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第39話 騒がしい日常

 あの天使だったタイガ君は、大人に成長し今では沢山の乙女達を夢中にさせています。駆君はもともと、イケメンさんでしたが、タイガ君が側にいると更にキラキラしさが倍増するみたいで、たまにお店を手伝ってくれると、それを聞きつけた乙女達がわんさかやってきます。

 二人はとても商売上手さんなので、そんな乙女達を手ぶらで帰すことはなく、何かしらの商品を買ってもらったうえでお帰りいただいているようです。

 うん。二人にお店番を任せて正解だね。

 こうして、お店は繁盛し結構な儲けも出ています。ただ……。

 不満なんてありません。ただ、工房はお店と隣り合っていて……。その、なんていうか、うっ、うるさいんです!!


「今日も、タイガ君恰好いい」

「ああ!市井に住む王子様~」

「今の顔、可愛すぎる」

「でゅふふ。あの見た目で、僕って一人称が最高」


 毎日こんな感じよ。駆君がお店にいると倍増する。


「駆君が笑ったわ!!」

「キャー、お会計の時に手が触れたわ!」

「笑顔がたまらないわ!」

「でゅふふ。駆様とタイガ君が二人で並んでいるのが尊いわ~」


 ごく稀に、二人に材料の調達のためお店に私がいることもあるけど、その時はいつも通りの奥様方がやってきて、普段お店が混んでて、ゆっくりできないと嘆いていたり、最近は何故か騎士団の人や男性のお客さんも増えてきていて、「憧れの彼女に振り向いてもらえるなにかいい商品はないですか?」と相談を持ちかけられることもあった。

 うん。私がお店番をしているときは、女の子は全く来ません。最近は男性客が少し増えた気もしますが、どうしてでしょう?

 更に言うと、男性客が店内にいると、奥様方も何故か増えていて、「妖精の乙女は今日も可愛らしい」「この子には、駆ちゃんが」「いいえ、タイガちゃんが」と謎なやり取りが繰り広げられている。


 と、言う訳で最近は周りが何かと騒がしいのです。


 そんなある日の定休日の昼下がり、お茶を飲みながら二人に聞いたのよ。


「ねぇ、最近二人目当てのお客さんが増えたよね」

「そうか?」

「うん。それでね。結構可愛い子とかいるでしょ?ねぇ、誰かとお付き合いとかはしないの?私、お客さんと付き合うの別にいいと思うけど?」

「小春は客で付き合いたいと思うような奴がいるのか!」

「小春さんは、お客さんで気になる人でもいるんですか!」

「えっ?いないけど?そうじゃなくて、二人のことだよ。二人はいいな~とか思う子はいないの?」


 あれ?なんで二人とも無言で私のことを見るのかな?


「全然伝わっていない」

「全く、相手にされていないみたいです」


 良く分からないことを言って、二人同時に大きなため息をついたのよ。


「どうしたの?まさか、奥様の中に思い人が!」


 私は、二人が奥様の中で気になるご婦人がいるのではと思い立ち青くなった。このままだと、旦那さんとの仁義無い戦いで、駆君とタイガ君が罪のない旦那さんをボコボコにしたうえで、お城に連行されて、第二王子様が被害者にお詫びをしている姿が目に浮かんだ。

 これは、まずい!


「「違うから!」」


 あら?心の中を読まれたのかしら?二人同時に否定の言葉を発した。


「別に、奥様の中で気になる人がいる訳じゃないよ。僕は、小春さんが一番だよ!」

「うふふ。大きくなっても、私のこと思って言ってくれるのは嬉しいけど、もうその言葉は本当に好きな人に言ってあげて」

「違うから!」

「タイガは、小春のことお姉さんみたいに好きだよな。俺はお前と家族になりたいくらい好きだぞ」

「うふふ。駆君もありがとう。二人が誰と結ばれたとしても、私達は家族だよ。だから安心して彼女を作ってね」

「「…………」」


 あれ?どうしたんだろう、もしかして私の言葉に感動して言葉も出ない?二人はそこまで私のことお姉ちゃんと慕ってくれていたんだね。なんて嬉しいことなのかしら。

 こうしてはいられない。早速このことを、アル様に自慢しなくては!

 そう、あれ以降第二王子のアルトリア様とは親しくするようになっていて、今では「アル様」「ハルちゃん」と呼び合う仲になっていた。私達は、駆君と、タイガ君の成長を温かく見守る会の同志なのよ。


「二人は、のんびりしてて。私アル様の所に遊びに行ってくる!」


 そう言って、二人の反応も待たずに、箒に乗ってお城まで飛んで行った。だって、見守る会は二人には秘密なので、付いてこられては困るもの。




 ※※※


 事件以降何故か、顔パスでお城に出入りできるようになっていた。たぶんジョエルさんの宰相パワーだと思うわ。

 なので、私は箒に乗ったまま、アル様の部屋までひとっ飛びで到着よ。部屋に着くと、アル様はジョエルさんと話し合いの最中だった。

 出直した方がいいかと思っていたら、アル様は私に気が付いたようで、「ハルちゃんいらっしゃい」と声をかけてくれた。

 その声に促されて、テラスに下りて挨拶をした。


「アル様、ジョエルさんこんにちは」

「小春さん、こんにちは。どうしたんですか?」

「遊びに来ました。ジョエルさんこちらをどうぞ」


 そう言って、お土産のクッキーを差し出した。それを受け取ったジョエルさんは、「王子、一旦休憩で!小一時間ほどで戻ります!」とクッキーを嬉しげに抱えて部屋を出て行った。

 私は、アル様にお茶とクッキーを用意してジョエルさんが座っていたソファーに腰掛けた。

 それから、アル様にさっきあったことを自慢した。


「二人は、私のことお姉ちゃんと思ってとっても慕ってくれているんですよ!」

「ククク、ほっ、本当に、二人はハルちゃんのこと大好きだからね」


 何故か、アル様は私の話を聞いて爆笑した。


「あの~、そこまで爆笑出来る様な内容でした?」

「すごく面白いよ(二人の報われなさが)」

「そうですか?」

「うんうん。他には?何か面白いことはあった?」


 アル様にそう言われて、最近研究している物について話していると、扉の外が何やら騒がしくなっていた。


「ククク、お迎えみたいだよ」

「お迎え?」


 何がおかしいのか、アル様は笑いながらそう言った。お迎えって?と考えていると扉が乱暴に開けられた。


「第二王子!いい加減気を使えよ!!」

「アルはずるいよ!」


 そう言って、騎士達を引きずるようにして二人が部屋に入ってきたのだった。

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