第61話 楽しい旅行計画1
フィーニスさんの突撃訪問の所為で、五人の事がうやむやになったまま数日が過ぎていた。
私は、このままでもいいかなぁと思い始めていたんだけど、とうとうジョエルさんがうちに乗り込んできて五人を強制連行して行ってしまった。
その時、「小春さん、甘やかしは優しさではありません。時には、厳しくするのも必要なのです。そう、働かずに、美味しいものを食べて、うらやま、ゴホン。このままではダメになってしまいます。なので、五人には当分の間頑張って使命を果たしてもらうべく、頑張ってもらおうと思います」と言って、五人を連行して行ってしまった。
ちょっと、この時のジョエルさんには逆らえない雰囲気があって、何も言えずに五人を見送ってしまった。
そんな訳で、亜空間の家での生活から元の家での生活に戻っている。
お店の方は、相変わらずの混雑で何とかしたいとは思っているんだけど、いい案が思い浮かばずにいるのよね。
他にも、同じようなお店があればお客さんがそっちに流れてくれて、うちのお店も落ち着くとは思うんだけど、このままじゃ錬金術の研究も出来ないし、全然自由な時間が持てないわ。これじゃ、私の目指す自由気ままな生活が遠のいてしまうわ。
ゆっくりしたい。のんびりしたい。
そうだ!旅行に行こうかな?うん。我ながらいい案だと思う。
そうと決まれば、行き先を決めないと。
そう言えば、この国以外知らないし折角だから他国に行ってみようかな?
よし、善は急げ。良い旅行先をリサーチしなくちゃ。出来れば、ご飯が美味しくて、温泉があるところがいいわね。明日、いろいろ調べましょう。
そんなことを考えつつ眠りについたら、内容は覚えていないけど、久々にいい夢を見れた気がするわ。
翌日、丁度お店は定休日だったので、朝食を食べた後にお城に向かった。
アル様にお願いして、お城の図書室で他国の事が載っている本が無いか調べようと思ったのよね。
「アル様、おはようございます」
「ハルちゃん、おはよう」
「あの、突然なんですが、図書室で本の閲覧がしたいのですが、いいですか?」
「いいけど、何か調べ物?」
「はい。実は、旅行に行こうと思って、行き先についてリサーチをしようと思って」
「りょっ旅行!!」
「はい。気ままに一人旅でもと思って」
そう言うと、アル様は頭を抱えてしまった。
「アル様?」
「えっと、女の子の一人旅は危険だよ、あの二人と行けばいいと思うよ」
「私のわがままで二人を付き合わせることはできないわ。私がいない間は、お店も閉めるし、思い思いに過ごして欲しいと思っているの」
「う~ん。そっちの方が、ある意味のんびりできないと思うよ」
「なるほど、二人も行きたいところがあれば、旅行すればいいということですね!提案してみます。流石です。そうですよね、私だけ旅行だなんて、二人も気ままな一人旅を楽しみたいと思いますよね」
「えっと、全然違うからね」
「ん?一人旅じゃなくて、二人旅の方がいいということですか?なるほど、男の友情を深めるんですね。二人旅を提案してみますね」
「えっと……、まあいいか。それで、どこに行きたいのか目星は付いているのかい?」
「他国なんていいかなぁと、それと、ご飯が美味しくて、温泉があるところがいいですね」
「他国かぁ、治安がいい国はいくつかあるけど、道中が心配だね」
「大丈夫です。箒で飛んでいくので」
「なるほど……」
「はい。美味しい料理のある国はありますか?」
「美味しい料理か、ハルちゃんの作る調理レベルはちょっと無理があると思うな」
「それは、残念です。なら温泉は?」
「温泉って、地面から熱いお湯が湧くアレだよね?」
「はい」
「そうなると、東の国あたりかな?」
「東の国ですか?」
「通常のルートだと、魔の森を迂回して、船に乗っていくから、遠くて旅行には向かないかな」
「海を渡るんですか?その後は?」
「東の国は、島国なんだよ」
「島国ですか。そうなると、お魚とか美味しそうですね」
「確かに、あの国は肉よりも魚を食べると聞いたね」
「温泉、お魚……」
「まさか、そこに行く気じゃ?」
「アル様、いいところを教えて下さりありがとうです!!図書室で地図を見せてもらってきますね」
「ああああ!ちょっとハルちゃん!!待って、それは」
アル様が、何か言っていたようだけれど、もう私は東の国のことで頭がいっぱいでそれどころではなかったのよ。
図書室で地図を見せてもらうと、聞いた通り、魔の森を迂回したところにある隣の国の港町で船に乗ってそこから東の国に行くみたいね。
この世界の船って、小型でちょっと乗るのが怖い気もするのよね。
う~ん、いっそ飛行船でも作ってそれで直接行くっていうのもいいかも。
うん。それがいいかも、久々に物づくりが出来るわ。しかも大作の予感しかないわ!!




