分別れた時はこの世の終わりと思う程辛かった。最初から園子の思いの方が彼のそれを上回り、いつも追いかける形での恋であった事は否めないが、、。それでも一緒に色々な所へ出掛け、楽しい時間を共有出来て幸せだった。少なくとも園子はそう思っていた。でも時間が経つにつれ、ちょっとずつ気持ちがすれ違う様になり、そしてそのタイミングで彼が転勤になった。遠距離になり、その流れのままに、彼からの連絡も途絶えていったのであった。あの時、園子は想像以上の悲しみから、立ち直るまでの日々の辛さを今でも覚えている。


と、その時、隣のテーブルからの視線を感じた。反射的に目をそちらに向けると、翼と目が合った。それでもお互いに知らない振りをし、それぞれの相手と食事を続けた。正面に巧を見詰め、お喋りを楽しんだ。

そして、デザートの前に、巧が席を外したその時、、珈琲を運んできたスタッフから、「お隣のテーブルの方からです。」と、 そっと2つ折りのメッセージカードを渡された。思わず翼の方を見る。彼は敢えてこちらを見ようとはしなかった。園子はほんの少しの間、手の上のカードを眺めていた。すると、、園子ははっとした、何とそこに巧の笑顔が浮かんできたのだ。

どんな事が書いてあるのか、気にならないと言えば嘘になる。それでも園子はそれを開こうとはしなかった。意外にも園子は先程の動揺が収まっていたのを感じた。


そしてそのままスタッフを呼び、カードを返してくれる様に頼んだ。


既に過ぎ去った日々である。思い出は想い出のままが良い。心からそう思った。


 そこへ巧が戻って来た。どうやら先に会計を済ませたらしい。こんなさり気ない気遣いも嬉しい。そう、私には、、終わった恋の余韻より、暖かく包んでくれる巧の方が遥かに大切である。

一瞬でも、心が翼に振れた事を申し訳なく思い、改めて巧が自分にとって、かけがいのない人であると実感した。


『私はもう大丈夫。今、ここにある幸せに感謝して、これからも巧と一緒に生きていきたい。』

 

 心からそう思った。


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