第7話 すごい錬金窯、いえ、錬金窯さんと出会えたことに感謝しなきゃ
お店を開くには商品が必要な訳で。商品開発のため(?)私は、錬金術の修行(?)に励んでいた。しかし、ここの生活は多少の使い勝手の悪さを感じさせる物で溢れていた。(すごく生活が困難という訳ではないけど、現代社会から来た身としては、多少の不便を感じることも仕方ないと思うのよね)
なので、それらを解消し、より楽しく生活できるようになるため頭を悩ませていた。
錬金術は何でも出来る訳ではないと教わったが、実は何でも出来たりした。錬金術を教えてくれた人たちから、材料とレシピを書いた特殊な紙を錬金窯に入れると教わったが、材料だけで物が出来ることが分かった。
イメージ力っていうのかしら?
ある時、錬金術での作成に行き詰まりを感じていた時に、「もう、異世界なんだし、何でもありよね。もう、好きにやってやるんだから!」と必要と思う材料を窯に入れて作りたいものを想像しつつ「どうか成功しますように!」と窯にお願いしてみたらなんと、イメージ通りに出来てしまったのだ。(材料が合わないとき(?)は失敗してなどぞの物体が出来てしまったことがあったけど、それはここだけの秘密よ)
その時、私は非常に良い窯と出会えたことに感謝したものよ。この窯のおかげで、錬金術が一気に簡単にできるようになったのだから。
それからは、料理を簡単に作るために(手抜きではないのよ。手抜きじゃないんだからね)コンソメスープの素を作った事を皮切りに、バターやチーズなどを作成していった。これにより料理が格段に美味しく出来あがってとても満足したわ。
でも、沢山作ったものの今度は保存場所が問題になってしまったの。それなら、保存できるようなものを作ればいいと思い、錬金窯さん(すごい錬金窯なので敬称を付けたら更に愛着が湧いたのは言うまでもないよね)に木の板と、氷(錬金窯さんに水を氷にしてもらったの)と中和剤(これも、錬金窯さんに水と塩と薬草で作ってもらったの)と栄養剤(これも、錬金窯さんに、薬草とワインと塩と中和剤で以下略)を投入して冷蔵庫みたいな、物を冷やせたり凍らせたり出来る物が出来ますようにとお願いしたところ、冷蔵庫(仮)が出来あがった。正確には冷蔵庫に非常に近いものね。物を冷やせたり、凍らせたり出来る画期的な物が出来あがった。ただし、定期的に栄養剤をあげないと、冷気が弱くなってきてしまうのよね。
更に、洗濯を簡単にできるように同じく、洗濯機(仮)も作ってもらった。こちらも、冷蔵庫(仮)と同様に栄養剤が必要なので、そのうち改良しようと思っている。
なんだか、錬金術で物を作るのが楽しくなってきちゃった。
しかし、生活するにはお金が必要。すぐにどうにかしないといけないほど切迫している訳ではないけど、そろそろ何を売るお店かくらいは方針を決めないといけないわね。
ここ数日で、周辺のお店や他の錬金術師が開いているお店を偵察したところ、錬金術師のお店はお薬などを販売しているところがほとんどだった。私も、練習のおかげで、お薬(各種)や栄養剤などを作ることはできるようになったけど、どこでも買えるような商品ではお店が儲からないと考えた。でも、忙しすぎるのも考えようだけどね。
そんなことを考えている間に、お店を開店出来ないまま更に数日たってしまった。
そんな中、東堂駆はと言うとお庭に植えた薬草やハーブの世話を手伝ってくれたり、錬金術で使う材料の調達をしてくれていた。材料の調達と言っても、まだお店で買って揃えられるレベルのものばかりなので、街の外にはまだでかけることはなかった。
「清水、随分悩んでるみたいだけど。俺でよければ相談にのるよ」
ある時、彼はそう言ってお店の方針について相談に乗ってくれた。私は、何を売るお店にしたらいいのか分からなくなってしまったことを相談した。
「そっか。う~ん、それだったら何でも置いてみたらいいんじゃない?」
「なんでも?」
「そう、薬でも、日用品でも。それから、清水が作ってくれた石鹸とかいいかもよ。あと、コンソメの素とかね。それで、お客さんの評判とか見てか品ぞろえを変えて行けばいいんだよ。別に、何屋って決めないといけない訳じゃないと思うんだよね」
目から鱗だ。そうか、売れ行きとかを見て、商品の入れ替えをすればいいのか。
「ありがとう!東堂君に話を聞いてもらえてよかったよ」
「どういたしまして、それならご褒美が欲しいな」
おっと、最近なりを潜めていた強引なところが出てきましたよ。でも、今回はすごくいいアドバイスをもらったことだし、叶えられる範囲でご褒美とやらをあげよう。
「わかった。何がいいの?」
「名前」
「名前?」
「駆って呼んでほしい。それと、小春って呼びたい」
すごく真剣な顔をするからどんな高い物をせがまれるのかと思いきや、そんな事と拍子抜けしてしまった。別に許可を求めるほどの物でもないと思うんだけどな。
「別に、構わないけど?そんなものでいいの?」
「うん。うん。それがいいの」
余りにも嬉しそうだったので、自主的に今日の夕食にはデザートをつけようと思った。実は、東堂駆。ううん。駆君は私と同じ甘党だったのだ。知った時は意外で少し笑ってしまった。
「それじゃ、とりあえず、駆君のアドバイスを参考にいろいろ棚に並べて売れ行きを観察してみるわ」
「小春」
「なぁに?」
「何でもない。嬉しかったから呼んでみただけ」
「はいはい。それじゃ、お店の棚に作ったものを置いてくるわ」
私が名前で呼ぶと嬉しそうにして、更に用もないのに私の名前を呼ぶだなんて、そんなに下の名前で呼び合う人間が欲しかったのね。男子の友達が多そうだったのに意外ね。
「待って、商品は決まったけど、価格やお店の名前はどうするの?」
はっ、価格は敵情視察をした際になんとなくの金額は決めたけどお店の名前について全然考えてなかった。