3章[王都学園]第32話
[......]
俺は物陰に隠れながら進んでいる。
侵入には成功した、奴隷商会の拠点は、中央街のある路地裏を進んだ所にある、ユリカゼが手筈通りに進めてくれたお陰で、何の狂いもなく侵入できた、装備は気配消しと正体隠しの装備一式、武器はナイフ二本、所々に配置されている巡視を掻い潜って進む、流石に龍人なだけあって警備厳しい。
[......そろそろか。]
偵察に来た時に確認はした、移動されている可能性は否めないが、その時はリオと俺の役割を入れ換えてカバーする。
[......騒がしいな。]
警備の様子が何やらおかしい。
[......]
息を潜めて警備の会話を聞く。
[まだ見つからないのか!?]
[ああ、まさか商会最上級の拘束魔術を破るとは思わなかった、一様やむなしと有れば少し位は傷をつけても良いらしいが......]
[何でも良い、魔力を回復される前に捕らえるぞ!]
[わかった。]
警備の一人がこっちに、もう一人は向こうに走り出す。
まずい!聞き入りすぎた!
[こうなったら......]
騒ぎを起こさず無力化する。
俺が動こうとした瞬間。
[むぐ......ッ!?]
いきなり後ろから引っ張られ、近くの部屋に入れられる。
[ぷはッ......!]
口を思いっきり塞がれたため息をを整える。
[すみません、手荒な真似をして。]
[リオか......]
少しほっとする。
[計画が狂いました、まさかターゲット自ら脱走するとは......]
何時も依頼の時はクールなリオだが、今は表情な若干の焦りを見せている。
[確かにまずいな、一度捕らえられたら助けようが無くなる。]
再度牢に入れられたら警備が抜けなくなる、そうなったらもう連れ出す手立ては無い。
[脱出のサポートは会長に頼みました。
今は一刻も早くターゲットを見つける必要があります。]
[ああ、勿論だ。]
リオは立ち上がる。
[これ、渡しておきます。私はもう行きますが、もし見つけて保護できたらすぐに脱出してください。]
[ああ、わかった。]
リオが扉を少し開けて部屋の外を確認する。
[......それと、これを]
[これは......]
リオが渡して来たのは、ルミナスと小さなビー玉のような物だ。
[それが光ったら脱出を、あるいはターゲットが保護できたらそれに魔力を込めてください。]
[わかった。]
俺がそう言うと、リオは部屋を出た。
[さてと......]
あまり時間はかけられない、脱け出したのが今ならまだ施設内の何処かに居る可能性が高い。
[行くか......]
俺は部屋を後にした。
[はぁはぁ......]
[彼処だ!捕らえろ!]
少女は光魔法を発動させて目眩ましを行い、近くの部屋に隠れる。
[まだ、近くに居るはずだ、探せ!!]
何人かの足音が通り過ぎて行くのが聞こえる。
[うぅ......]
少女は膝を抱えて座る。
[お父さん......お母さん......]
少女はすすり泣く、助けを求めるかのように。
*
[......]
警備にも見つからない様に、一人の少女をこの施設から見つけなきゃならない。構造自体はそこまで、複雑じゃないしそこまで広くもないが、何せ部屋もしらみ潰しに探している状況で、向こうよりも早く見つけるのは至難の技だ、俺よりもリオが見つける事を祈った方が良さそうだ。
[......!]
微小だが、何かの魔法が俺の魔力察知に引っ掛かった。
[今のは、光属性......]
恐らくリオは気付いていない、俺の魔力察知に引っ掛かったのは、恐らく俺自身の適属性が光だから、同じ属性の魔力を感じやすくなっているためだろう。
[とりあえず行くか。]
感じた場所はそれほど遠くない、本気で急げば数秒で到着出来る。
[......ッ!]
俺は足に力を込めて、警備にも見えない速度で目的地を目指す。
[ここか?]
俺は数十メートル先の通路で止まる。
[......]
俺は警備の声がしたので隠れる。
[やっと見つけた。]
[さっさと、牢に戻してやる。]
二人の警備が何やら部屋の隅を囲んでいる。
[成る程......]
俺は、警備に気付かれないように近付き......
[ぐはっ!?]
[何!?ぐわっ!!]
後ろからの不意打ちで二人を無力化する。
[大丈夫か?]
俺は、部屋の隅でうずくまる少女に声をかける。
[来ないで......]
[......]
写真の通りとは言いがたいくらいボロボロたが、腰よりも下の辺りまで伸びた黒髪を見れば、本人だと言うことがうかがえた。
ボロぎぬからはみ出た足や腕を見ればわかる、恐らく酷い仕打ちを受けたのだろう、ほとんど体は隠れているが、見えるだけでも数ヶ所傷を負っている。
[......ちょっと見せてみろ。]
俺は周りに誰も居ないことを確認して、少女の腕で最も傷の深いところに、指を添える。
[やめて!離して!]
少女は逃れようとして、暴れる。
龍人種なだけあって凄い力だし、引っ掛かれたりと色々としてくるが......
[痛いことはしない、辛かったな、もう大丈夫だ。]
俺はそう言って、詠唱する。
[光の素よ、恵みとなりて痛みと穢れを癒せ、スターリキッド。]
指の先に一滴の光の雫が出来る。
[ドロップ......]
それを傷口に落とす。
[あ......]
フードを深く被っているので顔は見えないが、彼女にしてみればいきなり現れた奴が、傷口に暖かな光を落としたといったところだ。
[......この魔法は傷を癒すだけじゃなくて、心も癒してくれる、大丈夫、君を傷付ける奴には、もう従う必要は無い。]
こう言うケアは領分ではないが、このまま無理矢理連れていくわけにもいかないし嫌だ、先ずは安心させる、脱出はそれからだ。
[......]
彼女の傷は深いものを除いてふさがり、光も消える。
[落ち着いたか?]
[......。]
コクりと頷く。
よし、とりあえずさっき貰った石に魔力を込めて、脱出だ。
とりあえず脱出一歩手前までは難なく来れた、だが......
[......。]
あきらかにヤバイ奴が脱出の出口前に居るのだ。
俺の身長よりも二周りは大きく、体格も相当なもので、良く鍛え上げられている。
[どうする......]
理想は気取られる事なく、瞬殺することだ。
だが、見れば嫌でもわかる、恐らくベテランの傭兵か何かだろう、一流の技術と勘を持ち合わせているだろうから、オリジンを使っても、正直そんなにうまくは突破できないだろう。
[なら、やることは一つか......]
俺は立ち上がって、剣を抜く。
[ちょっと待っていてくれ。]
俺は龍人の少女に一言言うと、物陰から飛び出す。




