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錬金術師の恋  作者: バナナマヨネーズ
第二部

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第69話 要石

 もう、サクサク解決してやるわよ。


「そうと決まれば帰るわ。二人には悪いけど、お休みは一旦中止。サクッと解決してから、改めて東の国以外に旅行に行きましょう。と、言う訳で真田さん、殿様さようなら」


 そう言って、私は踵を返した。


「待て待て待て!!我はまだ名も名乗ってもおらんのだぞ。それに、祝言はどうするのだ」

「祝言はしません。なので名前も知らなくて結構です。さようなら」

「我の名は―――」


 私は、殿様の名前も聞くこともなくその場を離れた。遠くで、何かを言っていたような気もするけど、変な人はにゃーさん達で十分間に合っています。

 というか、にゃーさん達ってもしかしてこのこと知ってたりして。まさかね……。後で確認してみよう。そんなことを考えていると、駆君が私に確認をしてきた。


「サクッと解決といったが、肝心の方法はどうする?」

「これから考えるわ。それより、要石の場所を探すことから始めないと……」

「それなら、心当たりがある」

「えっ?」

「はぁ、とりあえずステイル王国に帰るなら飛行船の中で話すよ」


 こうして、私達の旅行は一泊二日という短さで終わった。これって、泣いてもいいよね。


 宿に戻って、急きょ帰られければならなくなったと説明し宿を後にした。その足で港に向かって、簡単に出国の手続きを済まして停泊していた船に乗って、東の国を出た。

 港が遠くなってから、飛行船に移動して、お昼を食べながらさっきの話の続きをすることにした。


「それで、心当たりって?」

「それを説明する前に、いくつか話しておくことがある」


 そう言って、駆君は今まで私達に秘密にしていたことを話してくれた。


「今まで、職業適性は騎士と言っていたが、正しくは守護騎士だ。更に言うと、守護対象は小春だ」

「私?」

「ああ。意識だけでもこちらで過ごしてきた経験があったから、力の使い方とか知っていたからな。こっちに召喚されて、すぐに自分が守護騎士だと分かって、守護対象を小春に設定した。それと同時に、周りには騎士となるように細工した」

「そんなこと出来るの?」

「簡単だ。守護騎士には『すべてを見通す目』という能力が備わっている」

「そうじゃなくて、何で検査をする前に自分が守護騎士だと分かったの?」

「ああ、意識だけこっちに来た時に鑑定眼を会得していたからな。一目で分かる」

「駆、鑑定眼なんて持っていたんだ。知らなかったよ」

「ああ、これはタイガとのリンクが切れかかっていた時に得た力だから、話したくても当時は話せなかったんだよ。それで、こっちに来た時に、自分の職業を鑑定眼で見て、守護騎士だと分かったから、守護対象をすぐに小春に設定したという訳だ。それと、さっきの話に戻るが、『すべてを見通す目』という能力は、鑑定眼に近いが、見るだけじゃなく、他から見える事象を隠ぺいすることが出来る。その力を使って、守護騎士を、騎士に見えるように細工をしたんだ。守護騎士だって知られたら、高遠達と一緒に駆り出されていた可能性があるからな」

「そうなんだ。鑑定眼って便利そうだね。職業のほかにも何が見えるの?」

「そうだな、小春を見てもいいか?」

「うん、いいよ」

「ありがとう。鑑定眼で人を見る時は、その人から許可を得ないと他人を見ることはできないん――んん!!」

「どうしたの?」

「駆?」


 駆君に私のことを見てもらおうとしたら、何故か駆君が何かに驚いた声を上げた。


「小春をすぐに守護対象にして良かったよ。そうじゃなかったら、初日でいろいろばれていた」

「えっ?」

「小春の職業適性は錬金術師で間違いないが、正確には『錬金術師 ※聖女の直系子孫そのため能力補正が与えられ、錬金術の理を無視することが出来る』と職業の後に注釈が付いている」

「へえええ……え!!」


 ああ、そう言えば検査の時に錬金術師の後に汚れが一瞬だけ見えたのはもしかしてそういうことだったのかな?

 とはいえ、駆君のお陰で面倒なことにならなかったのね。感謝しなくちゃ。


「駆君。いろいろありがとう。最初は、付きまとう迷惑な人だと思っていたけど、最初から君に守られていたんだね」

「迷惑な人……。まぁ、確かに最初のころは猛烈にアピールしていたけど……。ちょっと心が苦しい」

「駆は、付きまとう迷惑な人スタートだったんだね。どんまい」

「くっ」

「まあまあ、それで?」

「悪い。脱線した。それで、最初は小春に頼まれた材料の調達で魔の森に入った時に偶然出くわした魔物が他の魔物と違っていた事に気が付いたことが始まりだった。俺が出くわした魔物は、不明瞭ではあるが言葉をしゃべったんだ。最初はまったく聞き取れなかったんだが、ある時不思議な石の近くだとある程度聞き取れることに気付いた。俺はその石を核を呼んでいる。なんとなく、その核から魔物の気配が広がっていた気がしたから、そう呼ぶようになった。それで、偶然なんだが一度その核に誤って【幸福のワイン】が掛かったことがあるんだ。そうしたら、その日から数日間だけ魔物の出没が少なくなったんだ――」

「まって、駆君。なんで【幸福のワインが】誤って掛かっちゃうの?」

「あぁ~。」

「駆君?」

「小春さん。これには事情が……。実は、以前お店に変なお客が来たことがあったでしょ?それで、駆は自分がいない時に何かあったら大変だと思って、騎士団の人にお店をそれとなく警戒してくれるようにそのね、差し入れをね、していたんだよ」

「悪い!勝手に店の物を使って」

「もういいよ。でも、今度からは言ってね?」

「ああ。約束する」

「それで、たまに【幸福のワインを】核に掛けて魔物の出現を押さえてたってこと?」

「そういうこと。それに、最近魔物の数が増えていてな」

「なるほど、だから駆は今回の旅行で期限を設けたんだね」

「そうだ。それでだ、俺が核と呼んでいた石が恐らく要石だと思う」


 要石の場所は特定できた。後は、これをどうにかして鎮めることが出来れば万事解決。

 う~ん。今までの話から言うと、お酒が好きなのかしら?

 もう、これでもかってくらい【幸福のワイン】掛けてみる?

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