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第60話 聖女

 次の日の夜、改めて説明するということでジョエルさん達がうちに来ていた。

 説明してくれるのはいいんだけど、他のクラスメイト達にはどう対応するのか聞いたら、「まずは、聖女たちにきちんと説明するべきだと判断しました。他の方達には、後日きちんと説明します」とのことだった。


 そして、説明をしてくれたのは事の発端になったフィーニスさんだった。


「昨日は失礼いたしました。改めて、ボクは聖女研究をしているフィーニス・リムと言います。本来は錬金術師なのですが、大した物も作れないので今では聖女研究が仕事のような感じになっています。昨日、宰相が言っていたと思いますが、実は異世界から召喚するための方法が分からなくなっていたため、年々巫女の出生が減り続けて、現在ギリギリ持っている状態なんです。このまま数年減少が続くと結界が維持できなくなって、魔の森から魔物が溢れてしまう恐れがありました。そこで、ボクが作れる数少ないアイテムの中で時の砂というものがあるのですが、これを使って過去にどのようにして召喚をしていたのか調べた結果、方法が分かったので召喚を実行することになったのですが、ボクが聖女探訪に言っている間に、条件が合うタイミングがあったそうで、ボク抜きで召喚を行ったようですね。本当は、ボクが戻ってくるまで待って欲しかったのですが……」

「仕方なかったのだよ。これは、わが国だけの問題ではないのだ」

「ということなんですよ。それでですね、ボクが聖女探訪に行く前までの調べでは、召喚によって擬似的に聖女と同等もしくは、それ以下の存在を召喚するのが目的と思っていたんですが、今回の探訪でそうではないことが分かったんですよね」

「なんだと!!どういうことだ?」

「まあまあ、宰相落ち着いてください。ボクの最新の調べによるとですね、始まりの聖女は元々、召喚によって自分の血縁を召喚させるつもりだったみたいなんですが、その思惑が後世に伝わらなかったようで、初めての召喚の際に、異世界から聖女に似た力を持った者が召喚されたことで、召喚は力のあるものを呼ぶためだと解釈されたみたいなんです。それと、その時に召喚された者達の子供から巫女が次々と生まれたので、異世界から召喚された者の子供が巫女となり出生率の問題が解決したこともあって、本来の意味から違って伝わったようなんです」

「そうなると、本来は聖女の血縁を呼ぶためと言ったがそれはどういうことだ?」

「宰相が謎に思うのも無理ないです。これも、今回の調べで分かったのですが、実は、始まりの聖女は力を巫女や準聖女に引き継いだ後に、最後の力で異世界に渡ったみたいなのです。なので、今後何かあった時に、召喚で自分の血縁が召喚されるように準備をしていたようなのです」


 フィーニスさんの話を聞いて、その場にいた全員が無言になった。


「ねえ、私達は子供を産むために呼ばれたってことなの?」


 武藤さんのつぶやきに私達召喚された人間が凍りついた。こんな話し、他の人に言えるわけないよ。

 そのつぶやきを聞いたフィーニスさんが慌てて訂正した。


「違うよ、ボク達は純粋に力を持っている人に力を借りたいと思って召喚をしたんだ。子供の話は、過去にそういった考えがあったという話だよ」

「そう、ですか……。あの、それで今回の召喚で本来の目的の血縁者は呼べているんですか?」

「それなんだけど、ボクが立ち会ったわけじゃないから何とも言えないけど、検査でそれらしい結果が出ていた人はいないって聞いたから、血縁者は呼べていないとは思うんだけど……」


 そう言いながら、フィーニスさんは私の方を見てきた。嫌な予感がしていると、駆君がフィーニスさんから庇うように私の前に移動してきた。


「昨日も言ったが、小春はただの錬金術師だ」

「そうみたいですね。あれから、召喚の際の記録を調べましたが、確かに錬金術師と記録に残っていました。でも、ボクが聖女の匂いを間違うなんて……」

「あんたの勘違いじゃないか」

「そうかも知れないですね。昨日はあんなに匂いがしていたのに、今日は全く感じません」


 そう言って、フィーニスさんは首を傾げた。駆君は、「きっと腹が減ってたんだよ。それで、料理の匂いが付いてた小春に反応したんじゃないのか?」と言ってフィーニスさんの勘違いだと言いきったのだ。


 召喚された私達は、本当に力を貸してほしいという想いで召喚したということは理解した。それで、私達で話し合って、今回の事は他のクラスメイト達には言わないことに決めた。

 下手に憶測交じりの説明をして混乱させて、ここでの暮らしに参ってしまったら大変だと判断しての決断だった。

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