第2話 異世界に来てしまったそうです
強烈な光が治まったので目を開けた。
そこは、さっきまでいた教室とは異なる場所だった。
頭上は雲ひとつない快晴。足元は、何かの呪文?が描かれた魔法陣のようなものがあった。
私たちは、どこか知らない開けた場所に座り込んでいた。
ざわつきだしたそのタイミングで、数人のローブを羽織った男性が近づいてきた。
その中で、ただ一人ローブを羽織っていない若い男性が口を開いた。
「皆さま、突然のことで大変驚かれたと思いますが、落ち着いて私の話を聞いてください」
そう言って、私たちを見わたした後に再度口を開いた。
その驚くべき内容に、私たちは何一つ口をはさむことは出来なかった。
「私は、ステイル聖王国第一王子、エルンスト・ステイルです。私たちの国は、魔の森と呼ばれる場所と隣接した場所にあります。国は、巫女の力で張られた結界により魔物から守られていました。しかし、年々巫女の資格をもつものの出生が減少しており、結界の維持が困難となっています。そのため、過去にも同様の危機が迫った際に行われた異世界から力あるものを召喚する儀式を執り行ったのが今の現状です」
そう言って、第一王子は私たちに向かって頭を下げた。
第一王子の後ろに控えていたローブの人たちは更に、頭を下げたうえに膝をついたのだ。
そう、DO・GE・ZAですよ。
「私たちの国の事情に巻き込んでしまったこと、心から申し訳なく思う。しかし、私たちに力を貸してほしいのです」
更に、頭を下げて第一王子は話を続けた。
「この儀式は、一度使用すると100年は再使用出来ない。そのため、あなた達を元の場所に戻すことはできない。あなた達の身の安全は保証する。身勝手な事だとは思うが、なにとぞお力をお貸しください」
クラス全体が静まり返った。
青い顔をする者、何を思ってか喜びの表情をする者、全く自体が理解できないという顔をする者。
私は、たぶん青い顔をしていたと思う。
だって、もう家には帰れないと言われたのだ。全く知らない世界でこれから生きて行かないといけないのだ。
喜んでいる者の気が知れない。
クラスでさえお友達の一人も出来なかった私が、異世界で生きていけるとは思えない。
孤独は人を殺すのです。
私は、楽しく生きて行きたいのです。
「やったぜ!!これが夢にまで見た異世界召喚!魔法は?魔法は使えるのか?」
喜んだ表情をしていた内の一人がはしゃぎだした。
クラスの中心グループの男子だ。
たしか、田中?中田?田村?村田?
何でもいいか。
「はい。魔法は存在します。この世界は誰しも魔法を使えます。というより、生活魔法が使えないと不便ですからね」
そう言って、第一王子は困った顔をして見せた。
第一王子は、所謂イケ面と言われる顔立ちなので、女の子たちはその困り顔に赤くなっていた。
そんな女の子たちが可愛いと私は思った。あぁ、女の子のお友達急募です。
第一王子の話を要約すると、この世界では、生活魔法と呼ばれる必須魔法があるそうです。
魔法其の一・水魔法
これは、書いて字の如く水を出す魔法。飲み水として利用可能だそうだ。
魔法其の二・火魔法
これも、書いて字の如し火を出す魔法。ライターいらずで便利。
魔法其の三・風魔法
風を出せるらしいが、いまいち有用な使い方が分からなそうだ。洗濯物を乾かせそうな魔法でいいと思うわ。
この三つが生活魔法と言われる誰にでも使える魔法なのだとか。
これから、私たちは職業適性検査とやらを受けたうえで、今後の方針を決めることになった。