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運命を背負った少女と最強の守護者  作者: 英雄王ヨカ
最終章[終わりの時]
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最終章[終わりの時]第4話

[ステラ、一つ聞きたいことがある。

良いか?]


クルスとユリカゼが帰ってきたタイミングでリアが口を開いた。


[良いよ。

それで、何が気になるの?]


[奴がお前にそこまで、固執する理由だ。

自慢の愛娘だから、などという可愛らしい理由ではないだろう。]


確かに、あの王は何があってもステラを自分の手中に置いておくことに拘っていた。

親としての愛情があるとは思えない行動を見る限り、何かあるとは俺も思っていた。


[……理由は、あるよ。

ちゃんと、それはね……]




[ふん……]


リレイドと王は戦っていた。

だが、戦況は明らかにリレイドの優勢だった。


[おのれぇ……]


[……貴様がそこまで、あの娘に拘る理由はなんだ?]


リレイドは、戦いながらも問いを投げる。


[理由だと?

貴様らは、そんな事も知らずに乗り込んできたのか?]


[良いから答えろ。]


安い挑発に乗って時間を潰すつもりはない。


[ふん、決まっているだろう。

我が娘、ステラには特別な力が宿っているのだよ。]


[特別な力?]


[ああ、そうだ。

特別サービスで教えてやろう。

私が拘る理由、それは、娘の持つ魔力が極めて特殊であり特別なものだからだ。]


魔力が特別?


[我々は、その魔力を黄金の魔力と呼んでいる。]


[黄金の魔力だと?]


黄金の魔力、一体どのようなものなんだ?


[聞かせてやろう。

黄金の魔力の秘密をな。]




[黄金の魔力、それが、君の持つ特別な力……]


[うん、少なくとも父さんはそう言ってた。]


黄金…なんだ、何か引っかかる。


[……それって、学園が1度目に襲撃された時に、ボス相手に使ってたあれか?]


確かにあの時、ステラの魔力回転の速度は異常だったし、纏っているオーラの様な魔力は、黄金だった。


[そう、やっぱり気付いてたんだ。]


いや、実際には今気がついたと言ったところだ。


[リアはまだ、あの時点では眠ってたんだっけ?]


[ああ、私が覚醒したのはお前が反転したあたりだ。]


それじゃあ、リアはそれが何なのか知らない。

勿論俺も……


[そうか…話して、くれるか?]


ステラは頷く。


[うん、勿論……話は、大体10年くらい前かな。]



回想


私は、この国の、王女と王の間で生まれたの。

言ってしまえば、お姫様ってところかな。


6歳くらいまでは、何不自由なく育ったって言ってもいいくらいだった。

父さんも母さんも優しくて、当時の私はこれが永遠に続くと、信じて疑わなかった。


けれど、そんな事は有り得なかった。

幸せと呼べる時間は、限られた間にしか存在しないからこそ、幸せと呼び、苦しいと呼べる時間も等しく与えられるのが道理だ。



[父様どこだろう?]


そんなある日、私は父さんを探していた。

当時から、魔法の素質を見出され、将来魔法を使う職業を夢見ていた私を、両親は揃って応援してくれた。

父さんは、母さんよりも魔法に長けていたという面もあり、私によく魔法を教えてくれていた。


[今日は、魔法を見てくれるって約束してたのに……]


書斎に行ってもいないし、執事に聞いても知らないと言っていたので、次は母様に聞きに行こうと、屋敷の中を歩いていた。

こういう時は、大体城に行って大事な会議に出ていると、私は聞かされていた為、今日もそれだろうと考えていた。


[え?いないの?

確か今日は、何も用事は無かったはずだし……]


私の母、ルミエル・フェイトギア、この国の女王にして、王である父様、アレス・フェイトギアの妻でもある。

この様子だと、母様も知らないのだろうと、幼ながらも察することは難しくなかった。


[そうね…それじゃあ一緒に、父様探そっか?]


母様は、普段は自室で、よく魔法についての本や、裁縫やら色々な事をしている。

それでも、私が部屋に行けば必ず中断して構ってくれるし、困っていたら何を置いても助けてくれる。


[うん!!]




