第56話 堪忍袋
定休日は結局、何でもない一日となった。
でも、一日ゆっくり出来たので、今日のカフェ営業はばっちりな予感しかないわね。
そんなことを思っていた時期が私にもありました。
「想像以上の混み具合で言葉が無いよ」
「そうだな……」
「そうですね……。ここまで混みあうなんてなめてました」
そう、お店を開くと同時に開店前から並んでいたお客さんが店にどんどん入り、ランチとケーキをどんどん頼み、あっという間に用意していたランチは売り切れてしまった。
ランチは、甘いものがあまり得意ではない、ケーキ目当てのお客さんのお連れの方用にと考えていたので、そこまで数を用意していなかったのだ。
ところが、ケーキを頼むお客さんがランチも美味しそうと頼みだしたらあっという間に用意していた分が売り切れてしまったのだ。
そして、ケーキも多めに準備したと思っていたが、こちらもあっという間に完売してしまったのだ。
そのため、閉店時間を待たずにお店を閉めることとなった。
さらに、三人でお店が回らないという問題点も出てきている。
私は、常にキッチンで調理をしている状態で、駆君とタイガ君の二人で対応している状態なのだ。
閉店後、早速今日の問題点について話し合った。
「ランチ増やさないと全然だめね」
「客対応が俺とタイガだけじゃ間に合わん」
「行列も思ったより減らなかったですね」
三人でそんなことを話して同時にため息をついた。
お店を手伝ってもらえそうな心当たりもない状態なので、このまま頑張るしかないということで、現状を打破できるような意見も出ずに話し合いは終わったのだった。
お店の混雑が解消しないまま、数日がたった。今も閉店前に店じまいをする状況に変わりがなかった。
そして、もうひとつ問題が起こっていた。
そう、休暇中の五人が現在もうちにいることが問題になっていた。
ジョエルさんから、五人に戻ってくるように何度も要請が来ているんだけど、「もうちょっと」と言って、数日が経ってしまっていた。
五人に、お役目が嫌になったのか聞いたら、「ここが居心地がよくて、あそこに戻れなくなった」と五人が言っていたので、少し責任を感じなくもない?いや、そうでもない?
でも、このことに駆君の堪忍袋の緒が切れてしまったのだ。
「お前ら!!いい加減に働け!!」
「駆君、落ち着いて」
「駆の気持ちは分かるよ……。僕達が毎日へとへとになって働いているのに、三食小春さんに食べさせてもらって、何もしないとなるとちょっとね」
あれ、タイガ君も怒ってる?なんだか、雰囲気が凄く悪くなってしまったわ。どうにかして、丸く収めないといけないわ。そんなことを思っていると、来客を告げるチャイムが鳴ったので、玄関に向かった。
「は~い。どちら様ですか?」
そう言って玄関を開けるなり私は何者かに突撃されて小さく悲鳴を上げた。
「あなたが聖女ですか!!」
「ふきゃ!!」




