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第28話 エビは美味しい

 駆君と別れた後に私は、タイガ君と食材市場に来ていた。タイガ君と歩きながら今日は何が食べたいか話していたら、エビフライが食べたいと言ったので、漁業組合の営業しているお店に行くことにした。

 この街には、大きな運河が流れていて、その運河を使って海から魚介類が運ばれてくるから、結構新鮮で良いものが手に入るのよね。


 そんなことを考えつつ、お店に到着した。お店には沢山のお魚があった。こちらの人は、基本的にお魚は塩漬けされてものを焼いて食べているそうで、お店には塩漬けにした物が並んでいる。しかし、私は塩漬け処理されていないものをお願いして買っていた。


 最初は、処理していない魚は売れないと、断られていたのよ。でも、お店の前で、「売って」「売らない」と言い合いをしていたら、いつもお店に来る常連さんが通りかかり、どうしたのか聞かれたので、塩漬けする前の魚を買いたい事を話したの。

 そうしたら、実はその常連さんは、漁業組合会長の奥さんだったらしく、まさに鶴の一声で処理前の魚、その他に、屑と呼ばれていた、偶然網にかかっていたエビやイカ、タコなど、ここでは売れないため、捨てていた物を格安で売ってもらえることになったのよね。

 美味しいのに?と常連さんと売り場のおじさんに言ったところ、「気持ち悪い」「食べられるのか?」と言った返事が返ってきた。

 そこで、一旦買った物を持って、家でエビのフリッターと特性タルタルソースを作って急いでお店にもどって二人に美味しいものなのだと理解してもらうべく食べてもらったのよ。

 二人は、「美味しい!!」と言って、多めに作ったフリッターを秒速と思われるスピードで完食していたっけ。

 かと言って、お店にエビたちが並ぶかと言うと、答えはノーなのよね。理由は簡単。保管することが出来ないから。うちには冷蔵庫(改)があるが、他の家では常温でしか保管できないので、すぐに調理でもしない限り保管は難しいということで、今でも塩漬けのお魚だけを販売している状態なのよね。

 いつか、冷蔵庫(改)を普及出来ればとは思っているが難しいのよね。最初に作った物は、手軽に作れるけど、劣化が激しくて、最初のころは良かったのだけど、だんだん弱ってくる頻度があがって、しょっちゅう栄養剤を与える必要が出てきたのよ。

 なので、材料の氷を氷の魔法を宿した魔石に変えて改良をしたのだ。栄養剤が必要なのは変わりないけど、燃費が段違いで良くなった。その反面、氷の魔法を宿した魔石は中々みないそうで、駆君も苦労して手に入れてくれたのよ。なので、量産は難しいのよね。でも、いつか、便利な料理器具を普及させたいわ。


 回想が長くなったわ。今日の目的のエビがあることを祈りつつ、いつものおじさんに聞いてみた。


「おじさん、こんにちは。今日、エビはありますか?」

「おう、譲ちゃんらっしゃい。エビならあるよ。それよりもどうしたんだそれ?」

「あるだけエビください。これについては、ちょっといろいろあって……」

「そう、悲しそうな顔するもんじゃねーやい。可愛い顔がもったいねーよ。今日はサービスするから元気だしな!」

「ありがとう、おじさん!!元気でました!」


 そう言って現金にも、おじさんのサービスで私は元気を取り戻した。

 今日は、エビ以外の食材は買い置きがある為、エビを買った後すぐに、家に戻った。戻りつつ、今日気になったことをタイガ君に聞いてみようとしたら、タイガ君に「まだ、ちょっと整理したい事があって説明できないですが、整理が付いたら必ず説明します」と先に言われてしまった。今は言えなくても、いつか話してくれるならいいや、と思いそれ以降話題には出さなかった。


 家に戻った後、軽くお昼ご飯を食べてから夕食の支度にとりかかった。チーズタルトは食後のデザートにしようと考えつつ、今日買ったエビの処理をしようとしたら、中に小さなカニがいくつか入っていた。

 それを見て、エビフライのほかにカニクリームコロッケもメニューに加えることを閃いた。

 おじさん、カニをありがとう。


 ちょうど、準備が終わりこれから揚げるところで、駆君が帰ってきた。もう少しで出来あがることを伝えて、次々と揚げて行く。

 揚げている途中で、タイガ君がお皿を出すのを手伝ってくれたので、後は揚げたてをテーブルに置くだけとなったので、駆君を呼んだ。


 三人そろって頂きますをして、熱いうちに食べ始める。食事をしながら、駆君にお城での事を聞いた。


「駆君、どうだった?」

「アレについては、話し合い(物理)の結果、円満に解決したから、安心していい」

「そっか、それなら良かったよ。皆は元気だった?」

「うーん。女子がやばいかも……」

「お城の人からお使いを頼まれた人が言っていたアレより、相当ひどい感じ?」

「ああ、あとこっちの食事が口に合わないって、信二がすごく痩せてた。それもヤバいな」


 そう言って、お城であったことを教えてくれた。


 中学二年生を拗らせていたクラスメイト達にお話をして、全員がもうしないことを約束してくれた後に、高遠君から高田君が食事が口に合わず痩せてしまった話を聞いたそうよ。そうしていると、本人がやってきて、想像以上に痩せていて驚いたって。それで話している内に、高田君が駆君に渡したお弁当に気がついて食べたいと言ってきたので、彼の部屋で高遠君も一緒に食べることにしたんだって。食べているときに、他のクラスメイト達も大なり小なり食べ物で困っているということで、お店から料理を簡単に作れる材料を買って明日届けることになったんだって。それで、帰ろうとしたら、今度は、女の子達がお肌や髪のことを相談してきたので、それも明日見つくろって一緒に持っていくことになったと、話してくれた。


「分かったわ。それなら私も一緒に行くよ」

「いや、俺一人で大丈夫だ」

「でも、結構な量になると思うのよね。私も持つから」

「手押し車か、リヤカーみたいな荷物を運べるようなものを借りて運ぶから大丈夫だから、心配すんな」

「でも……」

「それに、それクラスメイト達に見られてもいいのか?」


 問題が解決したことで安心して、眼帯のことをすっかり忘れていた。でも、隠しても仕方ないし、クラスメイトには理由をぼかしつつ、中学二年生ではないと主張すれば問題ないはず。


「大丈夫!そこは任せて!だから私も行くよ!」


 私の決心が揺るがないと分かってくれたのか、最終的に一緒に行くことを許してくれた。続けて臨時休業にすると常連さんに心配されちゃうから、タイガ君にお店を任せて行くことに決まった。

 よし、明日の準備をしなくちゃ!

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