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運命を背負った少女と最強の守護者  作者: 英雄王ヨカ
4章[救う為の始まり]
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4章[救う為始まり]第15話

飛翔する魔法と、それを躱し反撃を繰り返すヤナク、リアと両者の戦闘は激しさを増していく。


[爆煙の業火よ!

万物を焦がす炎となりて、焼き尽くせ!]


[ふぅ!]


リアが、詠唱しながらヤナクの攻撃を躱す。

消耗している為に、戦闘時以外は身体強化魔法を常時掛けておくという事はしていないが、それでも必要枠の戦闘ともなれば、現在のリアでも何の問題も無く、身体強化魔法を何重にも重ねがけ出来る。

それをした状態のリアであれば、高速で迫り来る剣先も、見切ることが可能なのである。

超高速の連続剣をいなしたり躱したりして、なんとか出来た隙を縫って空中に跳躍する。


[カイザー・フレア!]


[ふっ……]


空高く跳躍した彼女を中心に、半径3メートルくらいの円形魔法陣が形成され、その正面に広がるように巨大な火の玉が現れる。


[ほう、神大魔法の一つか……]


形成された火の玉は、太陽と比喩しても遜色が無いくらいに、威圧感と熱さ、それに比例した密度を誇っていた。


[消え去れ!]


リアが腕を振り下ろすと、巨大な太陽は、執事姿の歩兵、ヤナクの元へ向かっていく。それも、その巨大さに見合わぬ圧倒的な速度で。


[消耗していても、ここまでの魔法を使うか、良いだろう、切り札を切らせてもらう。]


そう言って、回避行動も取らずに、ヤナクは剣を、迫り来る太陽に向ける。


[認識式・神大術式、魔術王の権能を発動。]


勢いを増していく太陽だったが、瞬間、なんの前触れも無く消滅する。


[なっ!?]


流石のリアも驚きの表情を浮かべる。


[く、ソロモンの固有魔法か。]


[そうだ。ソロモン様の固有魔法であるこの術式は、認識した魔法全てを無効化する。]


ただし、どんな魔法であろうと消滅させられる訳ではなく、使用された魔法が神大レベルに達しているのが条件だ。


[膨大な魔力の塊は、決まってその中に極大極まる基盤を有している、それが詠唱だ。ならば、発動された神大魔法と、それの顕現に使用された詠唱のリンクを断ってしまえば、魔法はコントロールを失い霧散する。]


簡単に言うが、それを部下が使える形にまで持って行ってしまうのが、魔術王と恐れられたソロモンの恐ろしさなのだ。

認識しただけで、詠唱によって作り出された魔法と術者のリンクを切るなど不可能に近い。奴がやったのは、あの魔法を介して、私が使った魔法な中に秘められた情報を一瞬で読み取ることで、リンクの詳細なデータを破壊したのだ。


[そうか、そうだな。なら、良いことを思いついたぞ?]


リアは、地面に着地すると、ヤナクの方を向き、格闘術の構えを取る。


[ほう、今度は本格的な近接戦闘という訳か、面白い。]


[ふ、余裕を見せていられるのも今のうちだ。]





[だから、おいすがろうとしない!

優先しなきゃ駄目なのは反応出来るかどうか。]


今、クロトとクルスは、模擬戦を行っていた。


[く……ッ!]


クロトは、目の前の事に必死だった。それ故に、冷静さをかいていた。


[……1回頭冷やしなさい。]


クルスは、クロトの後ろに回り込むと、強烈な打撃をくらわせる。


[ぐわッ!]


クロトは派手に吹っ飛ぶ。


[ちゃんと順を追わないと、本当の強さを得るなんて、無理に決まってるでしょ。]


[く、ぐ……]


クロトは、それでも休憩などせずに立ち上がる。


[焦る気持ちも分かるけど。そんなになって空回りしてちゃ、あの子を助けることも出来ないよ!]


[あ、の子?]


シャルルの事かとも思ったが、それにしてはニュアンスが違う。一体誰の事を?


