3章[王都学園]第33話
俺が物陰から飛び出して、覚醒者の力をフルに発揮して、男に向かっていく。
[行ける!]
男は俺の接近に気付いて、片手斧を装備するが、俺がその隙をついて背後に回り込む。
[ボルテックス・ナイフ......]
雷の魔力を纏わせたルミナスで、男の背中を斬りつける、普通この程度の攻撃では倒れないだろうが、雷の魔力を流した事によって......
[ぐあぁぁぁーーッ!]
男は感電状態に陥る。
男は倒れる。
[......]
俺は慎重に男の状態を確認する。
[気絶してるな、よし、このままあの子を連れて脱出を......]
俺は少女が隠れているであろう物陰に歩を進めようとした瞬間......
[......!]
背後に気絶したはずの男が立っていた。
[しまっ......]
男は斧を振り下ろす。
重傷にはならないが、かすり傷程度ですまないのも確かだ、回避は不可能......
[......!]
だが、斧は俺に直撃することはなく、途中で受け止められる。
[......させない!]
受け止めたのは、さっきまで数十メートルは離れた物陰に隠れていたはずの、龍人の少女だった。
[くそ......!]
男が素早く斧を引いて退こうとするが......
[遅い......]
俺は既に死角に入り込んでいた。
[なっ......]
[チェックメイトだ......]
今度こそ致命傷レベルの一撃を喰らわせる。
そして、男は倒れた。
[ふぅ......]
俺は一息つく。
[ありがとな、お陰で助かった。]
羽織っていたマントのフードが捲れて、写真通りの幼さの残る顔を露にした少女に、一先ずお礼を言う。
[いえ......]
今の斧を素手で受け止めた力と言い、2本左右の角が龍人である事を言わしめる。
[とりあえず脱出だ。]
俺はそのまま、少女を連れて奴隷商会の施設を出た、外の路地裏を進んだ所にユリカゼが待っており、安全なルートで学園に戻ることが出来た、因みにリオは、俺よりも先に戻っていた、あの男の警戒もうをどうやって掻い潜ったのか未だに謎だが。
*
[ほぉ、君が......]
学園に戻ると、真っ先に学園長の執務室に向かった。
[......]
少女は警戒して、俺の後ろに隠れる。
[おっと、これは失礼、随分となつかれているのだな?]
[まあ、色々とありまして......]
脱出してからも、ずっと俺にベッタリだ、なついてくれたのは嬉しいが、学園に入ったあとの視線が痛かった。
[そうか......色々と話はしたいが、出来る状況でも無いな。]
[見たいですね......]
ここまでの道のりでハッキリしたことが一つ、先ず、この子は人間不信一歩手前の状態だ、辛うじて話したりするのは可能だが、触れたり近付かれたりすると、どんな相手でも俺の後ろに隠れてしまう。
[よかろう、ならば君が面倒を見てくれ。]
[......は?]
何いってんだ、このおっさん。
[一つ良いですか?]
この際拒否権以前に......
[それは、俺の部屋でって、事ですか?]
[ああ、勿論だ、個別に部屋を用意することも出来るが、恐らく君の部屋で見た方が安心だろう。]
確かにこの状況だと、それはそうかもしれないが......
[いやぁ、言いたいことはわかりますけどね、あのまずくない?その、色々と......]
学園長がとぼけた様に言う。
[何だ?まさか君は、年端もいかない幼子に、無理矢理手を出すようなロリコンだったのかね?]
このおっさん喧嘩を売っているのか?
[あ、それじゃあ丁重にお断りを......]
[すまない、調子に乗った。]
ものの数秒で謝ってきた。
[はぁ、どうしたいかは、先ずこの子に聞くべきでしょうが......]
そう言って俺は、背丈もそうだが、中一位に見える容姿の少女に、聞いてみる。
[君はどうしたい?勿論俺と一緒に居たいって言うのもありだ。]
避けたいことではあるが、だ......
[私は......]
少女は俯くと、しばらくしてから顔をあげた。
[......お兄さんと、一緒に居たい。]
まあ、こうなるか、仕方ない。
[そうか、わかった......何ですか?]
俺はしてやったりと言った顔の学園長に、疑問を半分キレ気味に投げる。
[いや、君がそう言ってくれて何よりだ。]
これでは流石に収まらないので、更に愚痴る。
[今更言うのもなんですけど、国への申請やら手続きやらは避けられないでしょう、大丈夫なんですか?]
[問題ない、国王には直に話を通した、とは言え、この依頼自体は大臣達が独断で言い渡してきたものだ、倫理観に根深い国王には、二つ返事で許可を貰えた。]
[......]
このおっさん、自分の言っていること本当にわかってるのか?
それは、この国の大臣を裏切る行為だ、どんな報復が来るのかもわからないのに......
[心配する必要はない、それは私の問題であって、学生には領分を越える。]
[だが......]
[何、もう手は撃ってある、それよりもだ、そろそろ君の部屋にその子を案内してやるんだな。]
それも、そうか......
[わかりました......行こう。]
俺は横で待っていた、少女を出口に促す。
[......]
少女は頷いて、歩き出す。
そして、学園長の執務室を後にした。




