第51話 店舗拡張
夜になり、今日も亜空間にある家に来ていた。
居間にある掘りごたつでお茶とスイートポテトを食べながら、二人に今日のアンケート結果について相談していた。
「ケーキを販売するにあたって、やっぱりテイクアウトは難しいと思うんだよね。でも、お店の中にイートインコーナーを作る場所もないし」
「今まで通り焼き菓子だけじゃダメなのか?」
「常連さんや、最近来る女性客の皆さんと一部の男性からケーキの問い合わせをもらったことが結構あるので、僕はケーキの販売は賛成ですよ。たとえば、数量限定とか、予約制で、今ある飲食スペースで食べてもらいしかないんじゃないですか?」
「予約制か~。もしすごい量の予約が来たりしたら……」
「ありえるな」
「ありえますね。もしかすると、数ヶ月待ちなんて……」
「う~ん。もう少し、お店が広かったら棚の場所とか移動して……。広い、ひろい、ヒロイ……。そうだわ!!お店の入り口を亜空間とつなげて、その先にお店と似た作りでちょっと広めの建物を建てて繋げるのとかどうかな?いい案だと思わない?」
「ばれたら厄介なことになるからやめといた方がいいと思うぞ」
「僕も駆に同感です」
「え~、いい案だと思うんだけどなぁ。ちょっと試しに作ってみて、様子を見てみるだけでも……」
二人には反対されたけど、私はやる気になってきたので、ちょっと家の離れにお店を作るために蔵に保管していた資材を離れ建設予定地に移動させた。
イメージとしては、お店の作り自体は変えず、少し広めにして奥の方にミニキッチンを付けよう。それと、今まで試食コーナーとして設置していたテーブルとイスは撤去して、改めて四人で座れるようなテーブル席を二つ設置。その他にミニキッチンの前にカウンター席を四つ設置する。カウンターの横にケーキを入れるショーケースも作ろう。
奥行きは違和感がないように、商品を設置していた棚の数を減らして、広く見えるように配置する。
大体のイメージが出来たので、早速作成してみることにした。
錬金窯さんを使わない方法は手軽に大きなものも作れるんだけど、すごく疲れるのよね。というのも、錬金窯さんの場合は最初にイメージを送るだけでいいので、その場を離れることが出来るけど、この方法はずっと完成するまでその場を離れられないという欠点があるのよね。
でも、物が早送りされるようにすごいスピードで出来あがるのを見るのは面白くもあった。
大体、一時間ほどで完成した。
完成した亜空間版のお店に入ってみると、イメージ通りに出来ていた。棚の配置の所為で奥行きがあっても、きっと配置替えのせいだと誤魔化せそうな気がしてきた。
ミニキッチンとは言いつつも、簡単な調理は出来るように水回りは、魔石を使って蛇口をひねると水とお湯が出るように作ったし、オーブンレンジ(仮)も配置は完璧。食器棚や冷蔵庫(仮)もあるので十分過ぎるほどだと思う。
実際にケーキは、家のキッチンで作ってお店ではショーケースから取り出してお皿に乗せる位だからね。
それから、お店の入り口と亜空間のお店を繋ぐ道具も必要だと思い、魔石を使って、亜空間への入り口を一定の場所で固定して繋げる扉も作ることにした。
一旦、向こうに戻ってからお店の扉が亜空間にあるお店に繋がるように細工をする。
これで、常にお店の扉を開くと亜空間にあるお店に繋がるようになった。
元のお店の商品を亜空間のお店の棚にどんどん並べていき、引っ越してきた当初のように、商品が無い状態にした。
それと、お店と家を繋いでる扉にも同様に細工をすることで、拡張工事は完了した。
元のお店が痛まないように改良した生きのいい箒を二つほど用意して、常にお店を掃除するようにした。でも、たまに様子は見るつもりよ。
準備に時間は掛かったけど、お客さんを入れる前に二人に確認してもらおうと思い、少し遅い時間だったけど、二人に見てもらうことにした。
「何かしているとは思ったけど、早速改造してたのか……」
「数時間で、ここまで出来てしまうんですね。小春さんの錬金術って凄すぎです」
亜空間の店舗に二人を案内すると驚きの声をあげていた。
「小春、俺達亜空間側から店に入ったけど、出る時はどちら側に出るんだ?」
「それは、好きな方に出られるから安心して」
二人に扉の仕掛けについて説明した。基本的に指輪の力を使えば好きな方に出られる事を話した。
指輪を持っている私達は、好きな方に扉をつなげられるけど、それ以外の人は、お店の外から、亜空間に入ったら、出る時は自動的に入ってきた場所に繋がるようになっているので、間違っても亜空間側に出ることはないと説明した。
ただし、私達が亜空間側に扉を開いた時に、一緒に扉を通れば指輪を持っていない人でも亜空間側に出てしまうと話した。
「なるほど。それじゃ、亜空間側に出る時は、他の奴がいない時じゃないとダメだな」
「そうですね。間違ってここに連れてきてしまう事態は避けた方がいいですね」
入口の仕様については納得してもらえた。次にお店の中について感想を聞いてみた。
「どうかな?棚の配置の所為って誤魔化せる範囲だと思うんだけど……」
「「……」」
「ダメかな?」
「はぁ。どちらかというと、ダメ寄りだが幸い店には窓が無いから外から覗かれて違和感を持たれることもないだろう。辛うじてありか?」
「僕も、ダメ寄りだとは思いますが、小春さんのためなら誤魔化す自信はありますから、大丈夫ですよ」
「えっと、大丈夫って事でいいのかな?」
「ああ」
「はい。明日から給仕の仕事も頑張りますね」
「給仕……。そうだ!!」
タイガ君の言葉で私はあることを思い立って、まずはタイガ君に抱きついた。
ウエスト、肩幅、腕の長さ、脚の長さなど、身体を使って測ることにした。メジャーが無いし、イメージで作るから、サイズが分かってもあまり意味がないのよね。
次に駆君にも同様に抱きついておおよそのサイズを測った。
イメージが霧散する前に、大急ぎで自室に置いてある材料を掻き集めて一気に錬金術であるものを作成した。
数分で出来あがったものを持って、亜空間に作ったお店に戻ると、駆君とタイガ君はさっきサイズを測った時の状態で固まっていたのだった。




