最終章[終わりの時]第7話
[解せないな。]
リレイドは、アレス王に言い放つ。
[お前の娘に何があったのかは分かった。保護下に置きたいというのも、まあ理解出来ん話ではない。
それを踏まえても、お前の行動は度が過ぎているんだ。]
[ほう、と言うと?]
[お前は仮にも一国の王だ。
そんな人間が、たった一人の娘の為とは言え、国家間の関係をひっくり返してまで強襲するか?
親故の愛情ならば、拉致した後もあの様な檻に入れてまで監禁しないだろう。
それも、重度の呪いを掛けた状態でな。]
これまでの話から見ても、アレスの行動は明らかにおかしいのだ。
そして、それを説明するだけの材料を王は提示していない。
何か裏があるなら、探っておくに越した事は無い。
[ふむ、まあどうせすぐにわかる事だ。話しても良いだろう。]
リレイドは、眉を潜める。
[話した通り、我が娘の体内には神具が宿っている。
今はコントロール出来ていても、いずれはそれが効かなくなり、その膨大な力の元に崩壊してしまう。]
[……]
どう言う事だ?
確かに俺が知る限りでも、神具との同化は、メリットと同じくらいデメリットも多いものだ。
それでも、本人がコントロール出来ていれば、暴走の危険は特に無いし、それも幼少期からその訓練をしているなら、その心配はほぼ皆無と言えるだろう。
[事例が極めて少ないだけに、これを知っている者は少ないがな。]
[ふん、戯言だな。
それが本当だったとしたら、まるで、お前には回避する方法がわかる。と、言っているようなものだぞ?]
王は、不敵に笑う。
[そうだ。
貴様も、魔術王ソロモンが眠りから覚めているのは知っいるな?]
[……まさか、お前が?]
成程、全て繋がった。
[ああ、当時の私は、娘を助ける事に必死だった。
だが、既に現世の魔法では、神具との分離はおろか、その力による崩壊すら、防ぐ方法は無くなっていた。]
後ろで静かに聞いているシャルルは、ある疑問を持っていた。
やけにペラペラと話しますね。
この状況で、私達にそれを律儀に話すメリットがあまり感じられない。
城の兵が来るのを待っているとも思えない。
……狙って時間稼ぎをしている?
[だから、太古の……神話の時代の、この現世の常識そのものを逸脱した知識、そして技法が必要だった。]
[そして、何らかの方法でソロモンの眠っている遺跡を見つけ出し、封印を解くことに成功した。]
[その通り。本当なら、魔女の方もこちら側に付けておくつもりだったんだが、まさか王国にあるとは思わなかった。]
そう言う面では、不幸中の幸いだろう。
もし、リアまで向こう側に着いていたら、幾らこちら側に俺や魔神や聖女が居ようと、この戦いは困難を極めただろう。
話を聞く限り、ここまで話が繋がるには、リアの存在は不可欠だった。
[……それは残念だったな。
だが、随分と無駄な話をする様だが、時間稼ぎは後どれくらいするつもりなんだ?]
王から、少し余裕が消える。
[気付かないとでも思ったか?
聞かれた事をなんでも律儀に答え過ぎたな。]
話し合いでの時間稼ぎと言うのは、この界隈にいる人間対して行うには、相当な話術が要求される。
勿論、聞かれても無いことをペラペラ喋るのは論外だが、時間稼ぎの話し合いと言うのは、相手にも自分にも、どちらにも優位が移らない様にし、それを継続させなければならない。
今の場合、こちらに優位が完全に移っての話し合い。
時間稼ぎのメリットに有無を置かなくても、それを疑った状態で話を続ければ、ボロが出なくても疑うタイミングは勝手に芽生えてくる。
[律儀に教えてやってるだけなんだがなあ。
だが、少し切り出すのが遅かったな。]
[なに?]
ハッタリか?
話の容積からして、まだ時間稼ぎを重ねる前提でのものだろうと推測していたが、既に終わっていた?
[貴様はこれより、今の話で、唯一謎だった部分を理解することになる。
自分の目で(・・・・・)、な?]
自分の目で?
[……っ!?なんだ、この揺れは?]
突如として足場が…いや、何か巨大な物が、この都を中心にこの国全体すら揺らしている?
[くっ、捕まれ!!]
本能的に感じた危険。
それを自覚した時には、シャルルを片腕で抱えて、王室に侵入した時にぶち壊したステンドグラスの窓から、遥か都の外の森目掛けて跳んでいた。
[え!?リレイドさん何ーー]
後方を確認したシャルルが、言葉を止める。
[どうした?聖女。]
[あれ……]
シャルルが、さっきまで自分達の居た場所、王城の方向を指さしていた。
リレイドは、そちらを向き、それを視認すると同時に、目を見開く。
[なっ!?]
リレイドが見たもの。
城を越えるであろう巨体を持つ、黄金の龍が、さっきまで居た城を内側から突き破るようにして、姿を露わさせて行く様だった。




