4章[救う為始まり]第9話
[ふぅっ!]
俺は今、国境目指して、シャルルを抱えながら森を突っ切っている所なのだが……
[くっ、しつこい奴らだ!]
勿論、国直属の追っ手が迫っていて、今でも飛んでくる魔法を回避しながら進んでいる。両腕はシャルルを抱えてて使えないので、当然ルミナスは抜けない。
国がここまで、シャルルに執着する理由も分からなくはない。これ程の力を持っているのだから、他国へ亡命しようなどと考えていては、それは穏やかでは居られないだろう。
[国境までは……あと10分くらいか……]
今更だが、俺達の居た教会は、国境から半径2キロメートル圏内にある為、そう遠くは無いのだが、最短ルートは森を突っ切るため、シャルルを抱えながらだと、きつい所がある。
[……一人で良いので、誰かを10メートル圏内に入れてくれますか?]
なるほど、そういう事か。
[わかった!]
俺は後ろ目に追っ手を見ながら、わざと速度を落とす。
追っ手の一人が、速度を上げて詰めてくる。
[今だ!]
[彼の者と、その取り巻きを縛りつけて、フェアル・バインド!]
瞬間、追っ手達が、空中で停止する。
[これで、少しは時間が稼げるはずです。]
[助かった。]
精霊の力を使ったのだろう、この通り、精霊は本来人間には出来ない元素の直接操作が出来るため、その力を自由自在に使えるということは、つまりこう言う事なのだ。
俺の様に、元素すら越えうる神の力を意思の力で打ち出すと言う方法を使えば、その強固極まる守りをも貫通しうるのだが。俺の知る限りでは、そんな芸当が出来るのは、精々リアかユリカゼぐらいなものだろう。
[このまま、国境を抜けましょう!]
そうだ、森を抜ければこちらの勝ちの様なものなので、そこまで行きさえすれば何とかなるのだ。
[ガブリエルさんの方は、大丈夫でしょうか。]
ガブリエル、まああの化け物傭兵なら早々のことが無い限り……いや、早々の事があっても無事だろう。
[あいつなら、大丈夫だと思う。]
[そう、ですか。]
俺はあえて濁す様に言ったが、別行動とは言え、単騎で神に相当する実力を持つような奴が簡単にしくじるわけも無いだろう。
[……あと5分くらい、か。]
いよいよ迫ってきた国境、追手は今の所ない為、このまま突っ切ろうとした瞬間。
[……!]
森の奥から、一筋の悪寒を感じ取る。
[どうかし……]
シャルルがたずねようと口を開くが。
[すまんシャルル!]
俺はシャルルを上空に投げる。
[え?きゃあぁぁぁぁぁぁ!!]
叫び声を上げて、シャルルが空中を舞う。
[ぐっ……!!]
俺は一瞬で剣を抜き、木々の合間を縫って飛翔する無数の氷の刃を、全て撃ち落とす。
[……ふ!]
空中で崩れた体勢を立て直し、落下するシャルルをキャッチする。
[むぎゅッ!]
よく分からない悲鳴を上げて、俺の腕に収まった。
そして、そのまま地面に着地する。
[ふぅ……]
俺が一息つくと、腕から降りて立ち上がったシャルルが怒鳴る。
[なんて事するんですかあなたは!!]
まあ、こういう反応になるのも仕方ないだろう。
[本当にすまん。]
[それで済んだら騎士は要りませんよ!本当に死ぬかと思ったんですかーー]
俺は、シャルルの言葉が終わるのを待たずに飛翔した、第2波を彼女に当たらないように全て弾く。
[……今のは?]
シャルルの感情は、既に怒りから困惑へと変わっていた。
[本当にお前は、現れて欲しくない時に現れるな。]
俺は、飛んできた氷の魔法に見覚えがあった。
[そうでもねぇさ、お前がたまたま俺の仕事の途中で現れてるだけだ。]
そう、俺が学園が襲撃された際に間に合わなかったのも、こいつが原因だ。
[丁度良かったよ。あの時の借りを返させて貰うぞ。]
暗闇の中から、短い赤髪の男が現れる。
[フレア・シュバリア!!]




