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運命を背負った少女と最強の守護者  作者: 英雄王ヨカ
最終章[終わりの時]
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最終章[終わりの時]第10話[覚醒の魔神]

[う、うぅ……はぁ!!]


何とか縛りを解除して、半魔法等などの耐性系付与を強化する。


[……]


黒い巨人は、宙に浮くクルスをじっと見詰める。

クルスの考えは、まず一撃目を回避して、そこからカウンターでダメージを与えると言う方法だった。

この巨体、動きは相当量制限されるはずだから、躱しながらのカウンターを繰り返せば、倒せない訳じゃないはず。


[魔神の力をフル出力すれば、破壊できるかもしれないけど、リスクが高すぎるわね。]


クルスは、破壊の魔神の力で、指定したものに対して無条件の予備動作なしで、対象を崩壊させる神力を叩き込むことができる。

だが、これはクルス自身の魔力、神力共に過剰に消費する為、その場限りの取っておきだ。

そして、自分以上の神力、魔力を持っていれば、それに弾かれて上手く作用させる事が出来ない。


[……]


空気が揺れた。

巨人が、動、く?

気付いた時には、クルスの体は地面にめり込んでいた。


[今、何が?]


クルスは起き上がろうとするが、体がビクとも動かないばかりか、全身の骨と筋肉が軋むように痛い。


[見え、無かった。]


あの巨人は、魔神であるクルスすらも反応しきれない速度で攻撃したのだ。


[クロクロに、駄目…体が、動かない。]


巨人は、クルスの事などもう眼中にすらない。


[ごめん。ここで、リタイヤね。]




クロトは、魔力察知で現状を理解した。

他のメンバーは、既に瀕死の状態。

クルスも、この魔力の弱々しさからして、多分やられた。


[……リア、ひとつ頼めるか?]


[なんだ……]


[……もし、俺がに何かあっても…ステラには、何も伝えないでくれ。]


リアは、静かに聞き返す。


[……理由、は聞かないが、策があるのか?]


[ああ、確実な策がな。

でも、多分無事じゃ済まない。]


リアは、複雑そうな顔をする。


[私に、それを頼むのか?]


[すまない。もう、お前しか頼めるやつが居ないんだ。]


シャルルは、多分了承してくれないだろうから、リアなら何とか……


[……私も、飛んだ人で無しと見られたものだな。

お前は、私が友が死んでも平然と笑っていられるような、ポーカーフェイスと余裕を保てる様な人間に見えるのか?]


リアの声は震えている。


[答えはNOだ。寿命が長い分、確かに人の死は沢山見てきた。

それでも…それでもだ。

心を許した。信頼した友が死んでしまって、悲しくならない訳が無いだろう?]


俺は多分、リアの事を全く分かっていなかったんだと思う。

俺の中でリアは、何時だって余裕を崩さず、冷静で、それでいて強くて、尊敬と憧れの対象でもあった。

でも、心は人間だ。

その部分を失念していた。


[俺は、最低だな。]


一番、やっては行けない事、友達の事を、仲間の事を1人の人間として接してなかった。


[……]


俺は、無言で彼方の巨人を見る。


[おい、本当に何をするつもりだ?]


[……リアは、人が魔神になる方法って、知ってるか?]


それを聞いた瞬間、リアの顔が青ざめる。


[クロト、お前、正気か?]


[俺は、所詮余所者だ。

この世界の人間じゃない。だから、俺が例え消えたとしても1人が死んだ事にはならない。

俺は、この世界に来て色んな事を経験したし、その中には沢山辛い事もあった。けどな、それ以上に沢山のものを貰った。]


自身の存在そのものが変わっていく。

感覚は分かる。

1度目の根源解放、2度目の擬似的な魔神化、既にクロトは2度にわたって神力を経験しているのだ。

神力を感じ、操った時のあの感覚、自身の存在が変貌感覚、髪の色素が抜け、あと少しの所。


[やめろ、それ以上はするな!!]


リアがそう叫ぶが、そういう訳にもいかない。

準備が整い、それになろうとした瞬間だった。


[はーい、ちょっと待ってね。]


周りのものや人が、一瞬にして動きを止める。


[いやぁ、危なかった。

何とか間に合ったみたいだね。]


何処からともなく現れる銀髪の女性。

顔立ちは驚くべき事に、彼女、ステラと瓜二つだ。


[フフ、やっぱり驚いてるね。

君に問題、さて、私は誰でしょう?]