けれど、どれだけ探しても、父様は見つからず、母様も困っていた。


[本当に居ないね。

どこいったのかな、あの人……]


父様が行きそうな所は粗方探して、今は主に大事なんかを置いている、資材倉庫にいた。


[……]


手持ち無沙汰になって、倉庫の中を見回すと、一つ、見慣れない物がそこにあった。

剣だった。

それも、凄く細くて、それなのに不思議と折れると言う実感が全くわかない。

ガラスの様に透き通るような刀身は、子供ながらに魅了される。


[ん?どうしたの、ステラちゃん。]


気付くと、私はその剣に触れていた。


[母様、これ何?]


[え?それは…って、それって神具!?]


母様は驚きの声を上げる。


[しん、ぐ?]


聞いた事のない単語だった。

疑問符を浮かべていると、柄を握られた剣は、光り輝く。


[えっ、なに!]


私は、驚きのあまり狼狽する。


[これは……ステラちゃん!!

早くそれを離して!!]


母様が焦った様子で、叫ぶ。

唯ならぬ気配を感じて、すぐに剣を握っていた手を離そうとした。だが、剣から手は、一向に離れず。

やがて剣は、放つ光と共に、私の体に吸い込まれるように消えていく。


[このままじゃ!仕方無いか…ルミナス!!]


母様がそう叫ぶと同時に、何もない場所から、綺麗な銀色の刀身を持つ直剣が出現し、母様がそれを掴む。


[娘から離れなさい!!]


半分まで消滅している細い剣を、母様は目にも止まらぬ早さで斬り上げる。


[ステラちゃん!!]


そしてすぐさま、私を抱き寄せると、後退する。


[……]


私は、あまりに一瞬の事に、何が起こったのか分からなかった。

母様は、剣を構えたまま、片方の腕で私をきつく抱きしめている。

警戒は解かず、床に転がる、柄から刀身の中心にかけて消えた剣を見つめる。

続く緊張の中で、沈黙を破ったのは、背後から部屋に入ってきたある人物だった。


[ルミエル、ステラ!!何があった!?]


そう、元々はこの人を探して、倉庫に入ったのだ。

アレス・フェイトギア本人だ。


[アレスくん!!]


[良かった、無事だったか……]


アレスは、安堵したような表情をする。


[状況を見るに……神具が暴走したか。]


[うん、ごめんなさい。

この子を守りきれなかった……]


父様は、母様を一瞥すると、直ぐに転がった剣の方に視線を向ける。


[話は後だ。あれは私が封印する。

お前はステラを守っていろ!!]


そう言うと、父様は剣に近付こうと歩き出す。


[……流石に、そう簡単には封印させてはくれんか。]


さっきまで転がっていた剣は、独りでに空中に浮かび上がると、矛先を父様に向ける。


[ふん、使い手の居ない獣同然の神具が、この私を倒そうと言うのか?]


ーデスサイズー


[片腹痛いな。]


父様の傍に、黒色の大鎌が現れる。

父様はそれの柄を掴み、構えた。


戦いとすら言えないほどの圧勝だった。

父様は問題なく、魔法で剣を封印した。



[……これは、竜爪ドラグーン。

お前のルミナスや、私のデスサイズと同じ神造武具のひとつだ。]


封印した剣を見せながら話す。

今は、父様の書斎で話している。


[それはわかってる。

気になってるのは、何でそんな物が屋敷の倉庫に置いてあったのか、なんだけど。]


[これは、城に地下があるのは知っているだろう。そこで見つかったものだ。]


[じゃあ何で、すぐに城に運ばなかったの?]


母様は真剣な面持ちで聞く。


[私とて、好きで運ばなかったのでは無い。ただ、少し問題があったのだ。]


[問題?]


[ああ、この神具は、お前も見た通り、一定以上の適性がある者の体に、無差別に同化を試みるという非常に厄介なものだった。]


ルミエルの顔が、更に厳しくなる。


[そんな危ない物を家の中に置くのに、何で私達に黙ってたの?]


[……すまない。]


ルミエルが、バンッと机を叩く。


[……確かに、私もこの子を守れなかったから、何も言えない、だけど……]


[それでも、君が言っててくれれば、こんな事にはならなかった!!]


