最終章[終わりの時]第2話
広がる景色は、先までの森とは一変し、夕焼けの美しい荒野へと変わっていた。
[まさか…作ったと言うのか?
本当の世界一つを……]
[ああ、その通りだ。]
ここまで辿り着くのに、無期に等しい時間を掛けた。
勿論、仮に作り上げられたとしても、普通の人間、はたまた神であろうとも、そうそうに使えるような燃費の良いものでも無い。
これは、リアの持つある固有魔法による恩恵によって成り立つ反則なのだ。
[……成程、アンリミテッド・セヘルの応用という訳か。]
アンリミテッド・セヘル、リアの持つ反則級固有魔法のひとつであり、これのお陰で、あらゆる魔法の消費魔力を半永久的に賄うことができる。
[その通り。
応用と言うよりは拡張だがな。]
アンリミテッド・セヘルは、体内に一つ小さな世界を作り出し、その中に魔力を貯め続けるという物だが、この魔法は、1度発動してしまうと、解除はほぼ不可能になるのだが、小さくとも1つの世界、維持するには勿論、常時魔力供給する必要があるのだが、この魔法は、使用者の魔力を自動的に一定量吸い取り、結界内に収納する。
維持の為に、使用者の魔力は消費しても、それその物が魔力の塊の様なもののため、維持の条件は世界の中に魔力が一定量あればクリアされるのだ。
リアの瞬間魔力回復量は、結界維持の消費魔力を上回っている為、大してリア自身には負担がない上に、本来人は自身の魔力が最大まで回復していた場合、それ以上はたまらないのだが、セヘル自体は魔力を無限に貯蔵し続ける為、リアがこの魔法を発動させた数百年前から、一滴たりとも無駄にすること無く貯蔵され続けた膨大な魔力は、それこそ無限と言っていい。
そのセヘルを具現させた物が、ラグナロクなのだから、この世界の中には、リアのみが使用・操作可能な魔力が満ち満ちている。
[まあ、それでもあの呪いを喰らった時は流石に焦ったがな。何しろ私とセヘルのリンクを無理矢理立って使用出来ないようにしてきたのだからな。]
[……それでも、だ。
これから、どうやって私を倒すというのだ?]
[忘れたか?
これは、私のセヘルを具現化したものであり、私の世界だ。
この魔法の発動中は一時的に私達は世界の狭間に移動する。]
そう、これはあくまで布石だ。
本命はもっと別にある。
[もうお前は、私に勝てない。詰みだ。]
[ふん、ならばこうするまでだ。]
ソロモンは、何かしようとするが、奥の手はもう使わせない。
[無駄だ。]
ソロモンの前に、中級魔法アーカイブ発動時に出現するコンソールと、似た物が出現するが、私が手を向けると、あっさりと消え去る。
[ワールド・アーカイブは使わせない。世界に干渉して脱出するつもりだったんだろうが、甘かっな。]
[ぬっ……]
ワールド・アーカイブ、文字通り世界の記録するあらゆる情報の閲覧と、改ざんが可能になる。
名前を聞く限り、間違いなくチートだが、それは対策済だ。
[そろそろ、終わらせよう……ソロモン。]
夕焼けの空に、無数の光が浮かぶ。そして、ソロモン自身もバインドを掛けられ動きを封じれる。
[な、何だ!?この圧力は?]
そして、それはリアが指示を出すと共に、自身の体に収束させていく。
[世界そのものと戦い勝てるなら、それを撃ち破って見せろ。]
[ぬ、うぅぅぅーー!!]
ソロモンも、自身の持つ最大限の魔力を行使するが、人1人の魔力では限界もある。
世界そのものが1人を押さえつけているのだ。
[終わりだ……]
ーアルカナム・インパクトー
1つの戦いが終わった。
景色は夕焼けの空から、また夜空へと戻っており、そこには敗者と勝者が居た。
[私は…敗れた……のか?]
老人は、体の殆どを欠損しており、回復は不可能だった。
[ああ、そうだ。]
傷をあらかた直したリアが歩いてきた。
[……ふ、まさか…私が、かつての弟子に負かされる日が、来るとはな。]
リアは、顔色一つ変えずに返す。
[私は…ずるをしただけだ。
昔のお前は、こんな勝負の付け方を勝ちとは認めなかっただろう。]
[そう…だったか。
いや、そんな事も合ったな。]
閉じかけた目には、いつかの楽しい思い出、もう戻りはしないであろう数百年も前に終わりを告げた日々が映る。
[歳は…取るものでは無いな。
やはり……]
声は段々と薄れていく、生命の終わりとはこういうものだと、リアもソロモン自身も理解していた。
[そうだな。
お前は、歳を取りすぎたんだ。]
勝ったのに、こんな気分が晴れないとはな。
確実に勝ったはずなのに、勝ちを認めたくない自分が居る。
[……成長したな、ーー。]
[……前に言っただろう。その名前で、私を…呼ぶな。]
彼女の本当の名前は、彼女とその師しか知りえない。
本当の名前を偽り、あの2人の前でも否定したのに、今更誰が……
[……もう、眠い。
後の…掃除は……任せた…ぞ。]
リアは、屈んで、しっかりと聞こえるように言う。
[……わかりました。
ーーー師匠ーーー
……]
その言葉を聞いたかどうかは分からない。
だが、魔女ではなく、一人の少女の顔には、一滴の雫が流れた。




