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第11話 不思議な少年

 ようやく街に着いた時には夜になっていた。少年に与えた回復薬が効いているのか、顔色はさっきよりは良くなっていた。


 二階の誰も使っていない部屋のベッドに少年を寝かせたところで駆君は私にもう少し強めの回復薬を作って欲しいと言ってきたので、工房で作成することにした。工房で回復薬を作ってから部屋に訪れると、少年は目を覚ましていた。


 何があったのか話を聞く前に、作った回復薬を飲んでもらってから、どこか痛いところがないか確認をしようとしたら、少年のお腹が鳴った。そう言えば、お昼に食べたきり何も食べていない。話は、ご飯を食べてからだね。


「ご飯にしようか、何か食べたいものはある?」

「俺は、何でもいいよ。少年は何かリクエストはあるか?」

「…………」


 そうだよね、目が覚めたら知らない人に囲まれているなんて状況なんて、怖いよね。よし、いろいろ作ろう。その中で、気にいってくれるものがあるといいわね。


「それじゃ、用意が出来たら声を掛けるね。もし、動けそうになければここに持ってくるから言ってね。出来あがるまで二人とも休んでてね」


 そう言ってからキッチンに向かった。

 何が口に合うかわからないので、シチュー、ポトフ、コロッケ、卵焼き、お粥(家畜の餌として稲が育てられていたの!異世界でお米が食べられるなんて幸せすぎる)ひっつみ汁、ポテトサラダ。デザートに作り置きしていたプリンと、ババロアを準備。少し時間がかかってしまった。お腹を空かせているだろう二人に声を掛けるために二階に向かった。


「準備で来たけど、動けそうかな?」

「…だいじょうぶです。もらった回復薬が効いたみたいです」


 小さいながらも、はっきりとした声音で少年は返事をしてくれた。これなら大丈夫そうね。一階に下りる時、駆君が少年を念のためと、背負ってくれた。少年は、テーブルに並んだ食事を見て表情を輝かせた。


「いい匂いです。温かい食事は、いつぶりかな?」


 小さな声で、少し不穏な事を言っていた。もしかして何日も食事をしていなかったところに、このメニューって……


「食べててもし、気分が悪くなったら無理せず言ってね」

「……はい」

「小春の料理は旨いから、食っていれば元気が出るよ。大丈夫だって、食べようぜ」


 結果から言うと、心配は杞憂でした。少年は、心配になるくらい沢山食べたのだ。そう、準備した分では足りず、追加で唐揚げと、ナポリタンを作ったくらい。そして、美味しいといって笑ってくれた。


 食後のお茶を飲みながら、改めて自己紹介をすることになった。だって、食事中は無我夢中って感じで話どころではなかったのだもの。


「改めて自己紹介するね、私は小春、こっちの彼が駆君。彼が君を助けてくれたんだよ」

「ありがとうございます。僕はタイガと言います。あの、変なことを聞いてしまいますが、僕はどこにいたんでしょうか?」

「お前は、街と魔の森の間にある、教会跡地の裏手にある墓場にいた」


 やっぱり、あそこはお墓だったんだ。でも、教会跡地って?


「そうですか、ありがとうございます。それと、変なことついでにもう一つ。今は何年の何月ですか?」

「悪い、年号は分からないが、今は5月、1周目の聖の日だ」

「そうですか……ありがとうございます」


 不思議な少年だと思ったと同時に、保護してあげないといけない気もした。取りあえず、お腹も満たしたことだし、少年改めタイガ君は病み上がりなのでお話はこのくらいにして、眠ってもらおう。これからのことは、明日だ。


 タイガ君を寝かせた後に、駆君に相談というか宣言をした。私は、タイガ君を引き取ろうと思ったのだ。今日知り合ったばかりの、謎すぎる少年ではあるが、何か放っておけない感じがするのよ。守ってあげないといけないって気がね。これが母性?私にもあったのね、母性が……。


「駆君。私……」

「分かってるよ。明日、タイガ用に必要なものを買いに行ってくるよ」

「ありがとう」

「いいって。どっちかというと、お礼を言うのは俺の方かな?」


 駆君も同じ気持ちだったことが嬉しかった。そんなことを思っていたら、最後に彼の言っていたことを聞き逃してしまった。聞き返しても、何でもないって教えてくれないし。


 明日からは三人での生活になると思うと、少し楽しみだと思う自分がいたことに少し驚いてしまった。前の私なら、タイガ君を引き取ろうとは思わなかっただろう。きっと、いい方向に私は変わってきていると思うことにした。

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