4章[救う為始まり]第12話
[でりゃあぁぁーー!]
[ふぅん!]
どちらの剣も、全長4メートルを越える超大型の剣。
リレイドは、霊装・カラドボルグを、騎士長ラスタは真紅の炎を思わせる、霊装・レーヴァテインを、ぶつかる度に火花が散り、お互いの音速すら超える速度で振るわれる刀身、緊迫した戦い。
[レーヴァテイン、まさか貴様がそれを持っていたとはなッ!!]
リレイドは、鍔迫りの状況から、相手の剣を弾く、そして両者共に距離をとる。
[ディー、やはり貴様は、傭兵としての正義を選んだか。]
[霊装は己の意思に準じて行動する者のみに、力を与える。俺は己の意思と依頼主の意思に従ったまでの事だ。]
リレイドは、剣を構える。
[皮肉だな。孤高の存在だった貴様が、自身の責務を他者に委ねるとはな。]
ラスタも、同様に剣を構え直す。
[以前の俺ならば有り得なかっただろう。だが、貴様こそ在り来りの様で重要な点を見落としている。]
[ほお、それはなんだと言うのだ。]
[他者に、道を同じくする同士に役目の片割れを預ける事だ。]
両者共に踏み込む。
[良し、森だ!]
俺は、リレイドの助けもあって、包囲を抜けて、無事国境を越えられた。
[ここまで来れば、しばらくは追いつかれないだろう。]
山岳地帯を降りた後は、森が広がっていて、そこから、町まで一直線に行くつもりだったのだ。
[さて、どうしたものかな。]
リレイドとは別れてしまったが、町に行くのは変わらない。
[ま、あいつなら大丈夫だろ、シャルルーー]
瞬間だった。
[っ!!シャルル!]
俺はシャルルを半場強引に引き寄せて、真上にソード・オブ・アイギスを展開する。
[え?]
シャルルが、状況を掴めないでいると、眩い光の凝縮体が、俺たち目がけて激突する。
[ぐ……!]
アイギスにも、徐々にヒビが入っていく。
[耐えろ、耐えてくれ!]
なんて言う威力だ。
アイギスが砕けた所で、光は収束する。
[今のを防ぐか、異郷の使徒と言うのは、本当に良くやってくれるな。]
森の中から、神官服に身を包んだ老人が現れる。
[ま、まさか……]
一瞬で、シャルルの顔が真っ青に染まる。
[……]
額に、冷たい汗が流れる。
直感的にわかった。こいつは……
[……やばい。]
[ぐっ!?]
騎士長ラスタと激戦を繰り広げていたリレイドが、感じ取った気配に驚きを隠せない。
[この気配と魔力は、まさか!?]
[ふむ、思ったよりも到着するのが早かったようだな、魔術王。]
[貴様ら、奴を解き放てば、この世界とて無事では済まんぞ!!]
リレイドは、彼の者について知っていた。
[かもしれんな。だが、あれを目覚めさせたのは我々ではないのも事実だ。]
[なに?]
随分と話が複雑になってきたようだが、とにかくこの場を早急に何とかして、二人の元に向かわねば!
[時間に余裕が無くなった、一気に決めさせてもらう。]
リレイドは、奥の手を使うことを決意する。
[霊力脈動、その全てを慈悲深き大精霊に譲歩する。その御業を持って打ち倒そう。]
リレイドが詠唱すると、カラドボルグが青色の光を放つ。
[来るか!]
ラスタが、レーヴァテインを構える。
[霊斬コキュートス……]
[……な、に?]
それまで展開されていた荒々しい戦闘とは打って変わって、静かに、そして、呆気なく終わった。
騎士長ラスタが攻撃を認識した時には既に遅く、決着はついた。
[ぐ、成る…ほど…そういう…こ、とか……]
騎士長はその場に倒れた。
[実力は確かに互角だったがな、こっちは使い手としての年季が違う。]
そう、ラスタはまだ、霊装の奥を知らなかったのだ。
[……]
リレイドは、クロトを追った。
[くっ……]
杖を持った神官服の老人は、魔法を放ち、俺を寄せつけようとしない。
この世界に来て、リレイドや剣聖と戦った時ともまるで違う、純粋な恐怖を感じる。
[ふむ、流石に命中しないか。]
一言そう言うと、老人は、短く詠唱する。
[撃ち滅ぼせ。]
瞬間、俺は無数の魔力弾に囲まれて、回避すらかなわずもろにくらう。
[あ、あ……]
恐怖のあまり、言葉を発する事すらもままならない。
実際に相対しているクロトは、一体どれ程の恐怖を感じているのか、私には見当もつかない。
[や、めて、ください……]
程なくして、無数の魔力弾を諸にくらったクロトが、力なく地面に倒れる。
[ぐ、あ……]
凄まじい痛みが全身を襲った。
文字通り手も足も出ずに瞬殺された。
[君は理に抗い過ぎたな、この世界の奥を一度感知した人間を、流石に放置しておく事は出来ない。]
[何を、言って……]
言葉の意味がわからなかった。
[認識していない。成る程、君は自分の能力が、本当は誰から貰ったものなのかも分かっていないらしい。]
俺の、能力?
覚醒者は、この世界に来る時に、神王を名乗る神から貰ったもの、の筈だ。それに関してはステラも納得していた。
[何の、事だ?]
[そのままの意味だ。君に力を与えたのは、神王などと言う神ではなく、もっと別の存在の仕業だと言う事だ。]
な、に!?
[まあ、それでも私のやる事は変わらないがね。]
老人は、表情ひとつ変えずに、人差し指をこちらに向ける。
[君はここで眠れ。]
小さな光の粒が、俺に放たれた。
[そう言えば、自己紹介を忘れていた。 私の名は……]
ーソロモンー




