第13話 三人家族
早速、何着か服を購入し、お店で着替えさせてもらった。その後は、靴と鞄。日用品を買った。思ったよりも買い物はすぐに終わってしまった。十分回復したように見えても、病み上がりなことに違いはないので、早々に帰宅することになった。
それぞれ、お茶の時間まで自由に過ごすことになった。
私はというと、すっかり忘れていたが、折角ハチの巣を採取したので工房で蜂蜜の抽出をすることにした。
錬金窯にハチの巣と、大きめの壺を入れてから「錬金窯さん、よろしくお願いします」といつものように、成功祈願。数分後、錬金窯さんの中を見ると一緒に入れておいた壺の中に蜂蜜がたっぷり入っていた。そして、蜜蝋も一緒に出来あがっていた。流石錬金窯さん。でも、いつも思うけど何故ゴミが出ないのか不思議でならない。まぁ、錬金窯さんだしね。
そんな訳で、今日のおやつはふわふわパンケーキに決まりだね。蜂蜜を持ってキッチンに行こう。
三人分のパンケーキを焼いて、お皿に盛り付け。パンケーキの横に牛乳アイス(急募バニラビーンズ!!)とホイップクリームにリンゴジャムを添える。蜂蜜はお好みでかけられるように、シロップピッチャーに入れておく。今日のお茶は、市場で買ってきた花茶を用意した。
「いい匂いだね。完成?」
「ええ、運ぶのを手伝ってもらってもいいかしら?」
「了解」
そう言って、駆君は器用に三人分のお皿を持ってくれた。私はトレイにポットとティーカップ、ナイフとフォーク、シロップピッチャーを乗せて駆君の後に続いた。
リビングに行くと、タイガ君が目を輝かせてパンケーキを見ていた。
うん。可愛いわ。
「ささ、温かいうちに頂きましょう。今日のおやつは、パンケーキだよ。一緒に添えられているのは、牛乳アイスとリンゴジャムよ。お好みで蜂蜜をかけてね。この蜂蜜は、昨日の取ってきた巣から取った自家製だよ」
三人そろって、いただきますと言った後に食べ始める。う~ん。我ながら美味しいわ。
「うまっ!!」
「おいひいです~」
良かった、二人とも喜んでくれて。二人は始終、ふわふわがいいとか、温かいのと冷たいののアンバランスさがいいとか、蜂蜜が濃厚で最高とか言って食べていた。
全員がパンケーキを完食したところで、もう一杯花茶を入れた。すると、タイガ君が真剣な顔で話したい事があると言ってきた。きっと、昨日のことだよね。
「命を助けていただいて、本当にありがとうございます。何も言わずにお世話になることはできないと思いお話することに決めました。聞いてくれますか?」
私と駆君は目を合わせた後にタイガ君に向かって頷いた。
「僕は、別の街にある孤児院で育ちました。そんなある時、孤児院に身分の高い方が慰問にやってきました。僕はその身分の高い方に非常に似ていたため、その方の影武者となることになりました。その方は、この街に住んでいるため、育った孤児院を離れ、この街で数年影武者として過ごしました。そんなある日、その方の身代わりとして僕は死にました。死んだと思ったのですが、生きていたようで墓から這い出たはいいものの、瀕死の重傷に変わりはなく、死を待つだけの僕を餌だと思ったのか、魔物たちに周りを囲まれて、もう駄目だと思ったところを、お二人に助けてもらったという訳です。僕が影武者をしていた方のことは、現在の情勢が分からないため教えることはできませんが……」
タイガ君は何でもないように話していたが、とても辛く、大変な生活だったと思う。誰かの身代わりになって命を落としそうになるなんて。そんな話を聞くと、ここは平和な日本ではなく、異世界なんだと改めて感じさせられた。
今まで、辛い思いをいていた分、タイガ君は幸せにならなければいけないわ!
そう思って、駆君の顔を見ると、とても辛そうな表情をしていた。そこまで、タイガ君に親身になってあげるなんて、優しいのね。
「タイガ君はこれから、今までの分も幸せにならないといけないわ。これからは、私を家族だと思ってね。温かくて、美味しくて、楽しい毎日が君を待っているんだから!」
「俺達だろ。俺と小春とタイガでな」
「そうね。私と駆君とタイガ君でね」
「三人家族!嬉しいな」
タイガ君はこの提案にとても喜んでくれた。なんだか、本当の家族になれたみたいで私も嬉しいわ。
でも、この街にタイガ君みたいな天使がもう一人いるなんて驚きだわ。ぜひ、叶うのならば天使が並んでいるところを拝見したいものだわ。
タイガ君の身の上話を聞いたのだから、私達も異世界から来た事を話した。タイガ君はとても驚いた表情をしていた。でも、疑わずに信じてくれた。
お互いの話をしている内に夕食の時間になってしまった。私は、手早く三人分の親子丼とトン汁、マッシュポテトを作った。本当は、タイガ君の歓迎会として、豪華なメニューにしたかったけど時間がなかったのよ。歓迎会は改めて、後日しっかりと準備しよう。




