第52話 カフェ営業始めました
「お待たせ!これ試着してみて」
そう言って作ったばかりの物を二人に差し出した。でも、二人とも微動だにしないで固まっていたので、揺すりながら再度声をかけた。
「おーい。寝ちゃったの?」
「おっ、おおう。悪い、突然のことに完全に思考停止した」
「小春さんが積極的で、びっくりしました。でも、僕はいつでも――」
「違うだろ!!」
「あれ?さっきのは夢ですか?」
何故だか二人とも混乱しているようだったので、説明をした。
「二人とも突然ごめんね。でも、サイズを測りたかったから」
「「サイズ?」」
「ええ。あのね制服を作ってみたから試着してみて!!」
そう言って改めて、作ったばかりの制服を差し出した。
作った制服は、白のワイシャツに黒のネクタイとカマーベストとロングエプロンと黒のパンツ一式だ。
二人に渡して、私も作った制服に着替えるために奥に行くことにした。私用の制服も二人と同じデザインにしてある。
着替え終わったので、二人のところに向かうと、駆君とタイガ君も着替え終わっていた。
「着心地はどうかな?」
「サイズは完璧に合ってる。着心地もいい」
「ぴったりだよ。このシャツ肌触りがいいね」
「それなら良かった。明日から、この制服でお店をしようと思うけどどうかな?」
「それはいいんだけど……。小春も俺達と同じデザインなんだな」
「小春さんにはスカートが合うと思うよ?」
「う~ん。スカートの方がいい?」
「うん!」
タイガ君のリクエストで、今はいているパンツを膝上のタイトスカートに変えることにした。ロングエプロンなので、前から見た印象はパンツスタイルの時と変わりはないように思った。それと、スカートに変えたから、靴下を黒のタイツに履き替えて二人に感想を聞いた。
「えっと、スカートに変えてみたけどどうかな?」
「小春さん、そこでくるって回ってみて下さい」
タイガ君に言われるがままその場で回って見せた。
「すごくいいと思います!!」
「いいんじゃないか……」
「よし、二人もすごく恰好いいしこれで決まりね!!」
こうして、新生いちご商店オープンに向けての準備が終わった。
因みに、変態コンビが入れないように変態除けを亜空間店舗にも設置しているので、間違ってコンさん達が入ってくることはないようになっている。
メニューやお店で使う食器類も準備万端なので、明日に備えて今日は休むことにした。
翌日、起きてきた五人には朝食の席で、今日から小規模なカフェ部分を営業することにしたと伝えると、「店で出す物を食べてみたい!!」とリクエストがあったので、お店に誘ってみた。
「そう言えば、カフェの営業時間はどうするんですか?」
「あっ、そう言えばちゃんと決めてなかったかも。そうだなぁ、おやつ時から閉店までって感じかな?いつものように、お昼で一旦閉めて、おやつ時にもう一度閉めて、休憩がてらおやつを食べたらカフェの営業を始めましょう」
朝食後、いつも通り家のことを片づけた後、初日なので三人で今日もお店を開くことにした。お店に出る前に昨日作った制服に着替える。
今日は、まだ出掛けていなかった五人がお揃いの制服を見ておのおの感想を述べた。
「おおぅ。駆は元からイケメンだったけど、タイガさんと並ぶと壮観だな。清水さんもいい感じだな。特に後ろからの眺めがいいなぁ。足――」
「カフェ感出てるなぁ。後で食べに行くけど、ケーキ楽しみだ」
「いい感じっすよ。清水っちの後ろ姿いいっすね~。あ――」
「おお!あんた達お揃いの制服いいじゃないの」
「イケメン店員に給仕してもらう……。良いわ」
それぞれの感想で制服を褒めてくれたけど、私の後ろ姿って?それに、何故か高遠君と進藤君が感想を言っている途中で駆君が二人に何かを言っていたけど、どうしたのかしら?
制服の披露?も終わったので早速開店の準備をして、お店を開いた。タイガ君の意見で、お店の入り口に、営業時間を書いた紙を改めて張り出すことにした。
それによって、スムーズにお昼やおやつの時間の確保が出来ると思いすぐに用意して張り出すことにした。
営業時間のご案内
10:00~12:00
13:00~14:30
15:00~17:00(カフェ営業)
うん。いい感じだ。これをがあれば完璧だね。
こうして、朝の準備も終わりリニューアルというか、亜空間店舗になって初めての営業だ。カフェがどうなるのか心配だけど、やってみないとね。
時間になり、お店を開くと今日も乙女達と常連さんが開店と同時に入ってきた。
入ったとたん、昨日までと内装が違っていることに気が付きポカンとした表情で店内を見ていた。
私の存在に気が付いた常連さん達が「どうしたの?昨日までと内装が違うわね」「カフェって?」「奥にあるのはテーブルとキッチン?」と、急なリニューアルにいろいろ質問してきた。
「えっと、昨日みなさんにいろいろ聞いた結果、短時間だけケーキの販売をすることにしました。ケーキの持ち帰りはできませんが、店内で食べてもらうようにお店を改装しました」
私が常連さんに答えている間、タイガ君達に乙女達が突撃していた。
「その服装素敵ですね」
「ますます素敵です~」
「お揃い……でゅふふ」
乙女達は、タイガ君と駆君の制服を気にいってくれたみたいで、凄く褒めてくれていた。作った側としても嬉しい限りです。
この日は、お昼で一旦閉めるまでお店がずっと混雑状態だった。お昼を食べながら、カフェの営業についてちょっと不安になってきた。
午後の営業は、駆君とタイガ君にお願いして、私はケーキの準備に取り掛かった。と言っても、既にあらかた準備は出来ていて、ホールケーキのカットや、飲み物の準備などがメインだ。
そうしていると、おやつ休憩の時間になり、二人がキッチンに現れた。
「この後の店、凄いことになる予感しかない」
「はい。休憩のためお店を閉める時に外を見たんですが、相当の人が並んでいました。閉店までに全員捌けるか……」
「えっ?そんなに!大変だわ。初日だと思って、様子見のため数を用意してなかったわ」
「売れ切れたら、それはそれだ」
「う~ん。一応、追加のケーキの準備も考えておくわ。もしくは、ケーキ以外も視野に入れて考えるね」
あっという間に、おやつ休憩が終わってお店再開の時間となった。
お店を開けた瞬間に、列の最初にいた乙女がカフェでケーキを食べたいという言葉を皮切りに、次々と席が埋まって行った。
現在、お店の中は商品を見ている人は数人で、それ以外のお客さんはケーキを食べるために長い列に並んでいた。
ケーキを食べているお客さん達は、「美味しい~」「ここが天国だったのね」「至福~」「毎日食べたい」と喜んでくれていた。
席が空くのを待っているお客さんはというと、「早く食べたい」「まだかな?」という感じだったけど、閉店時間が近づいても列が途切れることがなく、「時間が~」「早く~」と焦りの声が上がっていた。
しかし、私の追加分も追いつかずとうとう品切れとなり、閉店時間を前にしてカフェ営業は店じまいとなった。
結構な人数のお客さんは並んだだけで、ケーキを食べられすじまいという結果になってしまったのだった。
思いの外、カフェり行は好評でどうにかしないという危機感が私の中で膨らんでいった。
夜になったら、作戦会議を開かないといけないわね。




