4章[救う為始まり]第2話(歩む為の始まり)
俺は、森の中の一つ木に、背をもたれかけた。
[……]
目には雪の白と、森の木々しか映らない。
いや、1面雪景色だから錯覚しているだけかもしれないが、視界から色が消えた様に何もかもが、白と黒でしか見えない。
[ふざけんじゃ…ねぇよ。]
言いしれない怒りが、声に乗って外に出るが、それは何処にも届かず虚しく消える。
[なんでだよ!]
俺は、地面に拳を叩きつける。
[あいつらは…リオは、ステラは、何も悪い事なんてしちゃいないのに、どうして……!]
何度も何度も、声を張り上げて、地面を殴って、白い雪は一点だけ血で滲んで行く。
[死ぬ瞬間すら選べず、こんなに辛い思いをしなきゃ行けないんだよ!]
だって、可笑しいだろ?
何も、誰も殺めていないステラは死んで、沢山の人を殺めた俺はのうのうと生きてる。こんな不条理があって良いのか?こんな理不尽あって良いのか?ステラや、リオだけじゃない。
学園で見た光景を思い出す限り、決して少なくは無い罪なき命が消えた。
[もう、たくさんだ。]
もう、何も見たくない。
何も感じたくない。
人の温かさに触れて、こんな思いをするくらいなら…一歩踏み出した先が地獄なら…俺はもう、何もしたくない。
[そうですね。確かにこの世界は不条理です。]
俺が歩いてきた方向から、足音が聞こえる。
[理不尽で、残酷で…運命なんて大抵、ロクでない結末に進む為の道標でしか無いです。]
足音が、俺の傍で止まる。
[……知っていますか?大昔、世界を救った英雄はこう言ったそうです。]
視線すら向けない俺に、話し続ける。
[人は一生の内に、何らかの接点を持つ人が30000人で、同じ学校や仕事の場所がおなじになったり、家が近くになったりする人が、3000人、親しく話を出来る人が300人、友達と呼べる人が30人で、親友と呼べる人と3人、出会うらしいですよ。]
俺の世界で良く聞く話しだ。
[あなたに何があったのかは、私にはわかりません。ですが、私達は、本当に奇跡の様な数字を乗り越えて、今ここで出会ったんです。]
何が、言いたいんだ?
[……私が言いたいのは、ただ一つです。]
[少しだけ、手伝わせて貰えませんか、あなたの道を……]
俺は、小さく口を開く。
[知ったような口を…聞くな。]
俺は、反発する様に言った。
[お前に、何が分かるんだよ?あんな温もりに溢れた場所に居て、本当に大切な人を失う悲しみが分かるのか?突然訪れた荒波に、全て破壊される悔しさと悲しみが、お前にはわかるのか?わかるわけが無いよな?]
[だったら……何故あなたは、救いを求めているのですか?]
俺は、言葉の意味が分からなかった。
[なにをいって……]
[誰かに、共感して欲しいんじゃないんですか?誰かに受け止めて欲しいんじゃないんですか?]
俺は、怯えたように首を振る。
[違う…違う違う!!]
[俺は、俺は……]
言葉は出てこない。
[あなたは、きっと、絶望の中に居ても、たった一つの願いがある筈です。]
何故、そんな事がわかる?
[だって…本当に何もかも諦めた人は、涙なんて流しませんよ。]
[え?]
俺は、頬の辺りに触れる。
生暖かい雫が、頬をしたっていた。
[私にどれ程の事が出来るかは、私にもわかりません。ですが、私は、奇跡の体験をさせてくれたあなたに、恩返しがしたいんですよ。]
眩しい程の、笑顔で、無邪気にそう言う。
俺は、その優しさに、止まっていた感情の時が、動き出すのを感じる。
[俺は、俺は……]
そこで、涙混じりにこう言った。
[仲間に、皆に会いたいよ。]
一筋の願い。
俺の心中から出た一つ言葉を、少女は深く受け止めてくれる。
[はい。]
[リオがいなくなって、ステラも死んで、俺は、どうすれば良いのか…分からないよ。]
この世界に来て、初めて吐いた弱音らしい弱音、ずっと、ステラを守る為に、張り詰めていたものが、一気に吹っ切れる。
[はい。]
[誰でも良いから、助けてくれよ。]
この後に及んで、自身を救いを願う俺は、人でなしの他の何者でも無いのだろう。
[もちろんです。あなたは一人じゃありません。]
少女が、俺の顔を覆うように、優しく抱擁してくれる。
俺は、彼女に救われた。
救われてしまった。
ステラは過去にこう言っていた。
辛くなったら泣いたら良い。弱音だって吐いて良い。もしも、自分が傍に居なくても、きっと誰かが手を差し伸べてくれると……
俺は、誰かを救っていたどころか、救われてきた側の人間だ。
この世界において、他人を救ったのなんて、俺が救ってもらった分に比べれば、微々たるものだし、誇っていいものじゃない。
俺は、また、歩を進めて行く。
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