だけど、何処か大人の魅力を持っていて、大人になったステラはこうだろうと思える。


[……]


未来のステラと言う線も考えたが、何故か違う気がした。

何処と無くでも分かる。

この人はステラ本人じゃない、似ていても本人じゃない。

この人はあくまで似ているだけだ。


[ルミエル・フェイトギア……]


自然とその名が出た。

確証があった訳じゃない、だけど、クロトからはそれ以外の名前と可能性は出てこないかった。


[へぇ、凄いね、正解だよ。

てっきり、未来のステラだー、何て言うと思ったんだけど、やっぱりわかるものなんだね。]


[……それで、ステラの母さんが、俺に何の用ですか?]


時間が止まっていると言うのは本当だろう、俺も、口と目以外の場所を動かす事が出来ない。


[じゃあ、私からも聞かせてもらうけど、君、今どんな方法で魔神になろうとしていたの?]


今までの調子とは全く違う感じで、明らかに真剣な表情で聞いてくる。


[……]


それを聞いてきたという事は、もう既にその方法知っているという事だ。

俺は、ただただ罰の悪そうな顔をするしか無かった。


[覚醒者の力を1度切って、空気中の魔力と神力を収束、ある程度まで溜まったら真名の力を使って、その全てを解放寸前の所で押し留める。か…確かに、魔神って言うのが誕生する時は、体内に抑えきれなくなった莫大なエネルギーの完全解放と、解放した上で生存し、その時の全エネルギーとそれをコントロールする神力を手に入れている必要がある。]


ルミエルは、呆れたように言う。


[あのねぇ…確かに1度擬似的に魔神化を経験している君なら、多分条件が揃えば必ず魔神にはなれるよ。でもね、そんな分不相応な力を持つだけじゃなく無理矢理押さえ込んで、君の体が無事で済むと思ってるの?

まあ、思ってないから、あんな事を言ってたんだろうけど……]


会話まで筒抜け、そもそもこの人何者なんだ?

ステラの話では、死因ははっきりしてないまでも、母親は死んだとハッキリ豪語していた。


[ルミエルさん、あなたは一体何者なんですか?]


そして、驚くべき答えが返ってきた。


[私?うん、確かに言ってなかったね。それじゃあ、改めて……私は、ルミエル・フェイトギア、時間と空間を司る魔神にして、ステラ・フェイトギアの母です。]


[……は?]


今、サラッとやばい事言わなかったか?


[俺の聞き間違えなら悪いけど、ステラの母さんは、本当に魔神、なのか?]


[事実よ。

このタイムストップだって、それの恩恵あって初めてできる事だし、向こう側から来る最中の君の年齢以外の要素を数年後のものに出来たのも、全部これのお陰だし。]


頭が痛い。

けど、もう驚かないぞ。


[……じゃあ、覚醒者はこの世界に入った時点で、俺自身が数年後の未来にしゅとくするはずだった能力、って事か?

じゃあ、あの時語りかけてきたのって……]


年齢以外の要素、身体能力、能力、魔力、この世界の人間しか持たないはずのあらゆる要素をお手軽に入手できたのはこの為か。


[それも正解、こうして直接会うまでにこんなに時間が掛かちゃったけど、私をこうして現世に直接現界させる為に、色んな人達が協力してくれた。]


ルミエルは、キリッとした表情になる。


[よく聞いて、私が現世に居られる時間はそう長くないの、だから、もうあまり時間がない。

ステラちゃんを助け出すことは、今の私には出来ない。]


悔しそうに言い、俺を見詰め言う。


[君の覚醒者は、このまま磨いていけば、遠くない未来に魔神の力を完全に抑え、意のままにコントロール出来る様になるの、そして君自身の魔神になる為の素質は格段に良い、不完全な状態でも他の魔神を簡単に倒せる程の力があるもの、これは確実、間違いなく君は歴代の魔神達をブッチギリで超越する最強の魔神になれる。]


[……]


何だ、妙な胸騒ぎがする。


[……今から、私の全生命をかけて、あなたをその領域に至る所まで成長させる。]


[……ちょっと待て。]


流石に聞き捨てならない言葉が出た。


[そういう事なら、俺は拒否させてもらう。

あんたが全生命をかける必要は無い。言った通り、俺は余所者だ。だから、俺一人で何とかして、この騒動の全ては俺が全部持っていく。]


[……どうして?]


