4章[救う為始まり]第10話
俺は、周囲に冷気を漂わせる赤髪を見据える。
[シャルル、下がっててくれ。]
下がるように促す。
[……手助けは、無用ですか?]
確かに、シャルルの手助けがあれば、戦況は優位に運ぶだろう。たが……
[悪いな。]
そう一言だけ、言う。
[いえ、それでは私は、後ろにいます。自分の身を守るくらいはできるので、存分に。]
[ああ。]
あまり時間はかけられない。
[なあ、クロト・カザヤ、お前がここで聖女様を差し出す、つうなら……]
[断る。]
キッパリとそう答える。
元よりそんな申し出は不必要だ。俺は自分の意思でシャルルを助けると決めたんだ。
[……そうか、なら。]
周りが一瞬で凍りつく、よく考えてみれば、一回目は剣聖が戦っていて、俺が戦ったわけじゃないし、二回目の時は時間稼ぎが目的で本気じゃなかったんだろう。
[今回は、殺す気で行ってやるよ。]
明確な殺気にも、もう慣れてきた。だから……
[……!]
俺もそれに対して、殺気を返すと言う形で答える。
[それは、こっちのセリフだ。]
出し惜しみ無しの真剣殺し合いの幕が、今上がる。
目まぐるしく変わる戦況、飛翔する刃を一心不乱に交わして、反撃を繰り返す。
[ちょこまかと……]
飛んでくる魔法も相当な速度だが、覚醒者があれば、かわせない程じゃない。
[……]
問題は他にある。
[くっ……!]
魔法の物量が多すぎて、近づくことすら出来ない。
[どうした?避けてるだけじゃあ、勝てないぜ!!]
非常にしょうもない煽りだが、それも事実ではある、さて、どうしたものか……
[仕方ない……]
根源解放を使えば、確かに勝てるかもしれないが、あれを使うには、予備動作に数秒費やすことになる為、この状況では出来ない、神具解放と覚醒は強力だが決定打に欠ける、ともすれば、やることは一つ。
[っ、ふぅ!]
俺は、飛んできたひとつに、魔力を込めた斬撃を叩きつける。
[なっ!?]
すると、衝突した部分から、煙の様なものが霧散して、俺の姿を隠す。
[ぐ、神具の魔力解放の失敗!?いや……]
シュバリアが、瞬時に生成した氷の大剣で、霧を薙ぎ払うと同時に、動く。
[はぁ!]
魔力を込めた全力の一撃を叩き込むべく、接近する。
[ぬるい!!]
接近する俺に対して、完璧に反応して見せる。そう、これで良い、これを待っていた。
[俺の勝ちだ!!]
シュバリアが迎撃しようと、魔法を使おうとした瞬間、俺の攻撃に合わせて、それが3方向から飛翔する。
[なに!?]
男も、飛翔するそれに気付くが、一足遅かった。
[ふぅ!]
シュバリアが、四方向からの同時攻撃を、まともに受ける。
飛来陣・三式
この技は、学園時代に、俺が対人戦用に開発した技で、学園に入ったばかりの頃に、ユリカゼに対して使った固有魔法である、ブレイド・ソウルを使用して三本の剣を作り出して投擲し、俺の斬撃に合わせて三方向から同時に攻撃を行う技だ。
[ぐ……く、そが。]
致命傷を負ったシュバリアは、そのまま倒れた。
[はぁ……]
この技は、使う前に相手に悟られたり、一度失敗したりすると、二度と通用しない技だから、今まで使うのを控えていた一面もある。リレイド相手だと、決まったとしても勝てるかどうか怪しいが。
[流石ですね、クロト。]
後方に下がっていたシャルルが、歩み寄ってきた。
[奥の手だったんだけどな、これで勝てなかったら危なかった。]
俺達は、そのまま国境を越えて、隣国の町に辿り着いた。




