4章[救う為始まり]第22話
[良し、準備完了だな。]
一通りの準備を済ませて、わたしは宿屋を出る。
外はもう暗く、宿屋の前には、もう既に皆集まっている。
[すまない、遅くなった。]
[いや、俺達も今来た所だ。]
クロトが、フォローを入れてくれる。
あれから、大体3時間くらい…時間的にもそこまで問題ないだろう。
[そうか……なら、早速行くとするか。]
[ああ。]
[灸を据えてやろう。]
それぞれの2グループに別れる。
[健闘を祈る。]
[そっちもね。]
そして、俺達は別々の場所に転移した。
[着いたな。]
場所は、都外れの平原で、反対側にある森の方に、リア達は転移したらしい。
時間はもう既に遅いが、かえって好都合だろう。
[間違いない。
あの城だ。]
木々の隙間から、一際明るい大きな建造物。
忘れる筈が無い。
[さてと、どう突入するか…だけど。]
正直このメンバーなら、正面突破も容易だろう。
何か罠があろうと、クルスなら次元を歪ませる事も出来るから、大体はどうにかなるだろう。
問題は、あの黒い触手だ。
[クルスなら、あの黒い触手の迎撃は出来そうか?]
[うん。まあ、それは簡単だけど、流石にあそこまで魔力への特攻が高いと、私でも障壁で防ぐのは無理ね。]
つまり、自力で捌くことくらい幾らでも出来るが、障壁で周りを囲って完全な安全地帯を作ることは出来ない…ということだ。
[でも、クロクロにも奥の手。
あるんでしょ?]
[ああ、それは確かにあるけど……]
そもそも、基本スペックが他のメンバーと比べて劣っている俺では、ユリカゼの様に技でカバー出来るほどの技量も無いため、足でまといになる可能性すらあった。
だが、教会にいた時から、ずっと使えるように訓練していた技が、根源解放の他にもう一つある。
危険すぎる上に、根源解放の様に未完成のまま使っても、大した効果が得られない技の為、今までは使おうとはしていなかったが、リアとの訓練や、1度魔神の力を体験した事で、何とか集合までの3時間で調整を完了させることが出来た。ある意味奇跡と言えるタイミングだ。
[あれは、最後の手段にするつもりだ。
何せ、本当に奥の手中の奥の手だからな。]
それを切れば、本当に手札が無くなってしまう。
[ふぅん、奥の手中の奥の手…ねぇ。]
何か察するようにクルスがこちらを見てくる。
[な、なんだよ?]
[うぅん。何でも。]
なんなんだ一体……
[クルスさん、クロトさん。
都の壁に非常用通路のようなものがあります。
そこから侵入して、都中心の城に接近し、侵入可能な場所を見つけ次第、囲っている結界の一部をクルスさんの魔力干渉で一時的に無効化、突入、の手筈が一番最速かつ安全だと思います。]
流石ユリカゼだ。
転移場所から、侵入までの道筋を見つけるのは、彼女が1番適任だと考えたのは当たりだった。
こっち側が隠密行動班だとしたら、向こう側は強行突破班だ。
だからこそ、強行突破班には常にあの触手と戦う危険が伴う為、呪いへの耐性が規格外レベルの二人を向こう側にしたのだ。
リアは、強さが別次元が故に、あれ程の魔力特攻を持たれると、掠るだけで吐血レベルの重傷になる。
[わかった。
それじゃあ、早速行くか。]
都内部への侵入は上手くいった。
後は、城への潜入だが、ここで失敗すると、その時点で強行突破前提になってしまうので、出来れば少しも感ずかれずに、ステラを救出したい。
[でも…流石にこれは……]
[……]
流石国の中心、警備は厳重過ぎるほどだ。
と言うより、予想を4歩くらい上回ってる。
城の全方位何処を取っても、アリ一匹入れないと言ったご様子。
[ねえ、これって潜入できるの?]
クルスの当然の質問。
[正攻法では不可能ですね。]
成程、だけど今の口振りだと……
[という事は、正攻法じゃ無かったら行けるのか?]
まあ、潜入に正攻法も何も無いだろうが、そこは言わないでおこう。
[普通に反則的な方法なので、出来れば温存したかったんですけど…この際仕方ないですかね。]
そう言いながら、ユリカゼは神具である刀を取り出す。
[……もう少し、私に寄ってもらえますか?]
この発言から、予想は着くが、恐らく転移的な何かを使うのだろう。
[でも、転移だと感知されるんじゃ……]
そう、態々都から少し離れた所に転移したのは、感知されてしまう事を考えたからだ。
[そこはご心配無く。
魔力は使いませんので……]
何だか分からないが、取り敢えず俺とクルスは、ユリカゼの傍に寄る。
[お願いします。神影刀霧雨……]
何か言いながら、刃を地面に突き立てる。
[神具・覚醒……]
短く詠唱すると、俺達を囲うように、周りを、刀身から出現した黒い何かが覆う。
[安心してください。私がやりました。]
確かに、神影刀…成程、これは言わば影、魔力を使わないってこういう事か。
[着きました。]
そして、周りの覆っていた影が、刀に吸い取られる様に戻ると、そこは既に城の地下であろう場所。
[これは、次元を無理矢理くっ付けたの?]
俺は分からなかったが、クルスはどう言う仕組みなのか分かったようだ。
[それって、どういう事だ?]
[まあ、分かり安く言えば、城の中に霧雨の影を紛れ込ませて、納得の行く場所が見つかった所で、その場所と、元いた場所間にある遮蔽物を全て無視して、次元屈折を応用し、距離をゼロにしたんです。]
理解しきる事は出来ないが、つまり、今俺達が移動するほんの一瞬の間、移動先である今俺達が居る場所と、元いた場所が完全に重なったって事だろう。
簡単に言えば、某22世紀のドア型の秘密道具を思い浮かべればわかりやすい。
[成程…と言うかユリカゼそんな事も出来たんだな。]
[まあ、霧雨との付き合いは結構長いですからね。
次元を歪めるのが得意な子なんですよ。]
口振りからするに、もう俺と出会った頃には使えた技能なんだろう。
俺と最初に戦った時にこれや、もっと他の技能を使われていたら、確実に負けていただろう。
今でも、勝てるかどうかは怪しい所を見るに、ユリカゼは今まで相当手加減していたのだろう。
[2人とも、そろそろ行かないと不味いんじゃない?]
クルスから、言われる。
[おっと、そうだな。
ユリカゼ、ステラがどの辺に居るのかは分かるか?]
と言っても、居る場所の見当は着いているが……
[はい。
クロトさんもお気付きだと思いますが……]
[この城の最奥の部屋、王の部屋です。]