もう、分かっているだろうに……


[人選を間違えたな。ステラは、ずっと頑張って来たんだ。

母親が死んだと分かっても、ずっと気丈に振舞って、俺たちに悟られないようにしていたんだ。だから、あんたはしっかりとステラに会って、頑張ったねって褒めてあげて欲しいんだよ。]


身動きひとつ取れない状態で言ってもシュールなだけだが、俺の思いはこんな感じだ。


[それで、次はちゃんと親子何の隔たりも無く過ごして欲しいんだ。]


初めから誰かを犠牲にして、自分が助かろうなんて思っていない。

俺はこの世界で少なくない量の人の命を殺めた。

その罪も、全て墓に持っていく。


[……なら、やりたくなかったけど無理矢理にでも……]


俺は、時の呪縛を解き放つ。


[すまないな。今の間に準備を整えさせてもらった。]


後はスイッチを押すだけだ。


[待って!!]


俺は、覚醒者を発動させて、一気に反転の時の感覚で、存在を覆して行く。

俺の予想では、反転凶化の先の先にあるのが、魔神としての領域なんだ。

神力、魔力、精神力、集中力、あらゆるものを行使して、その領域へと至る。

止まった時は悲鳴を上げて震え、紺色のコートと髪の色は、色が抜けていくように白へと変化する。


[これ、が……]


最後に、その力を覚醒者の力で体の中に押し留める。


[成功……だな。]


漏れだしていたエネルギーは、今の所抑えられているし、これなら世界も耐えられるだろう。


[んじゃ、行くか。]


指をパチンと鳴らすと、止まっていた時は、砕け散るように動き出す。


[……クロト、行くんだな?]


リアが、状況に何の動揺も示さず言う。


[やっぱり、今の見れてたんだな。]


[動けはしない。見れてただけだ。]


流石にリアだ。

止まった時の中を認識するとは……


[アインさんの治療終わりま……って、クロト、その姿。]


シャルルの声がして、そちらを見ると、アインの傷は完璧に治っていた。


[シャルルも、ありがとうな。

こんな所まで、着いてきてくれて。]


ここまで来れたのは、間違いなく皆のお陰だ。この場所に経つために、色んな人が俺に協力してくれた。

武器屋のオッサン、水の都でルミナスを譲ってくれた爺さん、学園の皆、剣聖、教会の皆やトラストさん、リレイド、シャルル、アイン、リア、クルス、ユリカゼ、誰一人欠けてもここに立ててた気がしない。


[何を、言ってるんですか?]


シャルルは何かを察したかのように言う。


[……ステラさんの、彼女の為に、行くんですね?]


[ああ、すまないな。勝手な事ばっかりして……]


こう言うとなんだが、シャルルは凄く寂しそうで、悲しそうな顔をしている。それでも、必死に表に出さないように、最低限だけ聞いて抑えているのだ。


[いえ、私にあなたをどうこう言える権利はありません。あなたがそういうのでしたら、それ相応の覚悟があっての事だともわかります。]


彼女の事だから、本心を言おうとはしないだろう。

だから、俺は悟っても彼女自身の口からは聞けないし、聞こうとも思えない。

彼女は、引き留めるのではなく、背中を押してくれる、将来は立派な神職に就けると断言出来る。


[……っ!]


俺は、彼女の頭を軽く撫でてやる。

今にも泣き出しそうなシャルルは、必死にそれを押し留める。


[もう、反則です。そんなの……]


俺は、[ああ……]とだけ返して、ルミエルの方に視線を移す。


[ステラの事、頼みましたよ。]


[……本当に、それで良いの?]


良いのか、と聞かれると、まあ正直に言えば、生きれるものなら生きていたい、誰も死なずに済むならそれがそれが一番良い。


[良いよ、もう決心はついてる。]


[……最後に、ステラちゃんに伝えときたい事はある?]


[(ーーとでも、伝えといてくれ。)]


脳に直接思念を送って、伝えない内容を言う。


[……うん、わかった。]


良し、それじゃあ行くか。


[最後の大仕事だ。行くぞ、ルミナス!!]


呼応するようにルミエルが淡い光を纏う。

俺は、巨大なそれを見据えて、神力を体に纏い、宙に浮かぶ。

良し、飛行も問題なく出来そうだ。

前に覚醒した時に、宙に浮かぶ事は出来ていたので、出来るとは思っていた。コントロールは神力を操作すれば良い、今俺自身が纏う神力は、思った通り意のままに操れるので、加速と方向転換、旋回と自由自在だ。


[……!!]


一気に最大スピードまで加速して、飛び立つ、その速度はアインのフルスピードと同等かそれ以上だ。

これで、本当にこれで最後だ。

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