4章[救う為始まり]第1話
マジで遅くなってすみませんでした!
前話の改稿が終わったら、こんな時期になってました。
微睡みの中、彼女の顔が薄らと浮かぶ。
救えなかった命の重さなんて、今まで考える事は無かったし、そう言う場面に出くわしたことも無かった。
自分の腕の中で、限りなく近い距離なのに、遠ざかる様に消えていく温度、ちゃんと触れているのに、安心させてあげられない虚しさと、救ってあげられない悔しさは、どうしようもなくこの先に起こることが怖くなる程に、辛く認め難い結末だった。
[……]
目を開けると、自分が未だに生きていることを実感する。
[……ここ、は?]
知らない天井だ。
体を起こして辺りを見回すと、5畳程度の部屋に、今俺が寝ていたベッドと、一つだけ小さなテーブルが備え釣れられている、非常に簡素な生活部屋だ。
[治療もされてるし、一体誰が……]
どうにも、記憶に混乱が生じている様だ。
[ポケットの中に、何かあるな。]
状況確認の為に、持ち物を一通り調べていると、ポケットの中に何かある事に気づく。
[ペンダント?]
星を象った様な、中心に不思議な石がはめられたペンダント。
[何で、こんなものが……]
俺は、この手の物は何一つ持っていなかった筈。
[……うっ!?]
頭に、鋭い痛みが走る。
ス、テラ……そう、その名前の子を助けようとして。
[……!]
頭の中で、あの場面が甦る。
目の前で、無残に土手っ腹を貫かれ、倒れ掛かり、冷たくなっていく彼女の姿が。
[……ん?]
部屋の扉の向こうから、人の気配が近付いてくる。
俺が警戒していると、扉が開く。
[あ、目が覚めたんですね!]
そこからは、目の色は黄色で、金色の髪を後ろでひとふさだけ括って伸ばし、神官服に身を包んだ少女が現れた。
[……]
少女は、手にお盆をもち、そこに簡単なサラダとスープがのせてある。
[すみません。余り物しかありませんが、良ければ食べてください。]
そう言って、テーブルに置く。
[……]
何も言わない俺に対して、少女は疑問符を浮かべる。
[どうかしたのですか?]
[……いや、ここは何処なんだ?]
俺は、とりあえず質問してみる。
[ここは、トラストと言う神父が運営する教会です。王立国レイブンの端に位置します。]
ご丁寧に、場所まで細かに言ってくれたのだが、王立国レイブン、学園で1度聞いた事があったか?確か記憶では、今は国際的に危ない状況だった筈……
[君は、ここで神職についているのか?]
すると、神官服の少女はニッコリと笑って。
[はい。シャルル・マーニと言います。]
シャルル・マーニ、か。
[私は戻りますので、体調が大丈夫そうでしたら、教会の中を回ってくれても構いませんよ。]
[ああ、ありがとう。]
そう言って、少女は部屋を出ていった。
とりあえず俺は、テーブルの上に置いてある食事を取り、部屋を出る。食器は後で取りに来てくれるようだから、持っていく場所もわからない俺は、言葉に甘えた。
[建物自体はそこまで広くない、か。]
割と呆気なく探検は終了し、俺は食堂と思われる場所で、休憩していた。
[……]
まだ、記憶が曖昧だ。
学園と言う場所に居たことや、様々な単語など要所要所は覚えているのだが、襲撃にあって、そこで何があったのかまでは、靄がかかったように薄れている。
[でも、きっといつかは思い出すし、思い出さなきゃいけない。]
だが、この時の俺は、それがどれだけ苦しい事で、受け入れ難い事実なのか、まるで分かっていなかった。
それはそうだ。ステラが死んだと言う事実を知りながら、ここまで楽観的なのはそれが原因だったのだ。
失われた記憶はいつか戻る。
例えそれが、どんなに辛い思い出だったとしても、本人の元に帰ってくる。
それが、人生の酸いも甘いも記録した。記憶と言うデータなのだ。
俺はそれから、部屋に戻って寝ていると、神官服の少女が訪ねてきたので、応答した。
何処にいたのかとか、そう言う事を聞かれたので、記憶が曖昧な事を知らせた。
夕食を済ませて、現在に至る。
[このペンダントにも、もっと深い深い意味が……]
俺が、ステラに貰ったのであろうペンダントを眺めていると、横から声がした。
[ここにいたんですね。探しましたよ。]
さっきの少女だった。
[あなたの荷物…と言う程でもないのですが、私物を預かったままだったので、お返しします。]
渡されたのは、ずっと使って来た相棒であるルミナスと、一冊の本だった。
[これは?]
[はい。それは記憶の魔導書と言いまして、主に読んだ人の記憶を引っ張り出す様な魔法具なんですが、良ければ。]
確かに、俺は記憶が曖昧な節を彼女に伝えたが、ここまでしてくれるか?
[それはありがたいが、どうして俺に?]
[え?だからそれは記憶が曖昧だと言う話を聞いていたから……]
途中まで聞いて、被りを振る。
[そうじゃなくて、何で見ず知らずの俺に、そこまでしてくれるんだ?]
彼女は、首を傾げる。
[それは、あなたが助けてくれたからですよ。恩を返すのは当然だと思ったのですが……]
は?助けた?何処で?いつ?
全く思い出せない。
[因みに聞くけど、それはどう言う状況だった。]
[?そうですね。私が森の中で食材を探していたら、あなたが倒れていて、近付いたら急に魔物に襲われて、そしたらあなたが急に起き上がって、魔物をすごく怖い顔で睨んだら、魔物が逃げていって、そしたら、すぐに倒れてしまったんです。]
うん、覚えていない。確かにこの世界で戦いを経験していく内に、殺気の使い方等は覚えはしたが、俺程度の殺気など魔物に効いたものか……
多分無意識だろう、自己防衛本能的なのが発動したと解釈しておこう。
[そう、か。悪い、やっぱり記憶が曖昧みたいだ。]
まあ、これに関しては十中八九無意識だろうから、覚えていなくて当然なのだが。
[良いんです。恩人である事には変わりありませんし、その恩返しの一環だとでも思っていてください。]
[わかった。それならお言葉に甘えて、頂くよ。]
俺は本を手に取り、少し開いて見る。
リアに聞いた事があるのだが、魔導書はちらっと見るだけで効果が得られるから、読み切る必要はないらしい。
[……ッ!]
開いて少し目を通した瞬間、俺の頭に悪れていた情報がいっぺんに甦る。
[大丈夫、ですか?]
心配そうに聞いてくるが、今の俺の耳にそれは届かない。
人間は、記憶を大幅に失う時、それが自己の防衛本能によるものの時があるそうだ。本人には耐えきれないほどに、ショックで辛いことがあった時に、それから自身を守る為にわざと体が記憶に靄をかける。そして、少しずつ思い出して受け止めて行くのが正しい手順なのだ。
俺は、その手順を過った。
記憶の奥に薄れていたはずの負の感情が、辛い記憶が、一気に目を覚まして心を蝕んで行く。
[だ、めだ。これは!]
目の前に広がる地獄絵図、あまりにも残酷で惨い、その真っ只中に居る俺。
手の中で消えていく、仲間の手の温もり、それに怒り殺戮を広げた自分、その全てが重なり壊れそうになる。
[ぐッ……!]
俺は、走って食堂を出た。
後ろからシャルル・マーニの声がするが、俺は止まらず教会を出る。
前方には、雪の降り積もった森が広がっていて、そこに俺は入って行った。
ご愛読ありがとうございます!
タイトルもう少し考えようや俺。




