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第41話 勘違い ※タイガ視点

(僕は、なんてことをしてしまったんだ。激情に駆られて、小春さんにあんなことをしてしまうなんて)


 アルトリアの言葉で、誤解は解けたが涙を流しながら、服の襟もとが乱れて、首筋には鬱血の痕と、二人の唾液でしとどに濡れた姿はとても扇情的に見えた。普段はあまり表情を動かさない小春の泣き顔もそれに拍車をかけていた。

 フリーズしている二人には目もくれず、大人の対応でアルトリアは、小春の姿を隠すように上着を掛けていた。

 タイガは、自分が暴走した果てに小春に付けた鬱血の後につい目が行っていたが、それもアルトリアの上着で今は隠れて見えなくなっていた。

 隣にいる駆を見ると、同じような気持ちになっていることがその表情から読み取れた。


 そんな気まずい雰囲気をジョエルがぶち壊した。


「小春さん、このクッキーは今までにない美味しさです。特別製ですか?また食べることは出来ますか?おや?どうされました皆さん?」

「ジョエルさん、えっと、これは……。食べ物の恨みがすごいって惨状です」

「そうなんですか?」


 タイガは小春がアルトリアにだけお菓子を上げたことで、二人が怒ったと思ったと気が付き、この思いが全く届いていないことに深いため息をついた。

 狂信者の事件が起こるまでは、小春に対して、あまりにも子供な姿のため、想いを諦めようとしていた。

 しかし、事件後から成長し小春の隣にいてもおかしくない姿となったことで、この思いを諦めなくてもいいと思い始めたのだ。

 タイガは、拾われて初めてベッドで目が覚めた時に、自分のために看病を一生懸命してくれる小春の姿に一目惚れしていたのだ。

 小春からは弟のように思われ、甘やかされていたことから、異性と思われないのなら、側にいるだけでもいいと。

 しかし、小春よりも身長が伸び、本来の年齢に似合った姿を取り戻した時、分かったのだ。


(小春さんに好きになってもらいたい。僕だけの小春さんになって欲しい。異性として意識して欲しい。僕も、男だって分かって欲しい)


 自分の中の感情が悲鳴を上げた。そう思ったときには、駆に宣戦布告をしていた。

 だから、これはチャンスなのではと思った。

 今回の事で男して見てくれるようになるのではないかと。

 だが、小春の鈍感は強敵だった。嫉妬して、痕を付けたという発想がないのだ。ただの食いしん坊と思われて終わってしまったのだ。

 今までは、紳士的であろうと思った、これからもそうであろうとしていた。

 だが、同時に紳士的ではアピールに気が付かれないということに。しかし、どうアピールすればいいのか全く思い浮かばない。

 前途多難な自分の恋に頭を抱えるタイガだった。

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