第4話 行動開始
部屋にいるクラスメイトのほとんどがお城に行くことにしたようだ。数人の女の子はこの屋敷に留まる事を決めたみたい。
私はというと、市井で暮らすことを選んだ。3年は生活を保証してくれるみたいだし、夢だったお店を開いてみようと思う。
私の職業は錬金術師。ならば、錬金術で何かを作って売るのもいいかも。
まずは、この世界の事を勉強した後にそれぞれの場所で生活することになる。
力ある者として選ばれた5人は力の使い方を訓練した後に結界維持に向かうそうだ。
※※※
屋敷に留まる事を選んだ女の子以外のクラスメイトは、私を含め、お城に向かうことになった。そこで、必要なことを学ぶ。
まず、魔法の使い方について教わった。空気中の魔素と呼ばれる物を使うらしい。この世界の人は、簡単な呪文を唱えるらしいのだけど、私たちはイメージだけで使用することが出来た。
これには、魔法について教えてくれた教師役の人がすごく驚いていたっけ。
次に、生活する上で必要な法律。これについては、もとの世界と大差ないみたい。つまり、悪いことをすれば捕まるということね。悪いことをする予定は全くないので、問題なさそうね。
最後に、金銭について。ステイル聖王国で使われている通貨は銅、銀、金。100銅が、1銀。100銀が、1金となっている。一人の人間が一ケ月生活するのに1金あれば十分らしい。
まぁ、細々とが頭につくみたいだけれどね。
それと、時間については、もとの世界と同じ24時間。暦は少し違っていて、一ケ月は30日。一年は13ケ月となるみたい。
ステイル聖王国は、基本的に一年中すごしやすい気候ということなので、寒がりの私には嬉しい情報だ。
基本的な情報を教わった次は、それぞれの職業についての勉強になる。私は、よくある職業なのでいろいろと教わることが出来た。
錬金術は、作りたいものの構造と材料が揃っていれば簡単に物を作れるそうで、いろいろなレシピが出回っているらしい。しかし、このレシピは誰でも見られるようなものは安価な物がほとんどで、商売が出来るようなレシピは値が張ってなかなか購入が厳しいのが現実らしい。
それと、レシピがあっても、錬金術師としての錬度が低いと作成過程で失敗してしまうそうだ。なので、最初は簡単なものから作って腕を上げる必要があるらしい。ゲームのレベル上げみたいね。
作り方は、作りたいものの材料とその構造を書いた特殊な紙を一緒に錬金窯と呼ばれる特別製の窯に入れて待つだけ。物にもよるらしいが、数時間から数日で出来上がるそうだ。
簡単なものなら、数分で出来るものもあるらしい。
必要な事を学び終えた私は、お店を開くための行動を開始した。
お店を開くために必要な事が何か聞いたら、商業ギルドで登録が必要らしい。そこで、営業許可証の発行をしてもらわないと商売が出来ないらしいので、まずは商業ギルドに向かうことにしたのはいいのだけれど、ここで問題が発生してしまった。
「どうしてあなたが付いてくるの?」
「清水と一緒にいたいから、俺も店の開店に協力するよ」
「やめて、本音はなんなの?」
「店を持つのが夢だから便乗したい……とかどう?」
「……」
「あれ?清水ちゃん?聞いてる?」
嘘くさい。明らかに本音じゃない。何が目的なの?
そんなやり取りをしているうちに商業ギルドに到着。建物の中に入ると、いくつかのカウンターが見えた。空いている一番近くのカウンターに向かうことにした。
「いらっしゃいませ。本日はいかがされました?」
そう言って、可愛らしい受付嬢が用件を聞いてきた。
「お店を開きたくて……」
「それでしたら、まずギルドに登録していただいた上で、営業許可証を発行いたします。店舗を開く物件はお決まりですか?」
「いえ、まだ何も決めてなくて」
「それでしたら、こちらで物件をお探ししますよ?」
「それは有難いです。出来ればお店と住居が一緒の建物があれば、そこがいいんですけど」
「そうですね、条件にある物件をお探しいたしますので、少々お待ち下さい」
しばらく待っていると、条件に合う物件が3つほどあったというので、場所を聞いて見に行くことになった。
受付嬢とは別のギルド職員の女性が案内してくれた。案内の道すがら、街のこともいろいろ教えてくれた。
案内された物件はどれも立地条件、外観、住居、店舗部分の使勝手、すべてが良かったのでどれにするかなかなか決められなかった。悩んだ結果錬金術をするうえで必要な工房部分の使勝手が一番良い物件を借りることに決めた。
必要書類にサインをして、お金を支払って契約は完了。結構あっさり終わったので、生活に必要な物の買い出しに向かうことにした。
複数のお店を周り、持ち運びが大変なものはお店に運んでもらうことにした。
これまでに支払ったお金については、向こう3年分の生活費としてもらったお金を使っているので、開店したらしっかり稼がないといけない。
一旦、お城に戻って、お城の人に挨拶をして必要な物を持ったら、私のお店に行こう。
新しい生活の始まりだ。