[……クロクロ、頭でも打ったの?ステラちゃんのことでしょ?]


[ス、テラ、だって?]


何を言っているんだ?

ステラは俺を庇って死んだんだ。

今でも思い出せる、触れ合える程に近くに居る、好きな人の体温が、どんどん消えて行く感覚を。

どう言う事だ。どう言う、事だ。

わからない。

よく分からない感情が渦巻き、黒く塗りつぶす。


[ちょっと、どうしたのクロクロ?大丈夫?]


クルスが、心配そうにして駆け寄ろうとする。


[なん…どう…く、ああ…ぐわ、あぁぁぁあ!]


それを拒むように、クロトの周りに、謎の黒い風が纏われる。


[おっと。]


クルスは、余裕を崩さない。


[……]


[ふぅん、成る程ね。]


今クロトに起こっている事に対して、クルスには覚えがあった。


[反転凶化。それもかなりこっち側に近付いちゃってるわね。]


[……]


前回クロトが覚醒したのは、ガイアス聖火の襲撃を受けた際、そのボスと戦った時だ。


[早く戻さないと大変な事になるかも知れないし、少し痛い目を見てもらうわね、クロト。]


[……]


クロトは無言で立ち尽くす。


[……!]


瞬間、普通ならばしにすることすら叶わない速度で、クルスとの間合いを詰める。


[……]


目にも止まらぬ幾千もの斬撃を、余裕で受け流すクルス。

瞬間、クロトが纏っている黒い風が、クルスを取り囲み、捕らえる。


[成程ね、確かに強力だけど……]


クルスが横薙ぎに腕を振るうと、たちまち黒い風は消失する。


[それじゃあ、何も救えないよ。]


その言葉を聞いた瞬間、クロトが更に雄叫びを上げる。


[ぐ、うわぁぁぁぁーー!]


消失した黒い風は再度出現し、次はクロトの握る神具に纏われる。


[……ふぅ!]


クロトは、ゆっくりと空中に浮かび上がると、剣を両手持ちに構え直す。


[……良いは、ちゃんと狙って撃って来なさい。]


クルスは、自分の胸元の部分を、親指でトントンと叩く。

クロトは、剣を斜め上段に構える。


[ふぅ……はぁ!!]


まるで、若干ノイズがかかったような掛け声を発して、剣を振り下ろした。

剣そのものは空を斬ったが、そこから真空波の様に黒い波動と化した斬撃が、神速の速さで飛翔する。


[……!!]


クルスは、迫り来る斬撃を睨みこそすれ、防御の構えすらも取らずに棒立ちのままだ。


[く……ッ!]


黒い斬撃が、周りを包む魔力障壁を難なく切り裂き、クルスに命中すると、大量の鮮血が飛び散ると同時に、少女の魔神は初めて悲痛の声を上げる。

クルスの背後には、数百メートルにも及ぶ巨大な亀裂が出来ている。


[……]


少年は、様子を見る。


[ふぅ……ぐっ!!]


少女は立っていた。だが、肩から腰に掛けては、見るも痛々しい大きな傷が出来ていて、そこから、今も大量の血が流れて、足元に紅い海を作っている。

少女は痛みに顔を歪めて、傷を一瞥して、すぐに少年の方に向き直した。


[気は…済んだ?]


確実に命に関わる重症だ。

それでも尚、クルスは余裕の笑みを作っている。


[な……]


反転しているとは言え、流石のクロトも動揺を隠せない。


[この、くらいの傷で…本当に、私を殺せるとでも……思ったの?]


[く、ぐぅ……]


クロトは、頭を抑えて、苦しそうにする。


[(もう少し、もう少しで。)]


[……]


そのまま、クロトは力無く地表に落ちる。


[く……]


痛む傷を抑え、軋む体にムチを打ちながら、クロトの元に向かう。


[……]


そして、よろめきながらクロトの元に辿り着くと、要約膝を着いた。


[全く……私に、死ぬ一歩手前の傷を負わせた人間なんて、あなたが初めてよ。]


クルスは、クロトの顔を覗き込む。


[……]

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