最終章[終わりの時]第9話
クロト達同様、リレイドや剣聖、ユリカゼも有効なダメージは与えられずいた。
[はあぁぁ!!]
[ぜぇりゃぁぁぁ!!]
剣聖と傭兵、2人の巨大な剣が、龍の胴を左右から薙ぐ。
[やはり、深くは入らんか。]
そして、両者ともに決定打には至らない。
[ここまで…とはな。]
そも、スケールからして倒せると言う実感もわかない。
願わくば俺達だけで倒すつもりだったが、これは本格的に、あの4人に任せるしか無さそうだ。
[……]
ユリカゼも、根源解放を使用して、攻撃を気にせずに切り刻む。
[ジリ貧…ですか。]
霧雨の根源解放は、攻撃を受けなくなりはするが、ずっと発動していられる訳じゃない。
神力の行使は、使用者の体力をとんでもなく削る。
流石のユリカゼでも、根源解放ともなれば精々1時間が限界だ。
[時間稼ぎ……は、出来ているのでしょうが……]
[魔法陣、基本構築完了。]
クロト達が相手している間、リア達も凄まじい早さで魔法陣を作り込んでいた。
[良し、ここから……]
威力倍増と魔力圧縮、発射後の魔法の安定、無駄な方式は要らない。
この場であの魔物を倒す為だけに撃ち込む魔法、それがこれだ。
魔法発動の為の魔力は自腹だが、これ程に大規模な魔法陣を必要とする魔法は、魔法陣そのものを作る為にも相当量の魔力と、それを間違いなく組み込む技術が必要となる。
その魔法陣作成の為の魔力操作の方を、3人に手伝ってもらっているのだ。
クルスの方は最初から心配などしていなかったが、シャルルとステラには多少の疑念はあった。
確かに、2人はこの世界でも3本の指に入る魔力操作の技術がある。
魔力の操作なんかよりもずっと難解な、神力操作と、霊力の操作をそれぞれ完璧にマスターしているのだから、それは間違いないが、それでもこの2人は神話時代の魔法に関しては素人だ。
神話時代の魔法と、現代の魔法は通ずるものはあっても別物と言ってもいい。
2人の才能ならば、そんじょそこらの魔法なら、見た事なんて無くても使えるだろうが、これは神話時代でもソロモンしか使えなかった魔法だ。
私ですら、使い方を知っているだけで、一人で行使できた試しなど1度もない。
魔力の量でどうにかゴリ押した世界創造とは訳が違う。
[……]
静かに、ただ静かに魔法陣を完成させていく。
ここまででミスはゼロ。
これを当然の様に使ってみせるソロモンは、やはり凄いと言わざる得ない。
クルスとステラ、シャルルは魔法陣を見ながらひたすらに感嘆するしかなかった。
[凄い……]
ステラから、そんな声が漏れた。
確かに、魔法陣の制作を手伝ってはいても、この魔法陣の構想を考え作っているのは、リアちゃんただ一人、魔法を嗜んでいれば、この魔法は既にこれ以上と無い極地のそれだって事が嫌でもわかる。
手伝っていると言えば鼻が高いかもしれないけど、私達は単に適量の魔力をその都度融通しているに過ぎない。
リアの倍は生きている、クルスですら、これ程の魔法は行使出来ない。
これが、絶大なる才能を持った者が、数百年間欠かさず研鑽を続けた結果なのかと……
1対1で戦えば、クルスが勝てるかもしれないが、リアの凄さはそこじゃない。
この子なら、私に掛かっていた呪いを解くのも訳無かっただろう。
認めると、いうのすらおこがましいのだろう。
魔法陣の完成率…80%
90…95……100!!
[完成だ!!]
[やっとね。]
[リアさん、凄すぎます……]
[これで……]
さて、奴らに伝えてやるか。
ステラは、魔法を使い、情報をクロト達に送る。
[ん?]
クロト達が、送られてきた情報を理解する。
[成程、完成したか。]
[早かったですね。]
[外すなよ。リア!!]
[狙いは龍の頭、一点に絞って、撃ち抜く。]
魔法陣を行使して、魔法を発動させる。
[ッ!?クルス、動かないように抑えてくれ!!]
瞬間、龍が飛び立とうしたのだ。
[了解!!]
クルスは一瞬で龍の頭上に移動し、全力の神力で威圧をかけて抑える。
[良し、使わせて貰うぞ…ソロモン!!]
ー神話級収束砲・ミストルティンの矛ー
[貫け!!]
魔法陣の中心に、光の矛が出来上がり、発射される。
光の矛は一瞬にして、龍の頭に到達し、貫いた。
[……終わりだ。]
龍は耳が張り裂けんばかりの雄叫びを上げて、崩れて行く。
そして、完全に絶命を確認した。
[勝った。]
誰一人欠けていても、この勝負は勝てなかっただろう。
[やっ……た。]
リアは、ゆっくりと崩れ落ちる。
シャルルが、それを支える。
[すまない。少し、腰の力が抜けてしまった。]
ソロモンとの戦いに続いて、これ程の魔法を使用したのだ。
流石のリアも体力の限界が来ていた。
[やはり、魔力の量だけではどうにもならんな。]
リア達と同じく、クロト達も安堵していた。
[やっと……終わりましたね。]
[ああ、長かった。]
白銀の龍は、都の空に悠然と舞っていた。