涙を浮かべた瞳で、父様を睨みつける。


[知ってるよね?

1度同化してしまった神具は、二度と取り出す事は出来ないの……しかも、1度暴走してしまったら、力に耐えきれない体は神具と共に消滅させてるしかなくなる。

本当なら、魔法の練習に使える、この子の未来の為の時間を、その力を抑える為の、辛いものになんて変えたくなかった。]


[……責任なら、私が持つ。]


私は、最後まで言葉を発さなかった。

幼く、知識も乏しかった私には理解出来る世界じゃなかった。


神具との同化。

神具とその使い手の間で、ごく稀に起こる事象で、神具と使い手は、普通の、武具と使い手という単純な解釈ではなく、もっと深い場所で繋がっていると言う説があり…同化とは、使い手と神具の間で起こす異常現象で、ある種の一体化だ。

これは、神具と使い手の存在そのものが重なり、あくまでも肉体と離して使用している神具という形での力の行使では得られない。

より純粋で、より強力な神の力を、直接扱える様になると言う、外側だけ見ればいい事づくめな事象だが、一つ重大な欠点が存在する。


暴走だ。

神具が内包する神話時代よりの力、神力は、普通の人間が体内で使用すれば、毒でしか無いのだ。

少しでも、使い手側が揺げば、簡単に押しつぶされてしまう。

人間の身でありながら、体内にそれを宿す者を、異常者と言う意味も込めて、この世界ではこう言う事もある。

世界の歪み、と。



それから、母様と父様からは本当の笑顔は消えた。

幸せとは壊れやすいと、実感して初めてわかった。

私は、少しでも母様と父様の笑顔が見れるように、必死になって頑張った。

父様の言う、神力のコントロールの為の辛い修練も、幼ながらに文句の1つも言わずに取り組み、魔法についても、関連の書物を片端から読み砕き、反復を重ねた。



そして、8年が過ぎたある日の事だった。

神力のコントロールについても、大分問題なく出来るようなり、魔法に関しても、分からない所を母様や父様に聞けるくらいには、関係も改善し、上達した。

そして、母様に、夜屋敷の裏口に来るように言われた。


[こんな夜にどうしたの?母様。]


体も、もう十分に成長し、その美しさは母親譲りのすばらしいものだった。


[……うん、ちょっとね。母さんから渡したい物があるから、少し、着いてきてくれる?]


[……?別に、良いけど、ここじゃ駄目なの?それか、屋敷の中で……]


母様は、首を横に振った。


[大事なことなの、だから、ここや、屋敷じゃ駄目。]


明らかに様子がおかしい。

そう思った私は、少し探った。


[それなら、父様も一緒に……]


[それは駄目。]


何で?

こんな夜更けに、場所も移動しないといけない様な大切な事なら、念の為に父様が居ても良いはず。


[何で?]


[駄目なものは駄目なの。]


それに、何処か焦っているようにも見える。


[……父様と、何かあったの?]


[……!!]


確信があった訳じゃない。

けれど、予感はしていた。

最近、父様と母様はよく言い争って居た。

私といる時はいつも通りを装っていたけど、流石に気付かないほど子供じゃない。


[やっぱり……]


何故言い争っているのかは、盗み聞きしている限りでは掴みきれないが、ソロモンと言う人物や、私の中の魔力が神力がどうとかって言う単語は耳にしていた。


[……良いから来て。]


母様が、腕を掴む。


[いや!!]


私は、振り払う。


[ちゃんと、話してくれるまで、私は……]


[時間が無いの、だから、言うこと聞いてよ!!]


[ッ!!だから、ちゃんと話しくれないとーー]


言い争っていると、背後から声が響く。


[お前達、何をやっているんだ!!]


父様の声だった。


[父様、うーー]


振り返ると、後ろから口を抑えられる。


[うーー、ふぅーーう!!]


すごい力だ。

母様は、父様に言い放った。


[あなたに、この子は任せられない。]


足元に魔法陣が出現する。


[ルミエル!!馬鹿な事はやめるんだ!!]


父様は、すごい剣幕で言い返す。


[……]


魔法陣が光り輝くと、視界が光に包まれた。

それと同時に、私の意識も落ちる。

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