4章[救う為始まり]第18話
[クロクロ!!ねぇしっかりして…クロト!!]
私は、目の前で血だらけになって倒れている少年を揺する。
だが、返事は無く、溜まった血溜まりは、自身が作ったものと混ざり、更に大きい。
[……]
何か…何か方法は?
私の治癒魔法は、どれだけ強くかけても打ち消される。多分、無理やり私を治したせいで、呪いが変化して乗り移ったんだ。
[ごめんさい…クロト。]
私が諦めかけた、その時だった。
[ス…テラ。]
[え?]
[ス…テラ…ごめん。]
ステラ・フェイトギア…連邦に捕らえられている、クロトの想い人。彼は、彼女が死んだと思っているらしいが……
[……]
そうだ。
こんな所で、彼を死なせて良い訳が無い。他の誰でも無い、私が諦めて良い訳が無い。ここで諦めるという事は、あの時の失敗を、あの時の間違いを繰り返す事になる。
それだけは……
[絶対に…嫌だ!!]
私は、魔神だ。だけど、彼は人間なんだ。なら、解決策だってきっと見つけれる!
[何か…何か……ッ!]
何か、方法は……
彼に掛かっている呪いさえ解くことが出来れば、どうにでもなるのに……
[呪い…解呪……]
焦らず、一点の思考から、どんどん考えを派生させて行く。
そして、一つの可能性に行きつく。
[……そうだ。彼女なら!]
私は、クロトの居た世界に、自身の意識を接続する。
そして、ある人物を探す。
[……見つけた!]
探していた人物は、すぐに見つかる。
[……さよなら。]
クルスは、無限に広がる幻想的な景色を一瞥すると、そう告げて、クロトと共に姿を消した。
[そろそろ、出発ですね。]
シャルルは、出発の準備を終えて、エントランスでリレイドを待っていた。
[……]
シャルルは、ある少年の事を気にかけていた。
[クロト……]
彼女が持っているのは、恋愛感情にも似たものだろう。
だが、思いが届く事は無いことなど、彼女はわかっていた。
それでも、彼女とって恩人である彼が、気にならない事などある筈が無かった。
[……ッ!?]
それは、いきなり現れた。
エントランスの天井に出現した魔法陣から現れたのは、薄い緋色の髪の少女と、抱えられ苦しそうな表情を浮かべて気を失っているクロトだった。
[えっ、クロト?どうしたんですか、その傷!?]
シャルルが、状況を掴めないでいると、クルスがソファーにクロトを寝かせる。
[お願い!!説明は後でちゃんとするから、今はクロクロを助けさせて!!]
緋色の髪の少女が、シャルルに言った。
[……何があったのかは分かりませんが、わかりました。
それで、私は何をすれば良いのですか?]
1ミリも疑おうとはせず、自分の役割を確かめてくる。
[呪いを解いて欲しいの、私の力じゃどうやっても無理だけど、精霊の力が使えるあなたなら可能な筈。]
[呪い?確かにかかってますね。]
少年を一瞥した後、此方を向く。
[解くこと自体は、そこまで難しい事ではありません。
ですが、少し危険な行為になるので、結界で私達を囲ってください。]
少しでも、外部の邪魔を入れたくないのだろう。
クロトに掛かっている呪いは、私ですら解くことの出来なかったものだ。解けるとしても、本人の奥底まで干渉する必要のある行為である事には変わりない。
[わかった。]
指示通り、断絶結界を張る。
[ありがとうございます。解いたあとの治療は任せました。]
[うん。]
シャルル・マーニは、杖をクロクロに向け、解呪を始めた。
こうして、他人の事を本気で心配したのは何百年ぶりだろう。
いや、1度は確かにあった。
40年前だったか、はたまた100年前か、それよりもっと前か……
[……終わりました。]
気付いた時には、クロクロの解呪は終わっていた。
[ありがとうね。後は任せて。]
私は、クロクロに軽く治癒魔法をかけて、傷を癒す。
幸いな事に、傷自体はすぐ治ったし、時期に目を覚ますだろう。
[……それで、ちゃんと説明してくれるんですよね?]
[うん。]
これまでの経緯を話し始める。
[……ん?]
現在、リアとユリカゼは山を降りて、ふもとの村に差し掛かっていた。
[どうかしたんですか?]
隣で荷物整理をしていたユリカゼが、聞いてくる。
[……消えていたクロトの魔力反応が復活した。それと、なんだこれは?]
クロトが、異空間に転移した事は、リア達も感知していたが、それが何者の仕業かまではもち]]ろん知らない。
リアが疑問を持ったのは、クルスの膨大な魔力に対してだ。
[何か、あるんですか?]
解呪はもうほぼ成功しているし、二人一緒に転移するくらいなら可能だ。
これは、すぐにでも行くべきか……
[ユリカゼ、荷物の整理は出来ているか?]
[え?はい。出来ていますが……]
頃合か。
[転移する。行くぞ、クロトの元へ。]
明らかに、ユリカゼの表情が明るくなる。
[本当ですか!?]
[ああ、時間は有限だ。準備は良いな。]
ユリカゼは頷く。
[わかった。それじゃあ行くぞ!]
リアとユリカゼは転移した。




